第7話 終わり

(グボ)

『う、ううう』

『ふははは!!やってやった!ははは』

元夫はレビンソン様に刺したナイフを抜いてそう笑った。



『ははは!次はお前だ!月子!死ね!』

血まみれのナイフを持って私の方に詰め寄った。


(バタン!)

『確保!』

警備兵が元夫を抑えた。

『やめろ!お前!ふざけるな!俺は悪く無い!悪く無い!離せ!!』

ひどい泣き顔で元夫は連行されて行った。


『う、うぐあ!』

『レビンソン様!』

私はすぐ近くに倒れている彼の元に駆け寄る。


『ライナ』

『レビンソン様!どうしてどうして』

涙で彼がぼやけて見えるけど沢山の血が出ているのに彼は少し笑顔になりながら私を見ている。


『君が、さ、されなくて、よかった』

そう彼は言った後静かにキスしてきた。


『いや!いや!いや!行かないで!』


『ごめんね、ライナ』


『死なないで死なないで!』


『はあーはあーもう、無理みたい……ライナ、幸せに、なってね』

そう言って彼は目を閉じた。



『嫌ああああああああ!!!!』

私は冷たくなっていく彼を必死に抱きしめながら泣いた。ずっと泣いた。


『なんでよ。まだ……』

彼を失ってようやく確信した。私はレビンソン様が好き。なのにまだ私はちゃんと思いを伝えてられていない。もっと彼と触れ合いたい。もっと彼とたわいのない話をしたかった。


『やあ、君。彼を生き返らせたいかい?』

目の前に以前現れた死神が現れた。


『どうやって生き返らせるの!?』

もう、死神だろうとなんだろう彼を生き返らせられるならなんでもする。


『そう、焦るなよ……簡単さ前にも言ったろ〈死神の地図〉を使うと寿命が減る。そしてその結果使用者が死ねば死後の世界で死んだはずの大切な人に会える。そしてその使用者か大切な人かどちらかがまた今世に生き返ることができる。そう言っただろ』


『なら……』

私はすぐに死神の地図を取り出した。

(お願い!私の全ての寿命を使って!)


……死後の世界……

『やっと君から解放されたよー。最後の使い方は少し違うけどどうせ君は死んで彼に会いたいだけだからいいよね』

死神を名乗る男はそうニコニコしながら言った。


『いいから!早く彼に会わせて!』

もう、どうでもいい早く会いたい。


『あーはいはいわかったよ』

死神はそういうと、消えた。


『ライナ!なんで君が……』

代わりに現れたのはレビンソン様だった。


『レビンソン様!』

私は彼に抱きついた。


『なんで……』

彼は私を見て驚いている。


『私、私ね…………あなたのことが好きなの……』


『え、うん。僕もライナのことを愛してる』


『ホント?!』

彼にそんなこと言われるなんて嬉しい。


『でも、なんでライナが』

彼は泣いている私の頭を撫でながら優しく聞いてきてくれた。


死神がまた現れて言った

『それはね〈死神の地図〉を所有者が使うと寿命が減る。そしてその結果所有者が死ねば死後の世界で死んだはずの大切な人に会えるだよ。そしてその使用者か大切な人かどちらかがまた今世に生き返ることができるだよ。彼女はこれを使ったのさ』


『ライナ!……なんでこんなことをしたんだ!!!』

優しかった彼が急に怒り出した。でも、顔は悲しみで満ちていた。


『僕はライナに生きて欲しくて庇ったんだ。それをどうして……』


『わ、私はあなたがいない世界なんて生きていたくないの!あなたといたいの!』


『な、でも……』


『ここならレビンソン様と会える。あなたと会えるなら死んでも構わない。もう、何も失いたくないの!』


『ライナ、ごめん』

レビンソン様はまた私を撫でて優しく包み込んでくれる。


『あ、そろそろさ時間なんだよね。早くどっちが生き返るか教えてよ』

死神が割って入ってきた。


『え』

『言ったでしょ、死後の世界に行って死んだ人に会える。けどね誰か一人は現世に送らないといけないの。で、誰が生き返る?』


『ライナ!君が生き返るんだ!』

すぐに彼は私に言った。


『いや!私は私は……レビンソン様に生きていて欲しいの!!!』

私ははっきりと伝えた。もともと死んで生き返った命、今更死んでもいい。もうあのクズな元夫に復讐もできた。思い残すことはもうない。


『死神!彼を生き返らせて!』

『ほう、わかったよ』

『ライナ!ダメだ!』



……現世……


『う、うぐ』

レビンソン・クル・パラヤは現世で息を吹き返した。

『おおい!レビンソン閣下が生き返ったぞ!!!』


『閣下!』

『閣下!なんと奇跡か』

彼の部下が続々と彼の横たわるベットの周りに集まり、各々感動で泣いている。


『ら、ライナはどこに?』


『ら、ライナ様は……』

彼の側近の一人が申し訳なさそうに答え始める。


『おい!はっきり言え!ライナはライナは』

彼はさっきまで鮮明に覚えている死後の世界でのことを思い出し、嫌な予感を感じていた。


『ライナ様はあの会議の現場で突然死しました』

そう彼の側近は答えた。


『そんな……嘘だ!!!』


『いいえ、この私が彼女の遺体を埋葬いたしました。病原体の可能性があるとして……早急に……』




それから数十日間彼は彼女の墓の前で泣いていた。

『なあ、ライナ、君はどうしてそこまでして私を救ってくれたんだ?なのに……どうして、君は……』


『レビンソン閣下……』

彼が彼女の墓で跪きながら泣いていると一人のお爺さんがきていた。


『貴方は……』

そこにいたのはファマス・クル・ハリス。すべての事件の元凶であるエル・クル・ハリスの実の父親である。


『この度は息子が……』

『貴様か!貴様の息子のせいでライナはライナは…………いや、すまない。貴方もあの男の被害者か……』

ファマスの大事にしていた亡くなった妻の形見であるネックレスを盗んだ<怪盗ルッツ>は実は後の調査で実の息子エル・クル・ハリスがその正体だと判明し、世間では息子に裏切られた可哀想な父親として広まっている。


『いいんだ、私の教育のせいであいつはなんあことをしたんだ、私は君に責められて当然だよ…………それに私は自分の保身のために彼女を犠牲にしてしまった。私は卑怯者だよ……』

そう彼が言うと一枚の大きな白紙の紙を出した。


『私は彼女と同じ<死神の地図>を持っているんだ。でも、彼女ほど私は強くないから全く使っていない。卑怯者だよ。でも……少しは君たちに償うために……』

彼は地図に手を置いた。


……死後の世界……


『は!』

私は気づいたとこにはまた死後の空間にいた。


『お、ライカ様、お久しぶりです』

目の前にいたのは私が唯一失敗した依頼の依頼主ファマス・クル・ハリスさんだった。


『な、なぜ貴方が……』


『実は私も貴方と同じ<死神の地図>を持っていました。すみません!!!私は自分の短いどうしようもない寿命のために貴方を犠牲にし、そして貴方を苦しめた息子を育ててしまった。償い切れるものではない。だから……私は貴方がレビンソン閣下を生き返らせたように。私も貴方を生き返らせます。どうせこの私はあと一年もすれば死ぬ人間です。もう思い残すことはありません。本当に申し訳ございませんでした!!』

お爺さんは私に深々と頭を下げて謝ってきた。


『いえ、私も、貴方の大事なネックレスをせっかく依頼してくれたの……』


『いえ、あれは私の息子が盗んだんです。でも貴方のおかげで調査が進み私の元に戻ってきました。ありがとう』


『え、うそ……よかった』


『ライナさん私は貴方にたくさん助けてもらった。貴方に報いたい。私は貴方を生き返らせます。結局自分は最後まで卑怯者でした』


『いえ、ファマス様、ここにきただけで貴方は素晴らしい人です。そんな自分を卑下しないでください』


『ライナ様……なんとお優しいお言葉……』


『ねえ、君たちで、どっちが生き返るの』

死神がまた現れた。


『ライナさんを生き返れせてください。私はもう十分生きた。次の世代に未来を渡したい』

そうファマス様は言った。


『ありがとう、ありがとう、ファマスさん』

意識が消える直前まで彼に私は感謝を言い続けた。彼は優しい笑顔で見送ってくれた。



……現世……


『んん?』

『ライナ!!!よかった!!』

目が覚めるとともにレビンソン様が私を強く優しく抱きしめてくれた。


『レビンソン様……』


『うん、生きてる、生きてる。よかった君が生き帰ってくれて。よかった』

『レビンソン様……』

私たちはお互いにキスして生きている喜び、好きな人といる喜びを噛み締めた。





おわりちゃんちゃん




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死神の地図 ライカ @rururu1123

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