第18話 ギコギコしない切り裂きバトル
「俺はウェポンメイカー!!様々な武器を使いお前を様々な方法で殺してやる!」
謎のマスクの少年、自身をウェポンメイカーと名乗った桑戸は腕から突き出た電動ノコギリをサツキに向けた。
「え?何メイカー?」
「ウェポンメイカーだ」
「え、ええ〜、、、?名前がウェポンメイカー?マジで言ってんの?どこから苗字でどこから名前なん?」
余計なことをいうサツキに腹が立ち、「だあぁ!」と大きな声をあげて桑戸はサツキの首を横から切断するように斬りかかった。
音を立てて勢いよく襲いかかる刃物。だが、サツキはそれを簡単にかわした。
「へえ、結構強いんだな」
「あはは、、、。そうかなぁ?」
褒められるのは嬉しいが今の攻撃はサツキが経験した中ではとても遅かった。避けれて当然だ。むしろ特バツなのに避けれず死んだら死後職場仲間に笑われるだろう。
「俺が誰だと思う?」
お互いに警戒しつつ見合った状態で桑戸は突然そんなことを言った。
「えっと、それってなぞなぞかな。それともジョーク?もしくは自分への哲学的な問いとか?」
「今世間を騒がしている連続殺人鬼は俺だよ」
なんということだ。
「おっと、これは予想していなかった展開だぞ」
困ったことになった。いや、むしろ探す手間が省けたから喜ぶことなのだろうか。
「街の子供を無差別に殺した後、クラスのやつも殺してやったよ。楽しかったなぁ〜!動画撮ったんだけど見る?」
ケラケラと笑う桑戸は異常者だ。そのような話を聞いたら誰もが不快になり恐怖するだろう。
だがサツキはそうとは思えなかった。むしろ彼の行いは恐怖より滑稽さを感じた。
「あれ?じゃあもしかして君は自分より弱い人しか殺すことができない記録を動画に残しているってこと?」
「、、、何言ってんだお前」
桑戸はサツキを睨みつけた。
「それってなんのため?まさか自分が腰抜けだとかの証明をしたいとかじゃあるまいし」
桑戸を小馬鹿にしていく。
「もしそれで自分が異常者アピールだとしたら、それってすごく痛いよ?やめたほうがいい。君がそういうのやるとなんか気持ち悪いから。言っちゃあ悪いかもしれんが」
かなり嫌味なことを言っているようだが、これは別にわざとではない。
実はサツキは昔から失言が多い性格であり、さらによく喋ってしまう。そのせいでまさに今怒っていることのように、挑発をしているのだと思われてしまうのだ。
「あ、でも言ってくれる友人とか愛のある親がいなかったんだね。となると知らない言葉を君につかっちゃったかも」
そしてサツキは一言、桑戸に問いかけた。
「友人って言葉知ってる?」
その言葉が桑戸を激怒させるのに決定的なものとなった。
「だまれぇぇぇ!!」
桑戸は刃物を振り回した。
「うわぁ!何この人!?急に怒ったぁ!?」
「俺を馬鹿にするなあぁぁ!!立場がわかってないみたいだな!」
桑戸はサツキに向かって突進するように襲いかかる。
乱暴に振り下ろされた電動鋸の腕をサツキは掴んで食い止めた。
「サツキ!あまり俺を挑発しないほうがいいぞ?ここに来るまで9人もの人間を殺してきたプロなんだよ。お前で記念の10人目だ!」
「お前の殺人レコードなんてどうでもいいよ!」
サツキは桑戸を殴り飛ばした。
ふらふらと足元をふらつかせる桑戸。だがそれが彼を余計に激怒させた。
「てめぇぇぇぇ!!」
回転していた刃の動きが止まる。そして次は斧に変形させブンブンとサツキを殺しにかかった。サツキに避けられ空振りした斧は壁や床に叩きつけられ破壊していく。
サツキは半狂乱になっている桑戸の攻撃に対抗しつつ、リビングへと移動した。
「え!?なに!?何が起こっているんです!?」
「ど変態に殺されそうなの!」
戸惑う少女にサツキは攻撃をかわしながら答えた。
「死ね!サツキ!」
桑戸の動きは完全に素人だがこの殺人鬼の危険なところはとにかく突っ込んで斬りかかってくるところだ。いけどりにしたくても自爆しそうで怖い。
「落ち着け馬鹿!」
サツキは桑戸の腹を蹴り飛ばした。
「ゴフウッ、、、!!」
壁に叩きつけられる桑戸。
「シャーーッ!!」
叫び声を上げながら勢いよく起き上がる。
「怒った猫みたい。お前はウェポンメイカーじゃなくてキャットマンだな」
サツキは桑戸を鼻で笑った。
だがその余裕も数秒の話。殺人鬼が引っ込めた斧の次に出したものに大きく目を見開いた。
なんと両手からアイアンクローを出したのだ。
「いやウ◯ヴァリン!?」
これは苦戦しそうだ。
「うるさい!黙れ!」
先ほどよりは振り回しやすいのか動きが早い。
サツキは攻撃の隙を見つければ顔面にパンチを喰らわす。
桑戸はよろけるがすぐに立て直す。何度打撃を喰らわそうが気絶しない。なかなかにしぶといやつだ。
「サツキ!鬱陶しい上によく喋るやつめ!すぐに静かにさせてやる、、、!!」
「うるさいな!奇声あげてる人に言われたかないよ!ドアホ!」
サツキは近くにあった椅子を掴んだ。
「座って冷静になれ!」
桑戸を勢いよく椅子で殴りつける。その拍子に桑戸の仮面が取れた。
なるほど、こんな顔をしていたのか。
「ふむ、、、。お世辞にもイケメンとは言えない」
まじまじと少年の顔を眺める。
だがそれが隙となってしまった。
「うらあぁ!!」
桑戸はついに力技に出たのか、サツキに向かって飛びかかってきた。
突然の出来事だったため、のしかかってきた重さに耐えきれずにサツキは尻もちをついてしまった。
「いってて、、、。びっくりした」
それだけでは終わらない。
桑戸はそのままサツキに馬乗りになった。
そして鉄爪を引っ込め、今度は握り拳から丸鋸をだしてみせた。
「マジか」
サツキはそれをみて青ざめた。
「勝った!死ね!」
桑戸はサツキの顔に丸鋸を近づけた。
なんとか食い止めようとサツキは桑戸の腕を掴む。
「いい加減死にやがれ!!!」
桑戸は全体重をかけてサツキに丸鋸を近づけた。
サツキの顔のすぐ目の前では耳に響くほどの音を立てながら、とてつもない速さで丸鋸が回転している。
「これは、、、。や、やばいかも、、、」
このままでは確実に顔面が真っ二つだ。
こうなったら古典的な方法で切り抜けるしかない。
「あ!なんだあれ!?」
サツキは桑戸の後ろの方を見てそう言った。
「は?」
一瞬だけ振り向く桑戸。その瞬間、彼の力が少し緩んだ。
今だ。
サツキは桑戸を突き飛ばし股間を蹴った。
「ぐおおっ!!?」
桑戸は痛がるが、それよりも怒りが上回った。
「てめえぇ!!ざけやがってぇぇぇ!!」
丸鋸で座りこんでいるサツキを真っ二つにしようとした。
このままでは確実に死ぬ。
サツキは咄嗟に近くに放置されていた破壊されてバラバラになった椅子の足を手にして、丸鋸に攻撃を防ぐようにぶつけた。
それがこの勝負に決着をつける行動となった。
「え」
気づいた時にはもう遅い。ぶつかった丸鋸が跳ね返りを起こした。
グシャ。
回転する丸鋸は桑戸を斬り始めた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
丸鋸は自害するかのように桑戸の腹を切り開く。
ピシャッと大量の赤い液体が飛び散った。
「あー、、、。跳ね返りが起こっちゃったか、、、。これがキックバックってやつなのかな。違う?俺、そういうの詳しくなくてさ。攻撃防ぐだけで殺すつもりはなかったんだ、大丈夫?」
サツキは尋ねるが、桑戸はそれどころじゃなかった。
「ひゃあああ!!助けて!助けてぇぇぇぇ!!死にたくない!死にたくないぃぃ!!」
「え?なんて?丸鋸の音が大きすぎて聞こえんかったからもう一回言って」
「死にたくなぃぃぃ」
「死にたくない?散々人殺してきた人が言ってもなぁ、、、。ごめん、嫌味っぽくなっちゃった。とりあえずその傷は助かりそうにないな。まあその因果応報ってのはあるわけでさ受け入れるってことも大事だと思うんだよね。ところで一応聞いとくけど君の死ぬ様子は撮影したほうがいいかな、、、?」
サツキがペラペラと話しかけている間に、桑戸は力尽き床に倒れ込んだ。丸鋸の回転も止まったのを考えるとこれは確実に蘇ることはないだろう。
「死んじゃった」
腹の中から色々と出てはいけないものが出ていた。
「ああもう、血が服に、、、。殺すつもりはなかったんだけどなぁ」
「す、すげえ、、、」
拘束していた少女が一連の流れをみてつぶやいた。
「え?」
「マジで殺した、、、。悪人を殺した!!お名前、サツキさんって言うんですね!」
「はぁ!?なに!?どうした!?」
「殺しましたよね!!私見ましたよ!すごいです!」
キラキラと目を輝かせるその表情はサツキの殺人行為を明らかに尊敬している様子だ。こいつはかなりイカれている。
「本当は逃げる気だったけど、、、。サツキさんの強さを見て考え直させていただきました。是非、あなたに仕えさせてください」
「まてまてまて!話飛びすぎ!殺しなんて褒められたもんじゃないしさ!今回だって逮捕しなきゃいけないのに、、、」
あまりの急展開に目が回りそうだ。
目がまわるついでに、頭を悩ませるものもあることを思い出した。
「あっ!」
サツキは床に転がっている死体に目をやった。かなりひどいやられようだ。いやほぼ自分がやったのだが。
「警察に殺される、、、」
「殺される?警察が?なんでですか」
少女は首を傾げた。
「殺人鬼を先に捕まえたりしたら殺すって俺脅されてるんだ」
「そんなことですか。ならさっそくサツキさんのお役に立てるように私が何とかして差し上げましょう」
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