陸援隊副長 田中顕助

千葉和彦

第1話 

【登場人物表】


田 中 顕 助   陸援隊副長


中 岡 慎太郎   陸援隊長

坂 本 龍 馬   海援隊長

藤     吉   坂本龍馬の従僕 


香 川 敬 三   陸援隊士(水戸出身)

大 橋 慎 三   陸援隊士

岩 村 通 俊   陸援隊士

大 江   卓   陸援隊士

波江田 浩 平   陸援隊士(薩摩出身)

    

谷   守 部   土佐藩小監察

島 田 庄 作   土佐藩下横目

河 村 盈 進   土佐藩医師

下 村 省 助   土佐藩廷吏

吉 井 幸 輔   薩摩藩目付


佐々木 只三郎   見廻組与頭

渡 辺 吉太郎   見廻組隊士

今 井 信 郎   見廻組隊士

増  次  郎   密偵


菊 屋 峰 吉   書店のせがれ

と     く   峰吉の姉

近江屋 新 助   醤油商


伊 達 五 郎   紀州藩重役

野 口 将 監   紀州藩軍奉行  

   

徳 川 慶 喜   前ノ将軍

山 内 容 堂   土佐藩老公

後 藤 象二郎   土佐藩参政

田 村 右 京   土佐藩京都留守居役

岩 倉 具 視   新政府参与

鷲 尾 隆 聚   高野山総管



○ 土佐藩白川屋敷・全景

  T「土佐藩白川屋敷」

  T「慶応三年十一月十五日午後」


○ 同・廊下

  出ていこうとする中岡慎太郎。

  立ち塞がる田中顕助。

  T「陸援隊長・中岡慎太郎」

  T「陸援隊副長・田中顕助」

中岡「ええい、きみ、邪魔だぞ!」

顕助「邪魔で大いに結構です!」

中岡「これから人と会おうというのに」

顕助「その人というのは、坂本さんでしょう」

中岡「ああ」

顕助「ますます行かせられません」

中岡「どうして?」

顕助「いまお二人を会わせれば、すぐに爆発

 するからですよ!」

  中岡、笑いだす。

  顕助、唖然と中岡を見た。

中岡「まあ、落ち着け」


○ 同・一室

  中岡は顕助を引っ張ってくる。

  しかし、顕助は座ろうとはしない。

中岡「座れよ(腰を下ろす)」

顕助「……(渋々倣う)」

中岡「今日という今日は、あいつの口車に乗

 せられたりはしない。それでよいな?」

顕助「ですが、それで何度も……」

中岡「化かされているぼくの約束では、アテ

 にはならないか?」

顕助「いや、そうは言いませんが……」

中岡「金打!」

  中岡、自分の太刀を半分抜いて、鍔を鳴

  らす。

顕助「!」

中岡「これで、よいか?」

顕助「は、はい」

中岡「二股膏薬の龍馬とは、今日こそ斬り合

 いになるかもしれん」

顕助「隊長!」

中岡「だが、ぼくも、やつとは刀を交えたく

 ないのだ。分かってくれるな」

  中岡は立ち上がる。


○ 同・玄関

  番傘をさして出ていく中岡。

  見送る顕助。

顕助「……(言葉を挟めない)」


○ 同・道場(夜)

  竹刀に素振りをくれている顕助。

  香川敬三が声をかける。

  T「陸援隊士・香川敬三(水戸出身)」

香川「一人じゃつまらんだろう。おれが相手

 になってやる」

顕助「おう、頼む」

  竹刀を手にとる香川が、蹲踞の形で顕助

  と向かい合う。裂帛の気合いから、竹刀

  をぶつけ合った。

    *    *

  竹刀を投げ出し、荒い息を吐く顕助と香

  川。

顕助「物足りんのう」

香川「おれもだ」

顕助「王政復古の暁には、新選組の阿呆ども

 を、五人や十人、まとめて薙ぎ倒してやる。

 その腹づもりであったのだが……」

香川「なかなか思うようにはいかん」

顕助「……」

香川「これも、あの坂本龍馬のせいよ! な

 あ、そうは思わんか?」

顕助「し、しかし、あの坂本がいなければ、

 今のように薩摩と長州が手を結ぶようには

 ならなかった。違うか?」

香川「おいおい、おまえも知っていることだ

 ろう? あの時期、中岡さんは太宰府を動

 けなかった。それゆえ、薩長連携の立役者

 の座も坂本に譲ることになったのだ」

顕助「ああ……そうだったな」

香川「しかし、今回は坂本龍馬の思うように

 はいかんぞ。なるほど、坂本の奔走に乗せ

 られた後藤象二郎が、慶喜さんを説き伏せ、

 大政奉還を呑ませている」


○ イメージ

  上段の間に徳川慶喜。

  T「十五代将軍・徳川慶喜」

  下段に平伏している後藤象二郎。   

  T「土佐藩参政・後藤象二郎」


○ 元の道場(夜)

  顕助が唸っている。

顕助「この建白が、受け入れられなかった時

 は、海援隊一手で将軍家を襲撃せんとまで

 坂本は言っていたのだが……慶喜さんの決

 意に触れるや、がらりと変わったな。この

 公のためなら、ぼくは一命を捨てるとはな

 あ」

香川「あはははは。あの人らしいや。だが、

 われら陸援隊の隊士は、武力討幕以外は眼

 中にない。海援隊と兄弟喧嘩になっても、

 わが道を行かん、だ」

  香川が喋り続けるが、顕助は先刻の中岡

  の言葉のほうが気になっている。

中岡の声「ぼくも、やつとは刀を交えたくな

 い。そのへん、分かってくれよ」

顕助「……」

香川「京都守護職と京都所司代。その下にあ

 る新選組。やつらが黙って引き下がるとは

 思えない。きっと騒ぎを起こすはずだ。わ

 れわれの側の備えとしては……」

  ヒヒーン。道場の表から馬の吠える声が

  する。

顕助「?」


○ 同・道場の表(夜)

  表に出る顕助、香川。

  裸馬にまたがった丁稚姿の峰吉が馬から

  降りる。

  T「書店菊屋のせがれ・峰吉」

顕助「峰吉か? どうした?」

峰吉「た、大変です。坂本さんと中岡さんが

 やられました!」

香川「何だと!」

顕助「どこだ? 場所は?」

峰吉「坂本さんの定宿の近江屋です」

顕助「あの醤油屋だな?」

峰吉「はい。二階がもう血だらけで」

  顕助、裸馬にまたがる。

顕助「峰吉、この馬を借りるぞ! (香川に)

 きみは厩舎の番人に頼んでくれ!」

  顕助、馬を走らせる。


○ 京都の通り(夜)

  顕助が一騎疾駆。


○ 土佐藩・河原町藩邸・表(夜)

  T「土佐藩・河原町藩邸」

顕助、門番に馬を預けて、走る。

  門の斜向かいに、近江屋が見える。

  

○ 近江屋・表(夜)

  T「醤油商・近江屋」

  島田庄作が抜刀して見張っている。

  そこに顕助が駆けつける。

  T「土佐藩下横目・島田庄作」

島田「田中くん、峰吉の知らせを聞いたか?」

顕助「はい」

島田「中岡さんはまだ話せる。きみたちに伝

 えたいことがあるそうだ」

  顕助、頷いて表戸を入る。


○ 同・階下(夜)

  小部屋で小さくなっている近江屋新助と

  その妻。幼児がふたり。 

  顕助、この一家を無視して、階段を上る。


○ 同・階上(夜)

  顕助、階段を上りきる。

  手前の八畳は血の海だ。二つの遺体が隅

  に並んでいるのに気づき、ドキッとなる。

  顔に布を被せているが、その布をめくっ

  てみると、一体は前額を割られ、真綿の

  胴着も血まみれになっている坂本龍馬の

  遺体、もう一体、背を大きく斬られた大

  兵肥満の遺体は、龍馬の下僕の藤吉(元

  力士)のものだ。

  T「坂本龍馬」

  T「龍馬の下僕・藤吉」

  顕助、喉仏がゴクリと鳴る。

  と、奥の座敷から、襖ごしに声がする。

中岡の声「いや、思わぬ不覚を取ったよ……

 諸君も今後は注意することだ」

顕助「中岡さん!」

  顕助、奥に走って襖を引く。


○ 同・奥八畳(夜)

  布団に寝かされた中岡の周囲を親しい者

  (土佐侍の谷守部、薩摩侍の吉井幸輔)

  が囲んでいる。

  顕助が襖を引いたことで、谷守部らが一

  瞬慌てる。

  T「土佐藩小監察・谷守部」 

  T「薩摩藩目付・吉井幸輔」

谷 「おい、脅かすな!」

顕助「す、すまん」

中岡「ああ、きみ(顕助)か」

顕助「はい」

中岡「きみから貰った短刀で、賊の太刀を受

 け流した……だが、それも遅かった……坂

 本は刀を鞘のまま取って受けたが……とう

 とう頭をやられた」

顕助「……」

中岡「いま、みんなにも話していたが、刀は

 つねに手元に置いておくことだよ」

顕助「はい……」

中岡「坂本はぼくに向かって、もう頭をやら

 れたからいかんと言った。そのとおりだっ

 た。ぼくも、しょせん助かるまい」

  中岡は、後頭部を斬りつけられ、右手を

  やられている。右足も斬られたようだ。

  医者の河村盈進が包帯を替えている。

  T「土佐藩医師・河村盈進」

顕助「そんなことはないです。長州の井上聞

 多はあれほどひどく斬られたが、まだ生き

 ています。隊長も気をたしかに持ってくだ

 さい!」

中岡「そうだな……」

顕助「賊は何者ですか?」

中岡「そうさなあ……賊は三人だった。その

 うち一人が、『こなくそ』と叫んで、斬り

 かかってきた」

顕助「こなくそ……?」

中岡「十津川郷士を名乗っていたが、案外、

 伊予の者だったかもしれん」

谷 「たしかに! こなくそ、は伊予弁だ」

中岡「一日でも早く事をあげることだ。賊に

 先手を取られて、おれのようになってはつ

 まらん」

吉井「心配はいらない。長州の兵も月ずえに

 は大坂に着くはずだ。われら薩摩の兵は言

 うまでもない。一挙の日は近いぞ! 頑張

 ってくれ!」

中岡「うむ(と微笑)」

  物音がして、香川が奥八畳に入ってくる。

中岡「おう、香川くんか」

香川「大丈夫か?」

中岡「よくはない。だから、こういう目にあ

 っている」

顕助「……」

中岡「岩倉卿に、王政復古のことは、ひとえ

 に卿の御力に頼っている、と伝言を頼む」

香川「わ、分かった。間違いなく岩倉卿に伝

 えよう」

中岡「頼むぞ」

  中岡、体を起こして、香川の手を握る。

  感涙にむせぶ香川。

顕助「……」


○ 書店菊屋・厨房(明朝)

  後ろ姿の女性(後出・峰吉の姉とく)が

  米飯を炒めている。

  仕上がりを待っている峰吉。

  T「書店菊屋」


○ 同・裏手(朝)

  川風に吹かれて、峰吉を待っている顕助

  と香川。二人だけの密談のはずが、俄か

  に険悪になっている。

香川「中岡さんが? まさか、そんな」

顕助「ヘンな話だ……なあ、そう思ってくれ

 るだろう」

香川「坂本も大政奉還にこだわって自説を曲

 げなかった。きみはそう言うんだな?」

顕助「ああ。とうとう中岡さんと口論になっ

 た。そして二人は……あの二人は!」


○ イメージ

  近江屋二階の奥八畳。夜。

  太刀を抜こうとする坂本。中岡のほうが

  一瞬早く、その短刀の一撃が坂本の前頭

  部を横に薙いだ。

  倒れる坂本。中岡が息を整えようとした

  とき、藤吉が奇声とともに逃げる。中岡

  が藤吉の背を斬って倒した。

  が、虫の息のはずの坂本が、中岡の右脚

  を払った。横倒しになる中岡の、後頭部

  に斬りつける坂本、微笑む。

  凄惨な斬り合いになる中岡と坂本。

顕助の声「あの二人が、斬り合ったことは広

 言できない。中岡さんも迷って、ウソを並

 べたんだ」


○ 元の菊屋・裏手(朝)

香川「バカバカしい! 中岡さんも坂本も、

 賊の手にかかったのだ! それが仲間同士

 が遺恨を呑んでの果し合いなど……」

顕助「……」

香川「まだ何かあるのか?」

顕助「中岡さんも坂本も、賊にやられたこと

 になっている。だが誰もその賊を目撃しち

 ゃあいないのよ」

香川「何だと?」

顕助「賊が十津川郷士を名乗って、中岡さん

 も坂本も藤吉もだましたという」

香川「だから、そいつらは、十津川郷士に化

 けた新選組だろうというんだ!」

顕助「違う! 誰も、十津川の郷士などとは

 会っちゃあいないんだ。全部、中岡さんの

 作り話かもしれない……」

香川「きみ、自分が恐ろしい話をしているこ

 とは承知のうえだな?」

顕助「ああ、大変な話だ。だが、ぼくは、あ

 の二人、とりわけ中岡さんの話を聞いてい

 るからな……その通りのことが起こっただ

 けともいえる」

香川「そんなバカな! 近江屋の夫婦は何と

 言ってる?」

顕助「下横目があの夫婦を庇っていて、ぼく

 は直接、話を聞くことができない」

香川「(唸る)ふうむ」

峰吉が菊屋の勝手口から出てくる。

峰吉「田中さん!」

顕助「おう、仕度はできたか?」

  峰吉、風呂敷包みを持ちあげてみせる。

峰吉「ええ、この通り。うちの店で焼き飯を

作らせましたよ」

  十代の峰吉は泣き腫らした跡が、顔に残

  っているが、無理に笑ってみせる。

顕助「よし、運んでくれ」

峰吉「はいっ」

踵を返す峰吉。と、香川が顕助に寄って

  耳打ち。

香川「さっきの話は内緒だぞ」

顕助「ああ。中岡さんの体が良くなるまでは、

 な」

香川「そうだな」


○ 近江屋・奥八畳(朝)

  河村盈進が控えるうち、弁当の焼き飯を

  つかう中岡。頭に包帯を巻いている。

  不安な中にも安堵する顕助、香川、峰吉。

峰吉「早くよくなってくださいよ」

中岡「ああ」

峰吉「ぼくが軍鶏を買うため座を外している

隙を刺客に襲われるなんて……(落涙)」

中岡「大丈夫、大丈夫だ」

  峰吉の頭に手を乗せて揺さぶる中岡。

  顕助、ゴホンと咳をする。

中岡「おい、きみこそ大丈夫か?」

顕助「大丈夫ですよ」

  大笑いの中岡に、バツが悪い顕助。

  と、いきなり嘔吐する中岡。河村が慌て

  て背をゆすり、吐瀉を助ける。

顕助「隊長!」

  蒼くなる顕助。

  寝床に横たわる中岡。血の気がない。


○ 中岡慎太郎のデスマスク

N 「次の日の夕方、中岡慎太郎は亡くなっ

 た。まだ三十歳の若さだった」


○ 京都霊山墓地(夜)

  坂本、中岡、藤吉の三つの棺が送られる。

  会葬する陸援隊士(顕助、香川ら)に、

  土佐藩士(谷ら)と薩摩藩士(吉井ら)。

  T「十一月十七日」

 T「坂本龍馬、中岡慎太郎、藤吉、埋葬」


○ 白川屋敷・座敷

  顕助と香川を前に、熱弁をふるう谷。

谷 「坂本さんと中岡さんを手にかけたやつ

 らが分かったぞ!」

顕助「(驚愕)」

香川「(顕助の横顔をチラリと見て)ほう、

 それは誰だ?」

谷 「新選組の原田左之助よ。そいつは伊予

 松山藩の出で、新選組では十番組隊長を務

 めていたそうだ」

香川「(頷いて)やはり、きみ(谷)の言っ

 たとおりだったな。伊予の訛りがあったの

 も当然だ」

顕助「(苦い顔)どうして、原田ナニガシと

 分かったのだ。伊予弁をつかうのは、そい

 つだけとは限るまい?」

谷 「近江屋の二階に、空の鞘が落ちていた

 のよ」

顕助「なに?」

谷 「その鞘は蝋色をしていた。これは、と

 思い、薩摩の伏見屋敷を訪ねて、御陵衛士

 の生き残りに鞘を見せた」

顕助「御陵衛士……新選組と喧嘩別れした連

 中だな」

谷 「きみが警戒するのも分かるがね。彼ら

 も後悔しているんだ。信じてやってもいい

 だろう」

顕助「……」

     *    *    *

  谷が去って、顕助と香川が二人きり。

香川「谷も、空の鞘を隠すなど、余計なこと

 をしてくれる。おかげで顕助まで迷ったで

 はないか」

顕助「すまん」

香川「目が覚めたのだな?」

顕助「ああ。あと一つ、分からぬことはある

 が、それさえ分かれば……」

香川「何だ?」

顕助「龍馬さんと隊長がいた時に、誰が見計

 らって近江屋を襲わせたのか、分かってい

 ない」

香川「む……」

顕助「だが些事だ。誰が二人を殺したか……

 それに比べるとな」

香川「そうだな」

顕助「隊長を、中岡さんを殺したのは、やは

 り新選組であった。そのことが大事だよ」

  顕助の眼が潤んでいる。


○ 洛北岩倉村

  農村風景の中を行く顕助と香川。

  T「十二月一日」

N 「田中顕助と香川敬三は、岩倉具視の隠

 れ家を訪ねた。顕助が岩倉と会うのは、こ

 れが初めてであった」


○ 岩倉の隠宅・和室

  農家宅に和室を増築している。

  落飾した岩倉具視が、顕助、香川、吉井

  と密談する。

  T「先ノ中将・岩倉具視」

  煙管から煙を吐いている岩倉と対等に話

  す吉井。顕助、香川は気後れしがちだ。

  吉井は、京都付近の地図を指しながら、

吉井「薩摩兵三千、長州兵二千.合わせて五

 千になります」

岩倉「(顕助に)土佐はどうかな?」

顕助「(狼狽)分かりません。容堂侯は兵を

 従えての上洛は考えていませんし、後藤象

 二郎も従うしかありません」

岩倉「ふん。中岡や坂本が生きておればな、

 山内容堂の首根っこを押さえて上洛させて

 いただろうに」

顕助「(紅潮して)し、しかし、陸援隊の兵

 五十人は自由に動かせます! 十津川郷士

 も合わせて百人。統率に当たっていた中岡

 慎太郎も薩長の兵に遅れは取らず、先に立

 って、幕兵と戦うと……」

岩倉「待て! (吉井に)あの話はしてない

 のか?」

吉井「していません。あれは、もともと中岡

 の思いつきでしたから」

岩倉「そうか」

顕助・香川「……?」

  岩倉、煙管を煙草盆で叩いて、座り直す。

岩倉「先月のはじめ、中岡や吉井と話をして

 いるうち、中岡がふと思いついたのよ。い

 くら何でも、薩摩兵の弾除けになるのは、

 つまらんと言い出してな」

吉井「(苦笑い)ぼくも、そんなつもりは毛

 頭なかったが……」

香川「では、何をやれというんです?」

岩倉「ここよ!」

  岩倉、煙管で地図の一点を指す。その場

  所は高野山だ。

顕助「高野山!」

岩倉「そうだ。紀州、高野山で旗揚げするの

 よ。あそこで郷士を募れば、百人とはいわ

 ず、一千人は集まるのではないか」

  顕助の視線が、高野山に集中する。

岩倉「土佐勤王党と十津川郷士で高野山から

 和歌山城を牽制し、紀州藩の兵が動けない

 ようにする。機を見て、薩長の兵と大坂城

 を挟撃して……(言葉が途切れる)田中、

 どうした?」

  顕助が落涙している。袖で涙を拭ってい

  たが、

顕助「ぼくの叔父、那須信吾は、十津川郷士

 と旗揚げしましたが、武運つたなく討ち死

 にしました。その遺志を継ぐことができる。

 宿年の望みが今かなうのです!」

香川「(膝を叩く)そうか。そうだったな」

岩倉「(深く頷く)」


○ 土佐藩・河原町藩邸・表


○ 同・一室

  留守居役・田村右京の前で平伏している

  顕助。

T「京都留守居役・田村右京」

田村「おぬし、いつになったら、白川屋敷を

 出ていくのだ」

顕助「(顔をあげる)分かりません」

田村「なにっ?」

顕助「それがしは陸援隊の副長とはいえ、最

 古参ゆえ副長にまつり上げられただけのこ

 と。隊員の一人一人がどのような関わりで

 陸援隊に入ったのか、調べてみないことに

 は何とも(とぼける)」

田村「ええい。白川屋敷は、隊長の中岡慎太

 郎に使わせてやってくれという参政よりの

 口利きで、おぬしらの好きにさせた。中岡

 が亡くなった今、おぬしらが居座る処では

 ないぞ」

顕助「はっ(また平伏)」

田村「よいか。きょう六日、老公容堂さまは

 大坂にお着きだ」

顕助「容堂さまが大坂に……」

田村「そうとも。九日には上洛されよう。そ

 のとき、見苦しくないようにしておけ」

顕助「心得ました」

田村「うむ」

  

○ 同・表

  屋敷から出てくる顕助。

顕助「(独言)そうか。ご老公は九日には白

 川屋敷も見分されるか。その前に、われわ

 れは…」

  顕助、足を止める。

  お高祖頭巾を被った女が、目礼してくる。

女 「田中さまではありませんか?」

顕助「いかにも田中だが、お手前は?」

女 「菊屋の娘です」

  T「菊屋の娘とく」

顕助「菊屋の? すると、峰吉の姉御か」

とく「はい」

 

○ 待合「月廻屋」の表

  とくの案内で入っていく顕助。


○ 同・貸席

  とくと峰吉が、顕助と対座する。

  峰吉は緊張して、額から油汗を流してい

  る。そして一言も口は利かない。

顕助「(不審に)……」

とく「峰吉、本当のことを話すと、そう決め

 たじゃないか」

峰吉「……」

とく「峰吉!」

峰吉「(落涙)す、すみません。田中さん。

 嘘をついてました」

顕助「嘘?」

峰吉「ぼくは、あの連中と顔を合わせていた

 んです! 坂本さんや中岡さんに斬りかか

 ったやつらです」

顕助「何だと……」


○ 回想

  近江屋二階の奥八畳。夜。

  中岡が坂本龍馬に空腹を訴える。

中岡「腹が空いた」

坂本「わしもじゃ。峰吉!」

  隣の六畳間で藤吉と雑談していた峰吉が

  ふりむく。

坂本「すまんが、軍鶏を買ってきてくれ」

峰吉「はい(と立つ)」」

     *     *    *

  精肉店「鳥新」で、注文した軍鶏肉を買

  って帰る峰吉。

峰吉の声「ぼくは軍鶏肉を買って、近江屋さ

 んに戻ったのですが」

     *    *    *

  近江屋の表に来かかる峰吉。

  二階で複数の叫び声があがる。坂本の声、

  そして中岡の声だ。

声 「コナクソ!」

峰吉「!」

  また静かになる。

  峰吉が茫然としていると、二階から階段

  を駈け降りる音がして、次いで表戸がバ

  ンと開かれ、七人の覆面姿の男が飛び出

  してきた。

峰吉「!」

  峰吉が後ずさりすると、覆面侍の一人が

  刀を抜こうとした。峰吉が目をつぶる。

  「待て!」

  首領らしき男(佐々木只三郎)が、覆面

  侍A(渡辺吉太郎)を制止している。

渡辺「佐々木さん!」

只三郎「路上で人を斬ると、あとが厄介だ」

渡辺「は、はい」

只三郎「行くぞ!」

  六人が後に続いたが、この六人は息が荒

  い。

  先に立った只三郎が謡う。

只三郎「その時、義経少しも騒がず。打物抜

 き持ち、現の人に向ふが如く、言葉を交は

 し戦ひ給へば……」

  『舟弁慶』である、只三郎が部下たちを

  落ちつかせようと謡っているのだ。

  物乞い(実は密偵の増次郎)が近江屋の

  軒下から走り出て、只三郎から銅銭を受

  け取る。

  その間に、峰吉は一目散に菊屋に取って

  返した。

    *    *    *

  菊屋の表戸を閉めると、とくが灯りを手

  に立っていた。

峰吉「(幽霊と見間違え)うわっ」

とく「な、なんだい。峰吉じゃないか……」

 

○ 元の貸席

  峰吉が泣いている。

峰吉「臆病でした。侍どもが怖くて……歯の

 根も合いませんでした」

顕助「……しかし、戻ったのだな」 

峰吉「はい、近江屋さんのご主人の声で、わ

 れに還りました」


○ 回想

  近江屋の表に、主人の新助が島田庄作を

  連れてくる。

新助「まだ賊は、中にいるかもしれません」

島田「おかみさんが心配だろう。裏に回って

 くれ」

新助「は、はい(裏口に回る)」

  島田は抜刀したが、へっぴり腰だ。

  峰吉は、菊屋から走り出て、いま帰って

  きたふうに装う。

島田「おお、峰吉か。まだ敵がいるようだ」

峰吉「(空元気で)まさか。何も起こっちゃ

 いませんよ」

  峰吉、表戸を引く。


○ 元の貸席

  峰吉は頭を下げどおしだ。

峰吉「(涙声)そのあとは、ご存じの通りで

 す。ぼくは、坂本さんと藤吉さんの死骸を

 見つけましたが、中岡さんはまだ息があり

 ました。白川屋敷にそのことを知らせなけ

 れば、と島田さんが言うので、ぼくが藩邸

 で馬を借りたんです」

顕助「(考える)……」

とく「ねえ、峰吉を許してやってください。

 お願いします」

  とくも頭を下げる。

顕助「分かりました。(峰吉に)おまえの忠

 義の心、疑うべくもない」

峰吉「(ハッと)それでは」

顕助「相手が怖くて、今まで黙っていたのだ

 ろう。もう忘れてくれていい」

峰吉「ありがとうございます!」

顕助「ただ、賊を見たことも忘れてくれ。余

 計な波風を立てたくない。それでいいな」

峰吉「はい」

とく「わたしからも礼を言います。ありがと

 うございます」

顕助「うむ」

  と鷹揚な態度であったが、

顕助の声「佐々木? 佐々木だと? いった

 い何者だ?」


○ イメージ

  背中を見せている覆面侍がひとり、『舟

  弁慶』を謡っている。

覆面侍「その時、義経少しも騒がず。打物抜

 き持ち、現の人に向ふが如く、言葉を交は

 し戦ひ給へば……」

香川の声「そいつは、佐々木只三郎だろう」


○ 白川屋敷・書庫(夜)

  陸援隊の調べた二冊の秘密名簿「新選組

  人名簿」と「京都見廻組人名簿」を閲覧

  している顕助と香川。

  T「十二月七日」

  いま香川が「京都見廻組人名簿」を繰っ

  たところだ。その頁を読む香川。

香川「元治元年六月。佐々木只三郎。見廻組

 与頭……これは、くみがしら、と読むのか

 ……大坂にて任命……間違いないな」

顕助「(字を読む)これが、中岡さんや坂本

 さんを殺したヤツか」

香川「うむ……ただ、新選組の原田左之助の

 仕業と、おれは見ていたが(苦笑)」

顕助「ぼくも騙されていたよ」

香川「おたがい、谷守部の先走りに乗せられ

 ていたな……しかし、これから、どうする」

顕助「見廻組は……見廻組は放っておこう」

香川「(頷く)やはり、そうなるか」

顕助「明日になれば、われわれは鷲尾隆聚卿

 を擁して高野山に向かう。そして、あの地

 を根拠として、義兵をあげる」

香川「うむ。中岡さんも、これが何より大事

 というだろう。高野山の義兵として捨てる

 べき命だ。ほかのことで、捨ててはつまら

 ん!」


○ 鷲尾邸・庭(夜)

  香川と大橋慎三が、塀を乗り越える。

  T「陸援隊士・大橋慎三」

  香川が梟の鳴きまねをする。

  T「十二月八日夜半」

  障子を開けて、寝衣の鷲尾隆聚が顔を見

  せる。

  T「侍従・鷲尾隆聚」

香川「いよいよご内勅が下りました。お書付

 けは、岩倉卿のお手元にお預かりをしてお

 ります」

大橋「これからお仕度あそばれて、お出まし

 をお願いいたします」

鷲尾「あいわかった」


○ 白川屋敷・通用口(夜) 

  顕助はじめ陸援隊の隊士が、ミニエー銃

  を提げて出ていこうとする。

  それを押しとどめようとする取締の下村

  省助。

  T「陸援隊取締方・下村省助」

下村「待て、待て! この銃はどういうつも

 りだ!」

顕助「お召し出しに必要ゆえ、持っていこう

 というのだが」

下村「岩倉だな? いずれ岩倉卿を擁して、

 暴挙を企てるに相違ない! この銃を残ら

 ず元に戻せばよし……」

顕助「岩倉卿だけではない」

下村「なに?」

  下村に耳打ちの顕助。

  とたんに腰砕けになる下村。

下村「それでは、もうご内勅が……」

顕助「通るぞ。いいな?」

下村「知らん、知らん! 知らなかったこと

 だ!」

  顕助以下まかり通る。


○ 西本願寺・境内(夜)

  雪が降っている。

  T「西本願寺」

  顕助はじめ香川、大橋ら陸援隊士四十余

  人が控えている。岩村通俊や大江卓もい

  る。いずれもミニエー銃を提げている。

  T「陸援隊士・岩村通俊」   

  T「陸援隊士・大江卓」

  本堂に進み出る鷲尾卿を前に、頭巾の岩

  倉卿が宣旨を読み上げる。

岩倉「国家の形勢はなはだ相迫り候、精々鎮

 撫はもちろんに候らえども、もし反逆の賊

 これある時は、有志の輩を率い、すみやか

 に征伐し、抜群の精勤あるべきの事」

  陸援隊士たちに感動の色。

  軒下から見ていた増次郎が、ここまで聞

  くと軒下を離れて一方に走る。


○ 同・門前(夜)

  鷲尾卿を護衛しながら、進軍する陸援隊

  士。後尾で見張る顕助、岩村、大江。

顕助「?」

  路地を提灯が近づいてくるのだ。顕助が

  寄ってみると、それはとくであった。

顕助「おとくさん?」

とく「田中さん。峰吉を見ませんでした?」

顕助「(訝る)いや……どうしてだね?」

とく「あの子、陸援隊の役に立ちたいといっ

 て店を出ていったんです」

顕助「それはありがたい! だが、見てはい

 ないぞ」

とく「えっ……」

  そのとき、裏手から、峰吉の叫び声が聞

  こえる。

峰吉の声「こいつ、見張りだ! 誰か来てく

 れ!」

男の声「うるさい!」

峰吉の声「うわっ」

顕助「!」

  雪煙を巻いて、顕助が走りだす。

  岩村、大江、とくが続く。


○ 同・裏手(夜)

  増次郎が短刀を振り回して、峰吉を威嚇

  している。

峰吉「うわっ」

増次郎「黙れ! 黙らんか!」

  峰吉、尻餅。

  そこに駆けつける顕助。

顕助「おぬし、密偵だな!」

増次郎「!」

  増次郎は逃げようとする。岩村、大江が

  回り込み、逃げ道をふさぐ。

  増次郎は岩村に体当たりを図るが、岩村

  がかわして大刀一閃、増次郎を斬り捨て

  る。

顕助「(寄り)何者の仕業だ! 吐け!」

大江「もう、助からんぞ」

増次郎「(無視して)おまえらこそ終わりだ。

 見廻組四百に囲まれてな」

  増次郎、絶命。

  顕助、増次郎の目を閉じてやる。

顕助「(岩村らに)行こう」

岩村・大江「おう(と去る)」

  とくが峰吉を助け起こしている。

  峰吉は顔面蒼白だ。

顕助「(優しく)峰吉、助かったぞ」

峰吉「は、はい」

顕助「だが、もう休め」

峰吉「(頷く)」

とく「ご武運を」

  顕助が頷き返す。


○ 松林寺・表(翌朝)

  雪はやんでいる。

  T「松林寺」

  T「十二月九日早朝」


○ 同・宿坊(朝)

  雪が積もった庭先に、増次郎の死骸が置

  かれている。

  掛けられていた菰を剥がして、死相を確

  かめる渡辺吉太郎。

  T「見廻組隊士・渡辺吉太郎」

渡辺「(唸る)たしかに、これは増次郎です

 が……」

  濡縁に立っている佐々木只三郎。

  T「見廻組与頭・佐々木只三郎」

只三郎「増次郎の仲間が、その死骸を運んで

 きたのよ」

  渡辺は菰を戻す。

渡辺「増次郎は引き続き、土佐藩を見張って

 いたはず。あれには、坂本龍馬に加えて、

中岡慎太郎という余禄もありました!」

只三郎「うむ」

渡辺「土佐藩の重役が、佐々木さんに会いた

 がっている、というのが、増次郎の掴んだ

 お手柄でしたが……」

只三郎「あれは上手くいった。いや、上手く

 行き過ぎた。おかげで土佐藩内の空気が一

 挙に倒幕へ傾き、重役も行き場をなくした

 のだからな」

渡辺「……」

只三郎「陸援隊も、中岡慎太郎の仇を討つの

 だと言って、高野山で義兵を募りに行った

 とよ」

渡辺「追跡しないのですか?」

只三郎「放っておけ! 陸援隊も十津川郷士

 を合わせて百人足らず。それより容堂侯が

 大坂まで連れてきた一千人の兵士のほうが

 気になる……」

  濡縁に足音がして、今井信郎が駈けてく

  る。

  T「見廻組隊士・今井信郎」

今井「大変です!」

只三郎「何だ、騒がしい」

今井「会津藩から使いの者が! 会津藩は蛤

 御門の警護を罷めさせられ、替わりに土佐

 藩の兵が就いたそうです」

只三郎「なにっ」

渡辺「どうします?」

只三郎「二条城に入る。入って、上様をお守

 りするのだ!」

渡辺・今井「はいっ」


○ ドキュメント方式による解説

  京都御所。夜。

N 「この日、すなわち慶応三年十二月九日

 の夜半、朝廷は王政復古の大号令を発布せ

 しめた」

     *   *   *

  岩倉具視。

N 「幼い明治帝にかわって、この宮廷クー

 デターを主導したのは、岩倉具視である。

 岩倉は、西郷吉之助、大久保一蔵ら薩摩の

 討幕派と手を結んで、この政変劇を成し遂

 げている」

     *   *   *

  山内容堂。

  T「土佐藩老公・山内容堂」

N 「有力な大名で、旧幕府の側に立とうと

 したのは土佐の山内容堂ひとりである。だ

 が、有力な補佐役とみられていた後藤象二

 郎も動きに精彩を欠いていた」

     *   *   *

  小御所会議における容堂と岩倉の舌戦。

  茫然と見ている後藤象二郎。

N 「結局、山内容堂も岩倉具視に押しきら

 れる形で、王政復古の大号令の発布が決ま

 った」

     *   *   *

  王政復古の大号令の文案。

N 「摂政関白と幕府の廃止。それに加えて、

 京都守護職、京都所司代の廃止。さらに、

 徳川慶喜の内大臣辞任と幕府領の返上が謳

 われた」


○ 金光院・表

  T「高野山・金光院」

  「義兵隊」の旗が立っている。その横に

  「薩州援兵隊」「十津川郷士隊」の旗も。

N 「同じころ、義兵隊の一行は、紀州、高

 野山に到着していた」


○ 同・本陣

  直垂姿の鷲尾卿が控えるうち、五十人強

  の隊士に軍令を読み上げる顕助。香川も

  同席している。

顕助「一、酒色禁止の事。一、兵器もてあそ

 ぶまじき事。一、高声高論いたすまじき事。

 一、殺生はもちろん、みだりに竹木を伐る

 まじき事。一、本陣において早鐘撞き候え

 ば、迅速駆けつくべき事。以上である」

  平伏する隊士たち。

  大橋が入ってきて、あとに続く伊達五郎

  と野口将監を紹介する。

  T「紀州藩重役・伊達五郎」

  T「紀州藩軍奉行・野口将監」

大橋「紀州家の伊達五郎どのと野口将監どの。

 こたび、われら諸国の浪人が、この高野山

 に屯集したいきさつを知りたいと言う」

香川「ふむ。われらはともかく、こたびの鷲

 尾卿の高野山出張は穏やかではない。その

 真意を確かめたい、とお手前がたは申され

 るのだな?」

伊達「……!」

野口「いや、けっして、そのようなことは」

鷲尾「家老にはすでに書面をもって伝えてあ

 る。こたびの出張は、王政復古の令を朝命

 をもって伝えたにもかかわらず、臣子の本

 分をあやまり妄動する輩を鎮撫するのが唯

 一の目的よ!」

  鷲尾卿のきっぱりした口調に、脂汗を流

  す伊達、野口。

  顕助がその言葉にのる。

顕助「さよう。われらは断じて人民を悩乱す

 るものではない! もし疑念のかどあらば、

 ただちに京都に奏聞すればよい!」

野口「……」

伊達「謹んで、お請けつかまつる」

  叩頭する伊達。

  野口も慌ててそれに倣う。


○ 同・表

  野口が荷駄を運ぶ足軽衆に指図している。

  伊達が顕助、香川に話しかける。

伊達「いや、感服つかまつった。あの荷駄は

 はお受け取りください」

  踵を返して去ってゆく伊達。

  足軽衆から荷駄を受け取る顕助。その荷

  駄は千両箱。開錠して息を呑む香川。


○ 金光院の裏山(夕)

  三々五々と郷士が到着する。その数は数

  百人ばかり。

    *    *    *

  郷士たちに配られるミニエー銃。 

  早速、試射にかかる。

  郷士の手で発射される銃。

  標的にされた板が吹き飛ぶ。

    *    *    *

  その様子を眺めている顕助、香川、大橋。

大橋「しかし、どういうつもりであったやら」

香川「坂本のことか?」

大橋「ああ。あの銃は最新式のものだ。それ

 を藩に収めておきながら、その一方で後藤

 象二郎を煽って大政奉還に血道を上げる。

 さっぱり分からん!」

顕助「それを言われると、中岡さんも立場が

 ないさ。ミニエー銃を土佐藩の倉庫に収め

 るにあたっては、中岡さんも尽力している

 からな」

大橋「そうだったな」

香川「まあ、われわれとしては、中岡さんが

 敷いていった道をたどっていけばいい。そ

 れで間違いはないと思う」

顕助「ああ」

  またミニエー銃が試射される。

顕助の声「香川、大橋、それにわたしは、鷲

 尾侍従の輔翼兼参謀に任じられた」


○ 金光院・表(夕)

  整列する東一番隊の隊士三百人。

  閲兵する顕助。

顕助の声「わたしは、東一番隊の隊長を兼ね

 ることになった。高野山義軍東一番隊の誕

 生である」


○ 同・本陣(夜)

  酒に酔った波江田浩平が、佩刀を振り回

  す。闇夜のことゆえ、暴れる男の実体は

  つかめず、右往左往するばかり。

岩村「いかん、斬り込みだ!」

大江「御前を固めろ!」

  みな誤解を解けぬまま、鷲尾卿の前を固

  める。大江が手傷を負うが、波江田は目

  を丸くして昏倒した。


○ 同・納戸(夜)

  荒縄で手足を縛られた波江田が蒼くな

  っている。

  T「陸援隊士・浪江田浩平(薩摩出身)」

  その前に立つ顕助。

顕助「目が覚めたか?」

波江田「は、はい」

顕助「つい酔ったすえの間違いというのは、

 ぼくにもよく分かる」

波江田「はい……」

顕助「だが、いまだ一戦もまじえぬうちに、

 士卒の軍紀がこうも乱れては心もとない。

 分かるな?」

波江田「お、おれに切腹をお命じください。

 お願いします!」

顕助「うむ……」

  そこに手傷に包帯を巻いた大江と、鷲尾

  卿が入ってくる。

顕助「鷲尾侍従? なにか?」

鷲尾「おお、喜べ、王政復古の大号令が発布

 されたのよ」

顕助「あれは、もう……え?」

鷲尾「そうじゃ。公式の諭告はまだ届いてい

 ない。よって今から体を清め、束帯をして

 一同の者に言い聞かせなければならぬ」

  鷲尾卿がいったん踵を返す。

鷲尾「ああ。こうした吉報に触れたのじゃ。

 よって波江田は、死一等を減ずるがよろし」

  去る鷲尾卿。

  縄を解く大江。波江田は男泣きしている。


○ ドキュメント方式による解説

  鳥羽の戦いの錦絵。

N 「一月三日、新政府軍と旧幕府軍は鳥羽

 伏見で対峙。鳥羽方面の薩摩兵が先制の砲

 撃を開始。鳥羽伏見の戦いが始まった」

    *    *    *

  両軍対峙のアニメーション。

N 「兵力は新政府軍五千に対して、旧幕府

 は一万五千。旧幕府側が優勢だった」

N 「見廻組も、歩兵隊と共に旧幕府軍に加

 わっていた」

N 「だが強引に前進を開始した旧幕府軍に

 対し、薩摩兵は銃砲、大砲で一斉に発砲。

 これで旧幕府軍の先鋒は潰走した」


○ 鳥羽街道(実写)

  ラッパの合図とともに、薩摩藩の銃砲が

  斉射、同時に大砲も打ち出される。

  旧幕軍の歩兵は二列縦隊で進んでいたが

  蜘蛛の子を散らすように逃げ去る。

  馬上の佐々木只三郎が抜刀して叫ぶ。

只三郎「逃げるか! 斬るぞ!」

  銃声。

  腹に当たって落馬する只三郎。

  渡辺吉太郎が助け起こす。


○ 金光院・表(朝)

  大江が山駕籠で駆け込むが、半死半生の

  体である。東一番隊の隊士が助け起こす。

大江「水だ……水をくれ!」

  顕助が出てくる。

顕助「おい、しっかりしろ! 京都はどうで

 あった」

大江「鳥羽伏見で開戦、われら薩長の兵が、

 旧幕軍を追い込んでございます」

顕助「うむ。薩摩と長州以外はどうだ? と

 りわけ、土佐はどうなっている? おい、

 大江!」

  失神している大江。


○ 伏見街道(実写)

  土佐藩兵が新政府軍に加わる。

  歓呼の声。

  砲撃が激化する。

N 「伏見方面では、土佐藩の兵が藩命を待

 たず、戦闘に参加して、旧幕府軍に砲撃を

 加えた」


○ ドキュメント方式による解説

  伏見の戦いの錦絵。

  山内容堂。

N 「鳥羽伏見の戦いは、薩長と旧幕府の私

 戦であるとして、山内容堂は加勢を禁じた

 が、土佐藩の各隊の動きは岩が転げ落ちる

 ように急であった」

  岩倉具視。

N 「朝廷会議は紛糾したが、岩倉具視の決

 断により、錦の御旗があがった」

  錦旗。

N 「これにより、薩長は晴れて官軍となり、

 旧幕府軍は賊となった」


○ 大坂城・本丸の門前

  混乱する旧幕府軍歩兵隊の兵士。

  T「一月七日」

 T「徳川慶喜、大坂城から脱出」

  T「歩兵隊の敗残兵、紀州路へ」

  歩兵隊の中に、戸板で運ばれてゆく佐々

  木只三郎の姿。上衣の鎖帷子が血で染ま

  っている。

  従っている渡辺吉太郎。


○ 金光院・一室

  机を囲んで、顕助、香川、大橋が話し合

  っている。机上に紀州路の地図。

大橋「歩兵隊が大坂を出て、和歌山に向かっ

 ていることは間違いない」

顕助「だが分からんな。どうして余力を残し

 ているはずの旧幕軍が、本拠である大坂城

 を捨てるのか……分からん!」


○ 天保山沖

  幕府軍艦開陽丸が転舵する。

N 「敵の総大将であるはずの前ノ将軍家が、

 その居城である大阪城から敵前逃亡を図ろ

 うとは、顕助も思ってもみなかった」

 

○ 元の金光院・一室

香川「しかし、土佐の動きも決まったな。薩

 長に加担して、前線に出ている」

顕助「……」

大橋「うむっ。旧幕府の側には、立たないで

 いてくれる。これで決まったぞ」

  地図上の和歌山城の位置を、指で押さえ

  る顕助。

顕助「だが、このまま捨て置けば、幕兵は九

 日の晩には和歌山城に入る。もしも紀州が

 そやつらと組んで、大坂に逆寄せすれば、

 逆転もありうる!」

香川「うむ」

顕助「そやつらを紀伊見峠で討ち取って、四

 分五裂にさせてやればいいんだ。分かるな」

  地図の一点を指す顕助。


○ 紀伊見峠(夕)

  T「紀伊見峠」

  T「一月九日」

  旧幕府の敗残兵が番所を過ぎてゆく。振

  り返ると、来た先の大坂方面は空が赤く

  染まっている。

  と、横合いの宿場町から、敗残兵に不意

  の銃撃。慌てふためく敗残兵たち。宿に

  逃げ込む。

  顕助ら東一番隊の面々が敗残兵に突っ込

  む。


○ 宿の一階から二階(夕)

  逃げ惑う敗残兵。東一番隊の面々がミニ

  エー銃を発砲、さらに抜刀して敗残兵に

  とどめを刺す。

 

○ 宿の一室(夕)

  寝衣に着替えて布団をかぶった只三郎と

  それに付き従う渡辺吉太郎。

  阿鼻叫喚が聞こえる。

  渡辺がたまりかねて飛び出していくが、

  ライフルの発射音がして静かになる。

  只三郎、瞑目。

  やがて血刀を提げた顕助が入ってくる。

  背後を固めた波江田が、ミニエー銃を構

  えている。

  顕助、波江田に目配せして下がらせる。

只三郎「ふん。ミニエー銃か」

顕助「見覚えがあるか?」

只三郎「ああ。薩摩も長州も、ミニエー銃を

 主力にしているらしい……これ(腹の傷)

 もやられたようだ」

顕助「……」

只三郎「知り合いに言われた……おまえもず

 いぶん人を斬ったろう、それに比べたら、

 このくらいの痛みは大したことはあるまい。

 そう言うのさ」

顕助「そうかもしれん。たとえば、だれをや

 った?」

只三郎「そうだな。最近では坂本龍馬と中岡

 慎太郎になるのだろうな」

顕助「! おまえは!?」

  布団横に、鎖帷子が置かれている。それ

  に飛びついた顕助、鎖帷子に結わえた布

  に「京都見廻組与頭・佐々木只三郎」と

  あるのを目にとめる。

顕助「佐々木! おまえが佐々木只三郎か!」

只三郎「ふふふ。おれの名を覚えているやつ

 がいるとはなあ。光栄だ」

   間。

顕助「おまえ、もしや中岡さんを……中岡さ

 んと坂本さんを」

只三郎「ああ、あの二人なら、おれがやった

 よ」

顕助「!」


○ 近江屋・階下(夜・回想)

  只三郎が「十津川……」とある名札を藤

  吉に渡す。それを受け取った藤吉、

藤吉「お待ちください」

  と言って、二階へ階段をあがりかける。

  それについていく只三郎。渡辺と今井が

  只三郎より先に出る。


○ 同・階上(夜・回想)

  藤吉、奥座敷の襖ごしに、

藤吉「十津川の郷士の方がお見えです」

坂本の声「ああ、通してくれ」

  振り返りかけた藤吉の背を斬る渡辺。

  ぐわーと声があがる。

坂本の声「ほたえなや!」

  すでに倒れている藤吉。

  抜刀する只三郎。


○ 同・奥座敷(夜・回想)

  只三郎が乱入。入り口に座っていた中岡

  の後頭部に斬りかかる。

  あっと驚く坂本、刀を手にしかけるが、

  只三郎の刀が一瞬早い。坂本の額が薙ぎ

  取られる。

坂本「こんな……こんな……」

  中岡はなおも抵抗しようと短刀を振り回

  すが、渡辺と今井に囲まれ、右脚を斬ら

  れる。昏倒する中岡。

渡辺「コナクソ!」

只三郎「もう良い! いくぞ!」


○ 同・階下(夜・回想)

  階段を降りてくる只三郎、渡辺と今井。

  見張りについていた者四人も合流して、

  総勢七人。


○ 同・表(夜・回想)

  七人は峰吉をいなして、只三郎を先頭に

  去ってゆく。

  増次郎に銅銭をくれてやる只三郎。

顕助の声「それだけか?」

只三郎の声「なに?」


○ 宿の一室(夕)

  顕助、只三郎を睨みつつ、冷静に問う。

顕助「おまえたちや見張りではない。八人目

 の男のことだ。中岡さんと坂本さんが近江

 屋で会っていることを、誰からか聞きつけ

 ている。それが八人目だ!」

只三郎「……」

顕助「たしかに、ぼくは間違っていた。中岡

 さんと坂本さんが同士討ちをしたのではな

 いか、そう誤解することで、数日を無駄に

 したからな」

只三郎「ほう……」

顕助「あの世にいったら、二人に詫びなけれ

 ばならない! だが、それだけ、おまえた

 ちの手際が良かったのだ」

只三郎「あはははは(ごほっ)」

顕助「笑えばいいさ! すっかり化かされて

 いたのだからな……だが、近江屋に踏み込

 んだときの、おまえたちの動きの機敏さは

 どうにも説明がつかない……」

只三郎「……」

顕助「二人が近江屋で会っていることを、誰

 から聞いた?」

只三郎「……」

顕助「誰からだ」


○ イメージ

  土佐藩河原町藩邸の門前。夜。

  男が一人、近くにある近江屋について指

  図をする。

  黙って聞いている只三郎。

  男は、田村右京だ。


○ 宿の一室(夕)

  衝撃を受ける顕助。

顕助「留守居役の田村右京が!」

只三郎「あの男が老公の使いというからには

 間違いはあるまい」

顕助「まさか……」

只三郎「まさか? 甘いぞ、たしかに、当面

 の手当てのことだけは、後藤に任された。

 だが一任ではない。後藤が中岡や坂本と組

 んで、臣下の分が超えるようなことがあれ

 ば、あの老公は……」

顕助「黙れ!」

  斬りかかろうとする顕助。只三郎がよけ

  て、太刀の刃先が枕に刺さる。只三郎

  布団で隠されていた小刀を突き出した。

  一瞬、(やられる)と覚悟を決める顕助。

  だが、のびきった只三郎の体を、

  ドキューン!

  波江田のミニエー銃の銃弾が貫いた。倒

  れる只三郎の体に、刀を突き立てる顕助。

顕助「こいつめ! こいつめ!」

  顕助の血走った目に、波江田は止めるこ

  とができない。


○ 金光院・表(朝)

  T「一月十一日」

  高野山の山々は白雪に輝き、錦旗は東風

  にひるがえっている。

  総勢三百の隊士の陣頭に立つ顕助の前、

  感状を読む鷲尾卿。

鷲尾「今度、隊中の者、紀井見峠において、

賊兵と戦争、抜群の働き、畢竟平生教導行

 届き候故と、頗る感賞にたえず候、なおま

 た向後精勤致すべく候、よって感状くだん

 のごとし。鷲尾侍従。田中顕助どの」

  感状を手渡す鷲尾卿。

  顕助、受納する。

顕助「わたくしどもも大いに面目を施してご

 ざいます」

鷲尾「うむ。ああ、ひとこと付け加えておく。

 和歌山城からは勅書の趣つつしんでお受け

 するので、紀伊中納言に代わって家老の者

 が勅書を奉読したいと挨拶があったそうや」

  隊士たちの顔に感動の色。

顕助「紀州は徳川の親藩中の親藩。情誼の上

 からも幕兵を討つことは出来ないと渋るべ

 きところ、順逆をあやまらず勅書を受け入

 れるとのこと、これは喜ぶべきでありまし

 ょう」

  顕助の口調には迷いがない。


○ 高野街道

  高野山義軍が凱旋する。人数は千三百人。

  陣頭になびいている錦旗。

  馬に乗る鷲尾卿。随行の顕助。


○ 二条城・表門

  T「京都・二条城」

  入城する高野山義軍。

  顕助がひきいる東一番隊も整列する。


○ 河原町藩邸・車寄せ

  駕籠が二丁止まる。

  下りる二人の男。

  山内容堂と後藤象二郎。


○ 同・一室

  後藤と顕助。

後藤「いや、それは考えすぎだ。坂本龍馬と

 中岡慎太郎を始末してほしい。そう田村右

 京が画策したというのは、ありうる話だ。

 だが、右京めが容堂さまの内々の心を察し

 て襲撃した、などと……見廻組の与頭の妄

 想も、そこまで行くとな(首をふる)」

顕助「……」

後藤「聞いておるか? 田村右京も、彼の一

 党も、国許では容堂さまの御前から遠ざけ

 られている……」

顕助「! 初耳です!」

後藤「そうであろうな。かの一党、三十人組

 が佐幕を唱えんとして、却って容堂さまを

 怒らせたが、藩内では内々に処理されてい

 る」

顕助「……」

後藤「この三十人組が連署して、容堂さまに

 訴える建白書を差し出したのが十一月十五

 日のことだ……」

顕助「十一月十五日! 中岡隊長が襲われた

 日では!」

後藤「そうだ。このときの建白書で、わたし、

 後藤象二郎の排斥を唱える一方で、坂本と

 中岡を見廻組に殺させているのだよ!(一

 瞬の憤激)」

顕助「では……では、どうして田村右京めを

 譴責しないのですか?」

後藤「(冷静にかえって)そこまでやっては

 この京都藩邸の動きが鈍くなる」

顕助「……」

後藤「それに、王政復古の大号令以来、情勢

 は容堂さまの考えとは違ったほうへと転が

 りだした……何かが、おかしい」

  間。

顕助「いま只今の情勢は、中岡さんの夢見た

 とおりです! そう信じています!」

後藤「そうか……顕助、容堂さまに会ってみ

 ないか」

顕助「容堂さまに?」

後藤「うむ」


○ 同・東屋

  池の畔。椅子に座している容堂は、口に

  酒盃を含んでいる。その前で顕助が膝を

  ついている。立ち会う後藤。

容堂「顕助、おぬしは、深尾の家の勘定役の

 せがれと聞いたが」

顕助「さようでございます」

容堂「どうだ。江戸に向かう東征軍に加わら

 んか」

顕助「(意外)よろしいのですか」

容堂「(謡う)先に旧幕を保護せしは、旧来

 の恩を報ずるのみならんや。皇国の治を欲

 するなり。一旦伏見妄挙に至って慶喜道に

 反く。昨今兵を出すは王命を奉戴し、逆を

 討って、宸襟を安んじ奉る。是れ論無きの

 み……」

顕助「(考えて)ごめんですな!」

容堂「ふむ」

後藤「(青ざめる)」

顕助「東征軍に加わることは、よしとしまし

 ょう。ですが、あくまで御親兵としてです。

 薩長の藩閥の一翼を担うのは、わたくしの

 本意ではありません!」

容堂「(苦笑)勝手にすればよいわ!」

  田村右京が走ってきて平伏する。

  顕助は憤怒の眼を向けるが、田村は容堂

  を直視している。

容堂「何じゃ?」

田村「ご老公! 土佐藩の兵を東征軍に差し

 出すとは、まことでございますか?」

容堂「まことだ。だが、その編成には意見が

 あるらしいぞ(顕助に微笑む)」

田村「(頭をあげ)まことですか?」

容堂「くどい!」

田村「……強いて征伐に賛成ならば、ご老公

 といえども、そのままにはしておかぬ!」

容堂「なにっ」

  田村、抜刀する。

田村「覚悟っ」

顕助「!」

  刀を取るのに、顕助は一瞬遅れる。

  容堂が酒杯を投げ、田村の額に当てる。

田村「むっ(ひるむ)」

顕助「痴れ者っ!」

  顕助、一刀で田村を斬り捨てる。

  斃れる田村。

  残心で容堂を見る顕助。

  立ち去る容堂。後藤もついてゆく。

  顕助は刀を鞘に納める。

                (完)

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陸援隊副長 田中顕助 千葉和彦 @habuki_tozaki

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