21話から30話までのあらすじ・登場人物
第四王子フォルカスが妹のグレモリーと商人スロールの婚儀によって影響力を得ようと画策し、その為に邪魔になるベムブルを殺害したのだという噂が宮中に流れ、アグレウスは護衛兵長官のエリゴスに兄妹の身辺を調査させると共に、フォルカスを呼んで詰問した。
証拠や証言は何も得られなかったが、アグレウスはフォルカスの落ち着き払った態度に却って疑惑を強める。
ヨトゥンヘイムでは武術競技会の準備が着々と進められていたが、競技会への出場をオリアスに願い出たヒルドは、それが側近護衛官としての立場に相応しくない事に気づいて反省する。
功を焦るヒルドに、オリアスは来訪予定のフレイヤの護衛を命じた。
フレイヤがヨトゥンヘイムで静養する事にアグレウスは難色を示し、オリアスはヘルヘイムに飛んで兄に直談判する。
アールヴはずっとヨトゥンヘイムで預かるつもりだと言うオリアスにアグレウスは不満を覚えたが、アールヴのヘルヘイムへの一時帰国とフレイヤのヨトゥンヘイム訪問を引き換えにする形で交渉がまとまる。
フォルカスが権力を得る事を防ぐ為、アグレウスはフォルカスをテレンティウス伯爵の長女と結婚させ、伯爵家の婿養子とする形で皇宮から追放し、親王位を剥奪した。
形ばかり皇位継承権を持った貧乏皇族から、かなり裕福な貴族の次期当主になるのだから望みどおりだと笑うフォルカスに、グレモリーは軽蔑のまなざしを向ける。
その夜、一人の侍女が皇宮から姿を消したが、皇家に直接仕えている上級侍女ではなく、上級侍女に個人的に雇われている下級侍女だったため、女官長は何事も無かったものとして処理した。
ひと月後、フォルカスは皇宮を出、テレンティウス伯爵の長女との結婚式を挙げた。
ヘルヘイムで華やかな式典が行われているのと同じ頃、ヨトゥンヘイムでは武術競技会が開催されたが、酒と血に酔った見物人たちが会場になだれ込み、乱闘となった。
ヒルドから報せを受けたオリアスが駆けつけ、双頭の竜の力を借りて、力ずくで混乱を鎮める。
後に『血の祭り』と呼ばれる事となる武術競技会では多くの死傷者が出、ギリングの一人息子であるエーギルは、利き手が使えなくなる重症を負った。
妻のメニヤにエーギルには元々文官の方が向いており、文官も国を治める上で重要な役割を果たしているのだと説得され、ギリングはエーギルが文官となる事を許可する。
武術競技会の開かれる前日に、アールヴはヘルヘイムに戻っていた。
アールヴがヨトゥンヘイムでの生活をとても気に入り、アグレウスが野蛮だと軽蔑している父や異母兄たちに、すっかり懐いている事を知ったアグレウスは、アールヴはただの失敗作で、アールヴの侍女としてヨトゥンヘイムに送り込んでいるドロテアたちを通じてヨトゥンヘイム国内の様子を探る以外に、アールヴの利用価値は無いのだと冷ややかに思う。
大荒れとなった武術競技会の事後処理を検討する内輪の会議で、スリュムやギリングたちは不満がたまっている兵士たちを満足させる為に戦を起こすべきだと主張したが、戦を仕掛ける正当な理由が無いと、オリアスに反対される。
妖精王の血族をヨトゥンヘイムで保護している事にすればデックアールヴヘイムを攻める立派な名目になるとスリュムは言ったが、オリアスはアールヴが妖精王の血族である事を隠し、勝ち目がないとして戦を否定する。
武術競技会の二週間後、フレイヤが静養の為、ヨトゥンヘイムを訪れた。
ヒルドはその折、フレイヤの女官であるファウスティナから話しかけられ、オリアスの女性の好みを訊かれる。
自分がオリアスの愛妾である可能性をファウスティナにほのめかされ、ヒルドは怒りを覚えた。
第三王子マルバスの母であるミリアムは、マルバスが病死した後、後宮を去ってヘルヘイム郊外の城で隠棲していたが、そのミリアムの元を、フォルカスが訪れた。
フォルカスはマルバスの死に関して、何事かをミリアムに密告する。
ファウスティナは翌日もヒルドに話しかけ、自分と、同じ女官であるエレオノラの二人が、家柄や年齢の点からして、オリアスの妃の最有力候補なのだと話し、エレオノラへの対抗心を見せる。
ファウスティナが立ち去った後、話しかけてきた同僚のスルトに、ヒルドは何気なく妃候補の事を話す。
オリアスが多忙である事を心配したフレイヤは、オリアスを補佐させる為、ヘルヘイムから文官を遣わす事をスリュムに提案し、補助的な役割を果たすだけの祐筆のような者であればと、スリュムは承諾する。
フレイヤから祐筆派遣を聞いたアグレウスは、自らの公子の一人であるアロケルを呼び出し、ヨトゥンヘイムに祐筆として赴き、ヨトゥンヘイムの内情を探るよう、命じる。
ヘルヘイムのとある宿屋ではスルトが数週間前に知り合った女イレーナとの逢瀬を楽しんでいたが、彼女に問われるまま、ヒルドから聞いた妃候補の話を伝える。
アロケル以下、五名の祐筆がヨトゥンヘイムに向かった頃、ヘルヘイムではグレモリーとスロールの婚儀が執り行われていた。
婚礼の儀が全て済んだ十日後、フォルカスはグレモリーの為に建てられた壮麗な別邸に、妹を訪れた。
グレモリーは屋敷だけでなく、夫スロールから贈られた豪華な衣装や宝石類を誇らしく思っていたが、フォルカスから結婚祝いとして『秘密』を打ち明けられ、驚愕する。
ヨトゥンヘイムに到着したアロケルは、ヴィトルの指示でエーギルの補佐役となった。
ヘルヘイムでは異母兄から家臣扱いを受けていたアロケルは、「従兄弟なのだから」と気さくに接するエーギルに意外さと安堵を覚える。
ミリアムは報復のため、あるものを手に入れようとしてかつての廷臣を呼び寄せたが、その事が露見して僅かに認められている自治権を失う事を恐れた廷臣は、命令に従う振りだけして、ほとぼりが冷めるのを待つことにする。
フォルカスと結婚したテレンティウス伯爵の長女マグダレナは、夫の外出が多い事に不安を抱いていたが、嫌われたくない為、不満を隠していたが、フォルカスから外泊すると聞かされて動揺する。
アロケルはアグレウスに報告する事が何もなく悩んでいたが、エーギルとの会話から、スリュムが庶子たちをオリアスと差別無く重要な会議に出席させている事を知り、ヘルヘイムとヨトゥンヘイムの違いに驚くと共に、その事をアグレウスに報告しようと考える。
フォルカスは商人に身をやつして密かにミリアムを訪れ、ある物を渡す。
第一王子ザガムは間者からの報告で、レオポルドゥス公爵とマクシミリアヌス公爵が、それぞれ孫娘や末娘をオリアスに嫁がせようと画策していると知り、彼らがアグレウスを差し置いてオリアスに近づこうとするのはオリアスをヘルヘイムの次期皇帝に立てるつもりだからではないかと疑い、危機感を覚える。
オリアスが突然、倒れて昏睡状態に陥り、呪詛が原因ではないかとの疑いが掛かった。
魔術を使えるのはヘルヘイムの者だけなので、ヘルヘイムから来ているドロテアたち侍女、アロケルたち祐筆は捕縛されて地下牢に繋がれる。
アロケルは拷問されるのを恐れ、自分たち祐筆がヨトゥンヘイムの内情を探る目的でアグレウスに遣わされたのだと自白する。
一方、イレーナに疑惑を抱いたスルトは、ヴィトルにそれを報告して彼女を捕縛させた。
30話までの登場人物
□ ヘルヘイム側
ファウスティナ
フレイヤに仕える女官。
蜂蜜色の髪をした顔立ちの整った女で、右が淡い蒼で左は鮮やかな翠と、左右で異なる色の瞳を持つ。
レオポルドゥス公爵の孫娘で、アグレウス、オリアスいずれかの妃候補を自認している。
ほとんど無表情で、作り笑いが笑顔に見えない。
エレオノラ
フレイヤに仕える女官。
黒褐色の髪とハシバミ色の瞳の持ち主。
マクシミリアヌス公爵の末娘で、アグレウス、オリアスいずれかの妃候補としてファウスティナとは互いに牽制し合う関係。
ミリアム
アグレウスの側室の一人。病死した第三王子マルバスの母。
マルバスの死後、後宮を去って隠棲していたが、マルバスの死の真相をフォルカスに聞かされ、復讐を誓う。
アロケル
アグレウスの子息の一人。
親王の宣下の無かった公子の身分なので、王子の称号で呼ばれる事は無い。
第一王子ザガムの異母弟だが、弟ではなく、臣下のように扱われていた。
色が白く肌は滑らかで瞳は明るい蒼、癖の無い金色の髪を腰のあたりで切りそろえた小柄な姿は少女と見まごうばかりに美しい。
ヨトゥンヘイムの内情を探る目的で、アグレウスにより祐筆としてヨトゥンヘイムに派遣された。
マグダレナ
テレンティウス伯爵の長女。
アグレウスの命により、第四王子フォルカスと結婚した。
お世辞にも美人とは呼べない容姿で、美貌の夫と不釣合いである事に悩む一方、フォルカスと結婚できた幸福に感謝している。
□ ヨトゥンヘイム側
スルト
オリアスの側近護衛官。
狼のように白の混じった灰色の髪と、狼のように薄い琥珀色の瞳の持ち主。
ヨトゥンヘイムの男にしては珍しく髭を生やしておらず、体格も他の戦士に比べてすらりとしている。
狼を思わせる容貌と裏腹に、子供のような笑顔を見せるが、非情な一面も持っている。
ベイラ
ヴィトルの母。
故国であるアルフヘイムが闇の妖精によって滅ぼされた時、ヨトゥンヘイムへと逃れてきた妖精の一人。
ヨトゥンヘイムで夫を得、ヴィトルが生まれた。
オリアスが生後三ヶ月でヘルヘイム皇宮からヨトゥンヘイム王宮に移り住んでからはオリアスの乳母を務め、その後オリアス付きの侍女となる。
イレーナ
行商人の娘。
スルトと知り合って深い仲になるが、その身分は偽りであった。
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