第3話 死

『あの、ライカさん、ライナさん』

目元を赤くしたファマスさんが私たちに話しかけてきた。


『あ、ああすみません』

少し驚いてしまった。


『良いですよ、でも、ネックレスは盗まれてしまいましたね』


『はい、申し訳ございません』

お母さん(ライカさん)が私の代わりに謝ってくれた。


『良いですよ、ライカさん達がいなかったらここまで持ちませんでした。ありがとうございます』

ファマスさんは悲しそうに、悔しそう、申し訳なさそうに言った。


その後、依頼は失敗したのにファマスさんから報奨金を押し付けられた。なんの役にも立っていなかったのに。

すごく申し訳ない。


……宿……


『ライナちゃん?お母さんと一緒に夕食食べよ?』

宿に着くなりいきなりライカさんが私に夕食の誘いをしてきた。いつもの私なら断っていたけど、今日は

『う、うん』


久々にお母さんと一緒に食事をした気がする。

いつものパサついて硬いパン、味の薄い野菜の煮物がいつもより美味しくかんじる。暖かい。


『ライナちゃん、ライナちゃんて変わったね……もう何年も前だけどあなた全然野菜を食べようとしなかったのに……気付かない間に成長したのね』

お母さんは寂しそうな、嬉しそうな声で言った。


『そうかな……』


その後は初めてお母さん(ライカさん)と楽しくたわいの無い話で盛り上がった。この世界にきて一番楽しい時間だった。そしてあの<死神の地図>についても話た。すごく気分が楽になった。




……レビンソン・クル・パラヤ邸……


私たちは次の依頼を受けに貴族パラヤ家の屋敷の前まできた。


『ようこそおいでくださいましたライカ様、ライナ様』

何人かの執事さん、メイドさんが出迎えてくれた。


『主人は書斎でお待ちしています。案内します』

私たちはそのうちの一人の執事に案内されて屋敷を歩いた。廊下の壁には高そうな絵画がずらりと並んでいてこの家の地位がよくわかる。



『こちらです……レビンソン様探偵団の方々がおいでになりました』


(ギギギギギギ)

扉が開いて部屋の中が見えた。


『あなた方ががライカ探偵団の皆さんですか?お初にお目にかかります。パラヤ家当主レビンソン・クル・パラヤです。この度ははるばるお越しくださりありがとうございます』

部屋の中にいたのは少し茶色ぽい金髪ショートの優しそうな好青年が立っていた。

『え』

あまりにもイケメンなので驚いてしまった。


『何か僕についてますか?』

彼は驚いている私をみて少し不安そうに聞いてその綺麗な髪を撫でる。どの動作を取っても絵になる。


『ひ!いえ、何も』

イケメンすぎて変な声が出てしまった。


『そうですか。あ、緊張しなくて大丈夫ですよ。私は貴族ですけどタメ口で大丈夫だよ』

すごい優しい声で彼はそう言う胸の奥がドキドキする。


『あの?レビンソン様、それで今回の依頼内容はなんでしょうか?』

固まっている私に変わってお母さんが代わりに聞いてくれた。


『ああ、そうですね、はい。最近私の側近の多くが暗殺されていまして。それで私の護衛と暗殺対策の考案をお願いしたく。今回依頼しました』

今回も何かを守る依頼。また失敗しないか怖い。


『そうですか……その、レビンソン様はお噂通り魔力が多いのでしょうか?』

母が最初に聞いたのは依頼とは関係ないことだった。


『え?まあ、常人の5倍ぐらいの魔力はあります。ですけど、防御系の魔法は使えないので暗殺の対応はできませんよ?』


『そうですか、でしたら……ライナ、少し席を外してくれる?レビンソン様と二人でお話ししたいわ』


『え』

急に何を言うかと思ったらレビンソン様と二人で?お母さんが何を考えているのかさっぱりわからない。


『ライナ、お母さんのこと信じて』

母は自信いっぱいの目で私を見つめてくる。


『うん、わかった』

(ギギギ)

私は部屋を出た。


……数分後……


『入っていいわ、ライナ』

私は部屋に入る。


『ライカさん、本当なんですか?』

『ええ、レビンソンさん……ライナ、<死神の地図>を見せてあげて』


『え、でも』

『大丈夫、レビンソンさんは悪い人ではないわ』

『そう?わかった』

私は持ってきていた<死神の地図>を見せた。


『これが……私にも使えますか?』

レビンソン様が私の<死神の地図>に触れている。


『できません、所有者のライナ以外には使うことができません』

『そうですか』

『ライナ、レビンソンさんは魔力を他者に渡す魔法が使えます。これを使えばあなたの寿命を使わずに最大三日分調べられるわ』


『でも、いつごろ暗殺してくるかわからないとどうしようも』

『そうよね、いくら三日分の未来を見れてもその先は見れないもの、レビンソンさん、何か暗殺される心当たりはありますか?』


『そうですね、ルミナス王国の軍務大臣を決める会議で私を出席させたくないとかでしょうか。私が大臣になればその後は国王を暗殺するぐらいに暗殺が難しくなりますから』


『ぐ、軍務大臣!?』

軍務大臣て言ったら、この国で2番目に偉い人じゃない。


『で、その会議はいつですか?』

驚く私をよそにお母さんは冷静に聞いた。


『ちょうど四日後の朝からですね。ああ、では、今日から会議前日の夜まで調べればいいですね。それでいつ僕が暗殺されるかわかれば今から対策できますね』


『確かに今から調べればその、レビンソン様がいつ暗殺されるのかわかります。ですけど……今から対策してまうと未来が変わってまたいつ暗殺されてしまうのかわからなくなってしまいます』


『そうか…………あ、ならこれなんてどうでか?今後三日間分の未来を確認して、いつどこで僕が暗殺されるかを確認して暗殺される直前まで示された通りに動いて暗殺される直前で護衛を強化して襲ってきた暗殺者を捕らえる。これはどうでしょう?』


『なるほど……確かにそれなら』

彼の考えと方法は確かに通用しそう


『そうですね、レビンソンさんの方法ですたらうまくいくと思います』

どうやら母さんも納得しているみたい。



私だけ蚊帳の外みたいになってるけど気にしない。

私たちは早速行うことにした。


私はレビンソン様の手を握った。レビンソン様も握り返してくる。

『あ』

見た目ではわからなかったけど力強い手で腕は少ししか見えないけど、血管が浮き出ていて素人目でもわかるぐらい鍛え上げられていた。


『あれ?強く握りすぎました?』

彼は優しく聞いてくる。


『いえ、なんでも』

こんなに優しくしてもらっているのにそっけない態度しかできない。もどかしい。


『では、始めます』

私は<死神の地図>触れて念じた。

(お願い、レビンソン様の未来を見せて)


<死神の地図>は光ここら辺一体の地図になり、青い線がここの屋敷を動いただけだった。


『1日目は違いますね。では次からは僕の魔力を使っていくんですよね。では少しだけ我慢してください』

そう言うと彼が私を抱きしめてきた。


『あ!あの!レビンソン様!?』

驚いて彼から離れようと少し動いた。


『あ、強すぎちゃいまいした?』

そう言って彼は離れてた。


『え、いや。レビンソン様、なんで急に』


『ああ、言い忘れていたね、僕の魔法<ギフト>は対象者を抱きしめた方が効率がいいんだよ。驚かせてしまったね。ごめんね』


『そうでしたか……すみません』

急で驚いたけど、そう言うことなのか。こんな私に抱きつくなんて嫌だったのに私が拒絶してしまった。


『いいですよ。もう一度できてよかったですし』


今度は優しく私を抱きしめてきてくれた。

『大丈夫ですか?』

『はい』

彼の中はすごく暖かい。


『ギフト』

彼はそう言うと周りが緑色の光に包まれた。


『終わったよ』

彼はそう言って私からゆっくり離れた。



『じゃ、お願い』

また私は彼と手を握って

(お願い、もう1日分見えせて)


また地図が光ると青い線が伸びた。でもまだバツ印はでてこない。


(お願い!もう1日!)

また地図は光ると青い線が伸び、最後にはバツ印がついた。


『三日目か……』

少しレビンソン様は驚いたような、悲しんでるような顔でバツ印をじっと見ている。


『この場所と線の長さ的に僕の寝室で夜中に暗殺者が来たんでしょう』

淡々と彼は言ったけどショックは隠せていない。内心彼は怖いのかもしれない。


『では、対策を考えましょう』

お母さんは冷静に次のことを考えていた。


『そうですね、いつまでもショックを受けている場合ではないですね』

レビンソン様も気をすぐに取り直した。私なら、怯えて何もできないはず。レビンソン様は自分が死ぬのが怖くないのかな?


『三日後の夜、レビンソンさんの寝室で暗殺が行われるんですね。では、どうしましょか』


『一番信頼できる騎士を寝室に配置しましょうか?』

それなら安心できる。安直だけど大丈夫そう。


母さんが答えた。

『それはいいかも知れませんけど、今の段階でその人に伝えるのはやめておきましょう。三日後のことを知るのは私たちだけの方が良いと思います。伝えるのはレビンソンさんが寝室に入る直前、誰にも気づかれないようにするべきかと』

確かにそうだ、下手に情報を広めるのは良くない。


『そうですね…………では、まず三日間の間、僕は地図の通りに動きます。そして三日目の夜、何人かの優秀な護衛を寝室に入る直前で引き連れて襲ってきた暗殺者の確保を行う。これで良いですね』


『そうなりますね』

母は和やかに答えた。


『では、大体の話もまとまりましたし、屋敷を案内します。ちょうど地図上でもそろそろ家の見回りの時間ですし』

レビンソン様が屋敷を案内してくれることになった。



……訓練場……


『えいや!えいや!えいや!』

はじめにレビンソン様が案内しくれたのは訓練場だった。訓練場にはたくさんのガタイのいい男性が訓練のようなことをしていた。


『ガッツ!!』

レビンソン様が誰かの名前を呼んだ。


『あ!閣下!おはようございます!え!?』

人きは体が大きい男性が私たちの方に気づくなりすぐに焦ったように近づいてきた。


『ガッツ、この人た……』

男性は勢いそのままにレビンソン様に近づいてコソコソ話始めた。


『……』

『……』

二人が私を見たと思ったら。

『……』

『は!?違うわ!ばか!まだそ、そんなんじゃねえよ!』

『閣下声、声が大きいです』


『あの?そちらの方は?』

痺れをきたしたのか母さんがレビンソン様達に話しかけた。


『あ、ああ申し遅れました。私はパラヤ家の戦士ガッツです。以後よろしくお願いします。お嬢様方』

いきなり礼儀正しく挨拶してきた。なぜか私のことをじっと見つめて言ってくる。


『もう、いいだろ、ガッツ……ライカさん、ライナさんもういきましょう』

そんなガッツさんを押し除けながらレビンソン様は恥ずかしそうに顔を赤くしなが言った。


『え、ええわかりました』



(ギギギギギギ)

『閣下!頑張ってくださいねー!!』

訓練場を出る時にガッツさんが後ろでレビンソン様をなぜか応援していた。


『さっき挨拶したガッツが私たちの家の中で一番強い戦士なんです。三日後の護衛として呼ぼうと思っていますが、いいでしょか?』

レビンソン様がそう言った。


『そうですか、ですが、彼は暗殺者に有効なのですか?』

母さんが聞いた。


『そうですね、彼は私と違って防御系の魔法が得意でして肉弾戦が強いので、護衛としては申し分ないかと』


『そうなんですか。なら大丈夫ですね』


その後は他の屋敷の施設を案内されて私たちは宿に戻った。



……三日後……


この三日間何も問題なく進んできた。レビンソン様は<死神の地図>どうりに動いてくれたし、暗殺のことや、私たちの秘密も漏れ出た印象はない。うまくいっている。ただ少し気掛かりなのは最近私たち親子に対して過剰すぎるぐらいに屋敷の人が親切にしてくれる。部外者をここまで受け入れていいのだろうか?



『いよいよですね、ライナさん、ライカさん。今夜ですね頑張りましょう』

レビンソン様は書斎に集まった私たち親子にそういった。でも、少し手がプルプル震えている。やっぱり怖いのかもしれない。


『最終確認をしましょう、レビンソンさん』


『そ、そうですね、今は日が沈む直前なので、今から数時間後には地図上の予定ですと僕は寝室に入る時間ですね、その前にガッツを僕の護衛にする。なんですが……地図の動きの様子からどうも僕では直前にガッツに会う機会がないので、ライナさん、ライカさんがガッツのところに行って僕を護衛するように言ってください。それでいいですか』


『はい、わかりました』


『では、お願いします』


……数時間後……


『もうすぐですね』

ガッツさんが落ち着きのない感じで言った。


『はい、そうですねレビンソン様、ではガッツさんを呼びにいきたいのですが、彼は今頃どこにいらっしゃいますか?』


『ガッツでしたらこの時間ですと大体訓練場の筋肉トレーニングルームにいますね……あ、あとこれを、これを彼に見せればすぐに話を信じてくれると思います』

そう言って彼は大事そうにポケットから一本の女性もののネックレスを私に渡してくれた。

『え、あ、ありがとうございまうす』

なんて言うか少し嬉しく思ってしまう。こんな依頼がなかったら知り合うことすらできなかった彼から何かもらうと少し嬉しい。


その後、私たち親子はガッツさんのいる訓練場へ向かった。



私たちは今、訓練場の扉の前にいる。

もう夜遅いのか周りには人がいない。


(ギギギギギギ)

扉を開けると昼間のうるさい訓練場とは打って変わって灯りもなく暗く静かで、まるで夜の体育館みたいで、懐かしい。


(ガラララン!)

金属が地面に落ちる音が微かに聞こえた。

音のがした方を見ると微かに光が漏れる扉があった。

『母さん、あそこ、あそこ』

『ん?あ、誰かいるみたいだね。ガッツさんかもしれないね』



『ん!……母さんこの扉硬い。手伝って』

『あら、ほんとね』

(が、がが)

扉は硬いけどなんとか開けられた。


『お、誰ですか?ん?……どうしたんですか?お嬢さん方?閣下でしたら今頃寝室にいますよ』


『え、その相談、お願いがありまして』

私はレビンソン様からもらったネックレスを見せた。


『んんん!!、これは!……そうか、やったのですね。閣下……で、お願いとはなんですか?ライナ様?』

急にガッツさんの態度が変わった。命令を待つ軍人さんみたいに私の次の言葉を待っている。


『え、えっと。ガッツさん今夜レビンソン様が暗殺されます。なので、ガッツさんに護衛をするようお願いしたいのですが』


『暗殺?いつですか?』


『今からおそらく1時間後かその少し後です。レビンソン様が寝室に入ってその後に……』


『あと1時間……すぐに向かいましょう』

ガッツさんは時計を見てすぐに向かおうとした。


『待ってください、ガッツさん、今回の暗殺ではこちら側が暗殺に気づいたのを悟られないようにしたいです。ので、できれば他の人に見つからないようにレビンソン様の寝室に向かってください』

母がガッツさんを止めた。


『なるほど、そうですか、では……すみませんがこの部屋に一人だけ残ってください。この部屋は一定時間人がいないと自動的に照明が落ちるので誰かに気づかれてしまいます』


『それだったら、ライナ、あなたが残りなさい』


『え、いや、お母さんここは私がいきます』

せっかく仲良くなれた母さんに危険なことはしてほしくない。


『いえ、ライナ……』

『ライナ様のおっしゃる通り私についてくるのはライナ様がよろしいと思います』

なぜかガッツさんは私に同調してくれた。


『そうですか。ライナ、くれぐれも危ないことはしないでね』

母さんも折れたのか、認めてくれた。



『では、いきますよ』

『え』

ガッツさんは私を抱えてそのまま窓から飛び降りた。



……寝室……


『よっと』

多分誰にも気づかれずにレビンソン様の寝室に来れた。


『まだ、誰もいない』

どうやらまだレビンソン様は寝室に来ていないみたい。


(キーー)

扉が開いた。


『あ』

レビンソン様が部屋に入ってきたて私たちに気づいた。


『閣下、今夜……』

『わかっているよ、今夜暗殺者が来る。ガッツ頼んだ』


『はい、では私はこのクローゼットで隠れています』

『私も』


『いえ、ライナ様、このクローゼットは狭いので……閣下と同じベットで横になるのはどうでしょうか?』

『え?』

確かにクローゼットはガッツさんでいっぱいそう。でも、レビンソン様と同じベットなんて


『ライナさん……』

どうしてなのかレビンソン様もそのつもりみたい。意味がわからない。こんな私でいいの?なんんで?確かに普通のベットより大きいけど二人だと狭そう。


『いえ、私はベットの下に』

『ダメです。ライナさん、女性をそんなところに居させるなんて』

レビンソン様が半ば強引にベットに連れ込んできた。


『うう……』

こんな状況なのにレビンソン様と同じベットにいると考えるとドキドキする。いけないのに


『寒くないですか』

レビンソン様が私にモーフを寄せてくる。いい香りがふわふわくる。昨日お風呂入ったけどこんなに近づくならもっと丁寧にやればよかった。汗臭くないか心配。体があつい。


『ライナ?』

そんな私にお構いなしに彼は近づいてくる。ドキドキが止まらない。だんだん冷や汗みたいのが出てきた。




(ガチャ)

小さく寝室の扉が開く音が微かに聞こえた。


(バサ バタン! ドーン!)

扉の音が聞こえたかと思ったらベットのカーテンが一気に開き覆面の人間が出てきたと思ったら、クローゼットに隠れていたガッツさんがその覆面を被った人を横に吹き飛ばした。


『誰だ!!』

すぐにレビンソン様が起き上がりそう叫んだ。


『くそ!』

覆面から男の声がして。その男は窓に向かって動こうとした。


『ロック!』

レビンソン様がそう言うと覆面の男の周りから鎖が出てきてその男を拘束した。


『ち!くそが』

覆面の男は観念したのか大人しくなった。


『お前!何者だ!』

レビンソン様はいつもの優しい声からは想像できないほどに怖い声で男に聞いた。


『へ』


『ち!言え』

(ぼん!)

答えない覆面の男の近くにいき、横たわるその男のお腹を蹴り上げた。

あの優しそうな顔からは想像もできない怖い顔でレビンソン様は男を睨んでいる。


『言えよ!』

レビンソン様は答えない覆面男の村ぐらを掴んでいる。


『言えるかよ。貴族様』

男は笑ってそうかえした。


『この!』

『やめて!』

レビンソン様が覆面の男を殴ろうと拳を振りかぶっているのを見て思わず止めてしまった。


『ライナ。なぜ』

レビンソン様は私の方を向いた。さっきまでの怖い顔とは違い、少し不安そうな、不思議そうな目で私を見つめる。


『優しいんだな嬢ちゃん、そんなんじゃ』

(ヒューボン!!)

覆面の男がそう言ったのと同時に花火の光と音が部屋に響いた。


『ほら、言わんこっちゃない。こっちは失敗したが別のはうまく行った、嬢ちゃんザマあねえな』

男が何を言っているのかわからない。でも、覆面をつけていてもわかる男は私を見てニヤける。


『どう言うことだ!?』

(ドーン!!)

『ぐは』

レビンソン様が覆面男を床に叩きつけた。


『は、まだ気づかないか、貴族さんお前だけがターゲットじゃねえよ、他にもいんだカス』


『何?』

他のターゲット?何よそれ?


『はー感が悪いな。そこの嬢ちゃんの母親だよ!バカが!はははは』

覆面の男はそう言って笑った。


『ふざけるな!!!』

レビンソン様が地面に這いつくばる男を殴った。


『……』

男は気絶したようで笑い声が止んだ


『どう言うこと?』

お母さんが?え?わけがわからない。


『ライナ!いますぐライカさんのところに!お母様はどこですか?』

レビンソン様が切羽詰まった感じで聞いてくる。


『え、お母さん?え?』

突然のことでよくわからない。


『訓練場の筋トレルームです』

混乱して答えられない私に変わってガッツさんが答えてくれた。


『ライナ!いきぞ』

混乱する私をレビンソン様がお姫様抱っこで窓の外に連れ出した。




……訓練場筋肉トレーニングルーム……


(バリーン!!)

部屋のガラスを突き破って部屋に入った。


『え』

『見るな!』

急にレビンソン様に目を手で覆い被さられたけどわかった。母さんが倒れていた。


『ラ……い、な』

微かに母さんの声が聞こえた。


『お母さん!!!』

私にはすぐわかった、母さんはやられてしまった。

私は抑えるレビンソン様を押し除けて倒れている母さんのところに近寄った。


『ライナ……おかあさん、失敗しちゃった。ごめんね……はあ、はあ、もう、だめだね。おかあさん』


『だめ、だめ、だめ』

母さんのお腹は血で真っ赤に染まっていてその周りは血の水溜りができてる。

もう助からないのはなんとなく察せる。でも、嫌だ、嫌だ。


『おかあさん、最後まで……あなたに頼りっぱなしね。ごめんね…………』

母さんが血だらけの手で私の頬を撫でる。

『ごめんね、ライナ…………愛してる。生きて』

そう言って母さんの手は落ちた。


『なんでよ!なんでよ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!一人にしないで!ああああ』

私は母さんの死体に覆い被さるように泣いた。



『やあ、大変みたいだね、君』

目の前にあの死神を名乗る男が現れた。


『貴様!何もんだ!』

レビンソン様がその男に殴りかかった。


『無駄だよ。君』

彼の拳はその男をするりと抜けた。


『それよりさ、お母さん死んで悲しい?ねえ?』

『何よ!なんなの?』

むかつく


『えーそんな態度とって良いの?……めっちゃ良いこと教えてあげるのにー』

『うるさい!消えてよ!もう、やめてよ』


『はーまあいいや。君のお母さん生き返らせる方法あるよ』

『え』

生き返らせる?どう言うこと?母さんを?


『君の持っている<死神の地図>さ、所有者が死ぬとね、死んだ大切な人に会えるんだよね。それでね、その会った人か、所有者かどちらかがね生き返られるんだよ』


『何よそれ』

生き返る?それって。母さんを取り戻せる。


『ま、言いたいこと言ったし。バイバイ』

死神を名乗る男は消えた。






『母さん、母さん』

私は気づいたらあの<死神の地図>を開いていた。


『ダメだ!』

地図に手を触れた瞬間、レビンソン様が私を押し倒すように私を地図から離れさせた。


『やめてよ!離して!!母さんを!!!母さんを!!!』


『嫌だ!ライナ!お願いだ!やめてくれ!お願いだ!』

彼は私を強く抱きしめて抵抗する私を抑えてくる


『やめて!なんでよ!なんで邪魔するのよ!離してよ!!』

暴れる私を彼はがっしりと抑えてくる。


『なんでよ!なんでよ!』


『君が好きだらだよ!!!死んでほしくない!!お願いだ!!死なないでくれ!!!』

彼は泣きながら私を強く抱きしめながら言った。


『なんなのよ!……離して!』

『離さない!!!絶対に!!嫌だ!!……僕は君が好きだ!!』

彼は強引に私の唇を奪ってくる。

『んんんん』

舌が無理やり入ってくる


『はあはあはあ』

『僕は君が好きだ。一緒に生きたい。死なないでくれ』

彼は私を強く、暖かく、優しく抱きしめてそう言った。





















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