ヤマタノオロチをどうにかして!
「ヤ、ヤマタノオロチだって!?」
山のような大蛇を見上げ、タダロウは戦慄する。
「ご存知ってこたあ」ブランカが剣を抜く。「こいつも都市伝説の化け物か、今度は見た目からしてやべぇな!」
「いや、おれの国では神話の怪物だ。近現代都市伝説の存在じゃない、既存の異世界ファンタジーにも出がちだよ」否定する少年も慎重に抜刀する。「ただ、そこではトップクラスに著名だ」
「つ、つまり手強いってことですか」
「どおりで、街の人も知ってるような素振りをしてるわけね」
ニアとマリーベルも言及し、ロザリオと杖をそれぞれ構えた。
「我は蛇族の王、
すぐには仕掛けてこず、八つの鎌首をもたげて大蛇は語りかけてくる。
「貴様ら冒険者とやらが蛇狩りにせいをだし始めたのは既知のこと。ワズマではそうした蛮行に及んだ者共を血祭りに挙げ、やめさせたがな。よもや、西の人員まで寄越すとは」
西からの冒険者一行は顔を見合わせた。
ギルドの依頼は世界共通だしワズマ国には来たばかりで、まだこちらのギルドには行っていない。そんな状況にあるとは予想だにしていなかったのだ。
「ワズマじゃこいつに恐れをなして、ツチノコ討伐には誰も手出ししてないってのかよ?」
戦士が疑問を挟む。
「東には独自の武術があって、西国でも及ばない手練れがいるはずだけど」
魔法使いと僧侶も推測を重ねた。
「この魔精がそれらを退けるほどに強いなら筋は通ります」
タダロウは、相手の十六の瞳と睨み合ったまま思索する。
口裂け女でさえ異世界では相当な強さのようだが、ヤマタノオロチは都市伝説の存在ではない。けれども神話の怪物で、言い分が本当なら猛者だらけの仲間たちと同等な東の冒険者たちを黙らせるレベルだ。
地形も悪い。近くに町もあるし後ろには茶屋、この巨体とぶつかってはどんな被害をもたらすかわかったもんじゃない。
ちらとタダロウは横目で確認する。
茶屋の娘は建物の陰に隠れて顔半分で様子を窺っていた。
「しかも逃げてないし」
「バカ、よそ見すんな!」
独白の直後戦士に突き飛ばされ、一緒に地面を転がる。
さっきまでいた箇所には大蛇の頭が一つ突き刺さり、巨大な穴を掘っていた。
茶屋があった辺りだ。もはや店舗は瓦礫と化していたが、すぐ後ろで尻餅をついているものの店員は無事らしい。
「これで口裂け女の時の借りはなしだな」
「わ、悪い」
そこまで確認したときブランカに声を掛けられ、タダロウは謝りつつ身を起こした。
「忠告はもっともだが」残る七つの首を、勢いづけるように大蛇は後方に引き、「火蓋は切って落とされておるのだぞ!」
ドドドドドドッ!
巨体からは信じがたい速度で首を突き出してくる。
タダロウとブランカはどうにか交わすも、地面はクレーターだらけになっていく。
「こいつはヘカトンケイルみたい、じゃねぇな!」口裂け女の時も用いた比喩で、戦士は冷や汗混じりに断言する。「その数倍強い、魔精皇の幹部格はあんぞ!!」
言ってるそばから首が命中。盾を構えてはいたが、深々と地面に埋められていった。
「ブランカ!」
どうにか交わしつつ、タダロウは女たちも心配する。
「まったくもう!」
ニアが作ったドーム状の障壁を共に纏い茶屋の娘の手を引いて逃げながら、マリーベルが愚痴る。
「デカいくせにまた接近戦得意な魔精だなんて反則よ、離れて遠距離攻撃仕掛けるわ!!」
「近接戦が得意だなどと申した覚えはないな」
首の一つが、遠く離れゆく魔女と尼僧の方向に開口する。
「ヤバい!」
タダロウが悟った直後、懸念が実現した。
大蛇は、特大の火球を吐いたのだ。
異世界ギルドに都市伝説の依頼がくるのでどうにかして! 碧美安紗奈 @aoasa
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