女嫌いで有名な伯爵との結婚が決まりましたが、薔薇とお菓子を好む魔の森の王に求婚されました。貴族達から人形令嬢と呼ばれている伯爵令嬢は、黒猫の魔物であるトアが美形の男になれるなんて聞いてません。
第五話 トアの城で、薔薇茶を。ラピスが作った薔薇の砂糖漬けと、干した果物入りのクッキーも。
第五話 トアの城で、薔薇茶を。ラピスが作った薔薇の砂糖漬けと、干した果物入りのクッキーも。
ラピスが、持って行く物を決める前に、お城の部屋を見てみたいわとお願いすると、トアは掃除をしてくると言って、城に戻った。
すぐに戻ると言われたので、ラピスは急いで、青いワンピースに着替える。
トアが美形男の姿のままで戻ってきた。
「猫にならないの?」
ラピスが尋ねると、彼は「何故?」って、不思議そうな顔で首を傾げる。
「ずっと猫だったのに……」
「この姿は嫌いか?」
「嫌いじゃないけど、恥ずかしい」
「そのうち慣れるだろう。なぁ、なんで着替えたんだ?」
「知らない方がいたら恥ずかしいもの」
「そうか。行くぞ」
トアの不思議な力によって、ラピスは彼と共に一瞬で、城に移動する。
あちらこちらに魔石ランプが置かれていて、赤い
天井が高い。
壁には、風景画やタペストリーが掛けられている。緑色のカーテンがある辺りに、窓があるのだろう。
「ねえ、トアは夜目が利くのに、どうしてランプがあるの?」
「美しいから集めていたのだ。ここに置いたのはうちのメイドだが。メイドがな、人間は夜目が利かないと言って、部屋にも置いてたぞ」
「よかった。
ラピスはふわりと微笑んだ。
「この部屋だ。隣の寝室と繋がってる。その隣が俺の寝室だ」
「えっ? 寝室?」
「嫌か?」
首を傾げるトアを見て、ラピスはドギマギしながら、「だっ、大丈夫よっ」と答える。
大きな扉をトアが開けて、「入れ」と言うので、ラピスは緊張しながら部屋に入った。
廊下よりも明るい気がして、ラピスは幾つかの魔石ランプに視線を向ける。
広い部屋だ。カーテンと絨毯は
上品な家具もあって、ラピスは「素敵」と呟いた。
「気に入ったか?」
「ええ。寝室も見たいわ」
「いいぞ」
フッと笑ったトアが扉を開けて、寝室を見せてくれた。
「寝台も素敵ね。家具はこれで十分だから、お気に入りの服と
「あとで一緒に食べるか」
「いいの?」
「ああ。裏庭の木も運んでやるぞ」
「うーん、私の都合で環境が変わるのは可哀想だわ。こちらの土で丈夫に育つか分からないし」
「そうか。そうだな。じゃあ、行くか」
トアと共に、ラピスは自分の部屋に戻り、荷物をまとめて、二人で城に移動する。
ラピスに与えられた部屋でトアは、茶色い髪と瞳を持ったメイドを紹介してくれた。
可愛らしい少女の姿をしているが、
ミミが薔薇茶の用意をしてくれたので、ラピスはトアと一緒に長椅子に座り、薔薇の砂糖漬けを食べた後、お茶とクッキーを頂いた。
自分が作った薔薇の砂糖漬けとクッキーは、作った時も食べたのだけど、二人で食べた方が美味しいなとラピスは思う。
クッキーを食べたトアが、「美味いな」と言って、笑いかけてくれたので、ラピスはニコニコしながら、「嬉しい」と、自分の気持ちを伝えた。
すると、甘く
「私も、好き」
ラピスが恥ずかしさを感じながらそう言えば、トアの顔が近づいて、甘い甘いキスをした。
完
女嫌いで有名な伯爵との結婚が決まりましたが、薔薇とお菓子を好む魔の森の王に求婚されました。貴族達から人形令嬢と呼ばれている伯爵令嬢は、黒猫の魔物であるトアが美形の男になれるなんて聞いてません。 桜庭ミオ @sakuranoiro
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