第3話 児童相談所の実態と追跡の影

 首を切って落とされたガモンは己の首を拾い上げて元の場所に乗せるとくっつき再生する。


 アックスを持ち直すサーリャは笑みを零す。


「勝ち目がないとか、そんなものはどうでも良い。貴様の千年の武術を見せてもらおうではないか!!」


 そして、サーリャは構えを取る。


「ほ~ら、打ってこい………それとも、千年の時を経て、攻め方も知らぬか?」


 サーリャは挑発をするとガモンは問答無用でサーリャの仕掛けた罠に飛ぶこんでくる。


 ガモンが振り下ろす棍棒に迷いが見えなかった。


 リーチの差もあり、サーリャは一度下がってやり過ごす。


「はっはっは、攻め方? 守り方? そんな下らんことを考えるのは死を恐れた弱者!! このガモンのに捨て身ほど、最強の攻めよ!! そして、その攻めは最大の防御にもなる!!」


 相手の出方を伺うサーリャと相打ち上等のガモン、しかし、サーリャの乱れた動きが整い始めるとリズムを刻み始める。


 慌ただしい受け流しから最小限で避けるのではなく、棍棒の動きに合わせて華麗に舞い始める。


「き、綺麗………まるで、美女と野獣の舞踏だわ………」


 ガモンが蛮勇を見せれば、サーリャは踊りながらそれを捌き、アックスをくるくると回せば、威力はないがガモンの顎を捉える。


 ガモンも棍棒を横に薙ぎ払おうとすれば、サーリャはしゃがんでガモンの関節である『肘窩』を叩いた。


 肘窩を叩かれてしゃがまれれば、ガモンの横薙ぎに払われた棍棒が制御を失い、ガモン自らの顔面に勢いよく飛び込んでくる。


「なッ!!? ぐへぇッ!!?」


 自滅したガモンは何がなんだかわからずに、足を払われて天地が舞う中で己を見失い。


 気がつけば、地面に倒れていた。


 立ち上がろうにも立ち上がれない。


 どうやら、体を十字に引き裂かれていたみたいだ。


「な、何が起こった!!?」


 ガモンが見上げれば、サーリャは勝ち誇った笑みすら浮かべていない。


 酷く失望したような眼差しを向ける。


「千年も生きてて捨て身だけの人生か、下らん。」


 ガモンは酷く失望されたことに絶望した。


 どうせなら大いに罵倒してくれたほうが戦意も喪失しなかっただろう。


「おい、アドラス!! 貴様、まだこんなところに居たのか!!?」


 サーリャはご立腹のようだ。


 戦いも楽しめず、世話係もまるで無能、失望の眼差しはアドラスにまで向けられた。


「し、しかし、私には姫様を守るという大役が………!!」


 サーリャは怒ることなく溜め息を付いて言う。


「お主、未だにわかっておらんのか?」


 サーリャはアドラスにこの場を任せて、都市の施設へと向かった。


 サーリャが向かったのは児童相談所、そこでは、子どもたちが辱めを受けていた。


「や、やだよ………も、もう帰して!!」


 未熟な子どもたちは役人の慰めものになっていた。


「帰るだと!!? 笑わせるな!! お前の親はただセックスしたいだけなんだよ!! お前なんていらなかったんだよ!!」


 そう言って女子供も辱めを強要されている。


「そうそう、我もお主らみたいなゴミクズ人間なんて不要と思っておるぞ。」


 その声が聞こえたと思ったら、役人の人間は顎を砕かれて横たわっていた。


 気がつけば声も出せないことに気が付く。


「お、おごッ、おごごごごッ………!!?」


 『ドス!ドス!』と鈍い音が鳴り響けば、役人の膝は砕かれていた。


「ひぃ~~~ぃぃいい!!」


 サーリャは腐った役人たちを次々と暗殺し、子どもたちを救った。


 皆が泣きわめく中で、サーリャは再び呼び出す。


「アドラス!!」


 アドラスが現れれば、泥だらけ、アドラスはガモンを細切れにして、それぞれの場所に大きな穴を空けて埋めてきたのだろう。


「サーリャ姫、申し訳ございません。子どもたちは私が預かります。」


 サーリャはアドラスに命令する。


「それが終わったら、即座に他の施設も潰すぞ。悪人は一人残らず生かしては返さん!!」


 しかし、無能な小役人共は皆逃げ出してしまった。


 警察もサーリャを捕まえようと乗り込んできたところに、アドラスが現れて一掃される。


 この失態にアドラスは地面に頭を打ち付けた。


「私の判断ミスです!!」


 並の者ならアドラスを死刑にするだろう。


 しかし、サーリャは冷静に判断する。


「いや、小役人共は社会で税金を貰わねば生きていけない赤ん坊のような連中よ。野生で命を落とすであろうし、手間が省ける。例え、集団で移動してても仲間割れして食料などを奪い合う。少し、泳がせてやるか………」


 そんなサーリャの判断を一つの声が遮った。


「どうして………どうしてもっと早く助けに来てくれなかったの!!」


 サーリャに助けられた一人の少女が感情的になる。


「私には、大切な彼氏が居た!! その彼氏は私のために戦って死んだんだよ!! なのに、なのになんで!! なんで、彼氏も助けてくれなかったのさ!!」


 この施設にも勇敢な戦士が居たようだ。


 その彼氏と言うやつも親から虐待を受け、必死に警察やらに訴えかけただろう。


 窮地を脱したと思えば、税金を食ってるだけの小役人に拾われただけ、そんな勇敢な幼き戦士もここでは閉じ込められて餓死、公には何も口にしなかったとでも報道したのだろう。


 サーリャは言いがかりを受けたが決して怒りはしなかった。


 この惨劇の中で常識を口にして少女を叱るゴミクズ共とは違う。


 サーリャは謝罪した。


「すまぬ。我が一足遅かった故に、勇敢な戦士を死なせてしまった。この通り、許してくれ………」


 サーリャがアックスを手放して跪いて謝罪する。


 少女はサーリャの姿を見て感情を爆発させたかのようにして泣き喚いた。


 これを見ていたアドラスは激怒し、一人残らず殺すと覚悟を決め、役人やらを血眼になって探し出した。


 アドラスはすべての役人を数十分で捕まえて民に差し出した。


 この働きには民だけでなくサーリャも驚いてしまう。


「姫、この国賊共を私の手で消させてください!!」


 流石のサーリャもこれには一言それるだけとなる。


「う、うむ、その、あの………人目のないところでやるのだぞ?」


 アドラスは大喜びして国賊共を連れて行った。


 その後、街中では大騒ぎ、サーリャは英雄ならぬ女傑として持て成された。


 そして、王座に着いて皆のために号令を放つのである。


「今日を持って、サーリャがこの国の帝となる!! 民からの徴収は受けん!! 各々、自由に働くが良い!!」


 無能が上に立つと人材の無能化が進む、サーリャが正気ではない偉業を成し遂げたために、悪人はすっかり縮こまってしまった。


 そして、世に捨てられた有能な人材たちが己の才を遺憾なく発揮し始める。


「さてと、我は王の器ではない。政治とは嘘を並べる者がたとえ友であっても死刑にし、真実を述べる者は敵仇であっても無罪とする。街に防壁を作らせて鎖国し国中の人間を掃除する。その後は、この国から出ていくぞ!!」


 アドラスは姫の命に従って、防壁を作らせ、サボる者や食料を必要以上に貪るものを徹底的に処罰した。


 防壁ができて、国に災いを呼ぶ者を徹底的に始末すればサーリャ姫は国から出て行ってしまった。


 サーリャが居なくなったことで大喜びする無能も居れば、それを悲しむ有能もいる。


 サーリャは必要最低限の路銀だけを手に持ち、次の国を目指した。


 しかし、そんなサーリャにも弱点があった。


 サーリャを打ち負かす存在が2つある。


 そのうちの一人がラフィーリという名であった。


 ラフィーリはとある村で少女が身につけていたブレスレットに目を奪われる。


「ちょっと、そのブレスレットをよく見せてくださいます?」


 少女はラフィーリから感じられる違和感に戸惑うも、サーリャをこの人から守らねばと直感する。


「こ、これは私の大切な家宝です!!」


 ラフィーリは指先を向けると問答無用で少女に術を掛けた。


「もう一度問うぞ。そのブレスレットの持ち主はどこに向かった?」


 少女は操られている。


「あちらに向かいました。ブレスレットの持ち主はサーリャ、サーリャは私に言いました。私を守るなと………追いかけるなら、お急ぎを………そう遠くへは行ってないはずです。」


 それを聞いたラフィーリは大いに笑っていう。


「流石はサーリャだ。貴様はサーリャとの約束を破ったのだな。しかし、今は見逃してやろう。サーリャとの再開も近いと見える。」

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