第8話 特訓じゃー!!

秋は新しい力“ジャッジメント”を得た。


ディスはそんな秋の様子を見てご満悦の様子だ。



『秋、早速“エストライセプス”を使うのじゃ。“ジャッジメント”の発現はその後でないと出ない様じゃぞ。』



『おう!今の俺ならなんでも出来るぜ!』



秋は新しく得た力のお陰か、いつもより強気になっている。




『いけ!“エストライセプス”!!』


秋はより強くハンドルを握り、呪文を唱えた。



すると、今まで当たりの空気感だけ出して、ことごとく裏切ってきた“ハヤブサ”の挙動に異変が生じた。



保留四つを溜めて見ていたところ、

3.3.7の赤図柄で止まり、熱い先読みが始まった。さらに、保留消化していく中で、一番最後の保留が待機中に赤保留に変化したのだ。


そして、最後の赤保留の演出が始まった。


激アツ演出モリモリの、リーチも勿論期待大のスペシャルリーチだ。

最後には、虹色ボタン一撃で大当りだ!



『よし!まずはこれでやっとスタート地点だ!』


秋はガッツポーズをした。



そして、いよいよSTか時短の振り分けだ。


秋は唱える。




『俺の人生、無双モードに突入だ!

いけ!“ジャッジメント”!!』



唱えた途端、台に虹色の光が宿った。


そう、秋はSTを獲得する事が出来たのだ。

そして、“ジャッジメント”の能力で1/199の確率の場合は50連大当たりが濃厚なので、ここから無双が始まるのだ。


“ハヤブサ”の大当たりは爽快感がある。

高速消化が売りの台だから、短時間でも万発は狙える仕様だ。



ただ、秋は一つ懸念をしていた。


50連大当たりが終わった後、残りの50連を引かなければ訓練目標は達成が出来ない。

継続率は約89%、高継続率とはいえ50連も自分の力で引く事が出来るのか不安になっていた。


その秋の少々のピリつきや不安を、ディスは感じ取っていた。


『なんじゃ秋、新しい能力を得たばかりなのにもう不安そうな雰囲気出して。まるで少しややこしい性格の女子かよ。』


秋はディスなりに心配してくれているのだとは理解している。


『なんだよ悪がらみしてくんな!...確かに不安要素はある。“ジャッジメント”の能力で50連大当たりが確実なのは良いけど、その後の50連を自力で引くのが出来るのかって。前世でもそこまでの連チャン経験はないし、流石にどうすれば良いのかなって。』



『何を言っとる。ここは人間界ではない、異世界じゃ!自分の得た能力は1日に1回しか使えないと思ってるのか...?修行も知能も足りないのぉ。いいか、お前が能力でどんな事を成し遂げたいのか、それをしっかり念に込めておれば、能力は1日に何回でも発現は可能じゃ。ただ何度も言うがそのタイミングは操ることは非常に難しい。もしかしたら秋の懸念している様に1日に1回しか能力発現をしない可能性もある。じゃが既に秋は1日に2回、能力を使っておる。この調子を崩さずに50連大当たりを消化している内にもう一度、“ジャッジメント”を発現するのじゃ。理想は50連大当たり終了後の51連目で“ジャッジメント”発現。発現時は、虹色に台が発光するようになっておるから、秋もわかるじゃろ。お前の悪い所は直ぐに調子に乗って、直ぐに落ち込む所じゃ!強気で行くならずっと強気で行け!

秋にはそれだけの能力があると儂が見込んでおる。これ以上は恥ずかしいから言わせるのでない...///』



秋は、ディスが自分の事をどれだけ期待してくれているのかがわかった。最後の照れは可愛いとは思わなかったが。


『ディス、お前がどれだけ俺の事好きなのかわかったぜ。そんなお前に俺も応えられる様に、もう一度“ジャッジメント”の発現、出来る様にやってやる!』



そして秋は、高速消化で為される大当たりの快感に身を委ねていく。


『でもこの台本当に気持ち良い当たり方するよなあ。“ハヤブサ”って名前だけあるわ本当。大当りしてから1時間経たずに50連大当たりもう終わりそうだし、前世でも出会えてたらなぁ...っていやいや、俺は今を見るんだ。未来の俺は全部を無双してやるんだから過去は振り返らない...!!』


秋のそんな様子を見ていたディスは、成長の早さに感心しているのである。



『秋、もう50連大当たり終わるけど、“ジャッジメント”の発現は出来そうかの...?

まあこの期に及んで出来ないって言葉は、儂は聞く気も無いがな。』



『ディス、見てろよ。俺だって成長してんだぜ。』


そして50連大当たりが終わり、51連目に突入するその瞬間。



『“ジャッジメント”!!』



秋のその言葉に、台は虹色に光った。

“ジャッジメント”は成功したのだ。



そして、51連目から“ジャッジメント”の能力で再び50連チャンが確定した。秋の脳内では大当たり過多による脳汁の大洪水が起きており、オーバーヒート寸前だ。



『やべえ、やべえよ俺。本当にこれ、この世界無双出来るぞ!!』


秋はフィーバー状態なので、何を言われてもへっちゃらだ。


ディスは少々そんな秋に釘を打ってやりたくなったのである事を伝える。


『良いか秋、この大当たりの連チャンが終わったら、その台ラムクリするからな。』





秋は大きく目を見開いてディスに吠えた。





『なんでだよ!?せっかく100連大当たり成し遂げるのに!!もう一回“ジャッジメント”の発現をすれば、さらに大当たり回数稼げるじゃねえか!修行にもなるし、俺も楽しめるし一石二鳥じゃねえか!さてはディス、俺が無双してる姿がカッコよすぎて、嫉妬しちゃってるの...?』



秋はディスを煽る様な口ぶりでそう言った。


ディスはため息を吐き、秋にラムクリの目的を話す。


『秋よ、確かにお主は大当たり100回を成し遂げるからそれは褒める。じゃがな、この台は練習台であり、明日セツナとの戦いで使用する台は通常台だ。魂の消費ももちろんあるぞ。

さっきの初当たり時の回転数は300回。訓練を始めるときに話した事は覚えておるか?『今日は回転数200回→400回まで伸ばせる様にしよう』と話した事を。秋の能力の発現は自由自在では無いからこそ、基礎的な魂の消費を抑える事を儂はもう少し鍛えたいのじゃ。わかってはくれるな...?』



秋はディスの言葉に、自分があまりに調子に乗りすぎてこれが練習台である事を忘れてしまっていた。


『ごめんディス。俺、調子に乗ってたよ。

分かった。大当たり終わったらラムクリしてくれ。そしてもう一回、魂の消費を抑える特訓するよ。』



『それでこそ儂の見込んだ男じゃ。そうと決まれば残りある大当たりを噛み締めるが良い。』




そして連チャン終了後、ディスは台をラムクリし通常確率に戻した。

秋は一から再度球を入れる特訓を行い、

400回転をする頃には体はバキバキになっていた。本当は“エストライセプス”が発現出来る状態にはなっていた様だが、特訓をする為に発現は控えて己の魂の力一本でやり切ったのだ。


ディスはそんな満身創痍の秋を褒めた。


『秋、お疲れ様じゃ。目標も達成したことじゃし今日の訓練は終了じゃ。今日はゆっくり眠るが良い。』



『あ、ありがとうディス...。てかこの疲れだと普通に明日に影響しそうで怖いわ。』



秋は30歳になってから体の疲れが取れにくくなっているので、明日の試合にこの疲れが影響すれば敗北してしまうのでは無いかと懸念している。



『それは大丈夫じゃ。これを眠る前に飲め。

儂特製の“クエン酸3000飛んだ150%ジュース”を飲めば一瞬で疲れなど吹き飛び、まさしく無双状態じゃよ、色んなところが。』



『シモい事言うんじゃねえ!あっちの方は元気にならなくていいの!うわぁ、ちょっと飲みたく無いけど、疲れ吹き飛ぶなら我慢して飲むかぁ...。』


そしてその晩、ジュースを飲んだ秋は確かに練習の疲れは吹き飛んだが、下半身のどうにも出来ない疼きで起きてしまい、下半身の鍛錬も行わざるを得なかった。


ディスに絶対明日は文句を言ってやるんだと思いながら、秋はなんとか寝つくのであった。



続く


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