第14話  逃げ落ち

 年末の国際線では、多くの報道陣がリコとレイの二人を待っていた。

 これで日本のマスコミも見納めだと思い、二人はやり過ごした。

 日本との訣別、二人には自由の国アメリカで楽しい生活が始まる。

 やっと一般人になれると思うリコの心は嬉しくなり、あんなに嫌っていた記者たちにもにっこりと微笑んでしまいそうなのを必死に堪えていた。

 レイはスマイルがプリントされたTシャツを着て、今は幸せだとVサインをして世間にアピールした。

『二人のために世界はある』

 そういった意味で、その服を選んだように見えた。

 見事に国民を裏切った二人は、勝ち誇ったような態度で手を繋いでいた。

『ロイヤルパワー侮(あなど)るな』

 リコは、これから始まる明るい未来を信じて疑わなかった。

「レイ、やり遂げたね」

「ああほんとだ。スッキリした」

「ざまあみろ」

 入管を出ると二人は抱き合った。

 ニューヨークの入管審査をが終わると、ハイタッチで喜びを示した。

「お腹すいた?」リコはレンに言った。

「夕ご飯はニューヨークのソウルフードを食べに行こう。うまい店があるよ」

「そこにしよう!」

 二人は迎えにきた公用車で、国務省が用意したダウンタウンのマンションに向かった。


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