第21話「あはは、凜ちゃんは、いきなりずどん!と、ど直球の質問だな、分かった」

「良かった! なんともなくて!」


思わず涙ぐむ私を、


「本当にごめん! りんちゃんには余計な心配をかけちゃったな」


と、優しいまなざしで見つめた颯真そうま君。


一瞬、ぽけっとしてしまったが、ここでハッと思い出した私は、


「あ、ああ、そうだ! きょ、今日はありがとう! 困っているところを、助けてくれて、本当にありがとうございましたっ!」


と、お礼を言った。


ああ、良かった!

少しだけ遅れてしまったけど、今度はお礼をちゃんと言えた……と、安堵した。


対して颯真君は、


「どういたしまして! 俺が凛ちゃんを守るって約束したからな」


と元気よく言葉を戻した。


颯真君の笑顔を見て、ホッとしていたら、

はるかとの会話がリフレインした。


「明日、会ったら、凛が颯真君へ改めてお礼を言って、自然に連絡先も聞けると思うんだ。それでじっくり話せば、互いの距離も縮まるよ!」


「ありがとう、遥! そうする! 本当に本当にありがとう!!」


私は、明日じゃなく今日会えた!

お礼も言えた!


そして、これはチャンスかもしれない、そう思った。


学校と違い、今ならふたりきりで、もっともっとい~っぱい話せるから。


この幸運を

絶対に逃したくない!


でも上手く、颯真君と話す事が出来るだろうか?


遥!

こんなチキンの私を応援して!


ふう、はあ、ふう、はあ……


私は大きく深呼吸し、絞り出すように声を発する。


「あ、あの……そ、颯真君」


「ん? 何だい? 凛ちゃん」


「わ、忘れないうちに……言っちゃうね」


「ん? 忘れないうちに言う?」


「うん! 颯真君と」


「俺と何だい?」


クールさの中にさわやかさも混在する颯真君。


この笑顔に女子たちはしびれるに違いない。

間近で見ると、なおさら破壊力がある。


勇気を出せ!

頑張って言うんだ、私!


「これからも、いろいろ話したいの! だから颯真君のスマホの番号とメルアドを教えて! 私から連絡するからっ!」


ああ、やった!

遂に言えた!

私のお願いを伝える事が出来た!


対して颯真君は、


「ああ、構わない! というか、喜んで教えるよ!」


あっさりと言い、更に、


「じゃあさ、凛ちゃんの番号とメルアドも教えてくれよ! 今夜、俺からも連絡するからさ。これから、いろいろと話そうぜ!」


と、私の想像以上、期待以上の言葉を、大きな声で告げてくれた。


こうして、私と颯真君は、電話番号とメルアドを交換した。


やったあああ!!!

すっごく嬉しいっっ!!!


遥は今日、私の恋が進んだと慰めてくれたけど、


またも、私の恋愛は一歩、否! 大きく前進したのだ。


これって、めちゃくちゃドラマチックじゃない?


夕日に染まるバスケットボールのコート。

無心にシュートを放っていた颯真君。

それを見守る私………


会えないと思っていた想い人に偶然会えた。

まるで以前読んだ恋愛青春小説の1シーンみたい………


と、つらつら妄想していたら、颯真君が、


「何か、俺に聞きたい事がありそうだな、凛ちゃんは」


「うん、いろいろと」


「そうか、いろいろとか」


「私、颯真君と話したい事、聞きたい事が、た~くさんあるよ。でも待ちきれないから、今夜じゃなく、今すぐに話したい」


「OK、俺もだ、凛ちゃんと話したい事、今すぐ尋ねたい事がい~っぱいあるぞ」


「じゃあ、話す順番、どうする?」


「ええっと、そうだな……じゃんけんでもやろうか?」


じゃんけん?

うふふ、何それ? 


颯真君から、お先にどうぞ!

と言っても良かったんだけど


……じゃんけん勝負なんて、子供みたいに他愛もないけれど……

少しでも、颯真君と心の距離を縮めたい!


正直な気持ち、じゃんけん勝負は、ラッキ―!

そう思った!


嬉しそうに微笑む私を見て、やはりいたずらっぽく笑う颯真君。


その笑顔が大好き……かも。


「よし! 勝負だ、凛ちゃん!」


「うふふ、勝負ね!」


最初はグー、じゃんけん、ぽん!

あいこでしょ!


じゃんけん、ぽん!

あいこでしょ!


最初はグー、じゃんけん、ぽん!

あいこでしょ!


じゃんけん、ぽん!

あいこでしょ!


最初はグー、じゃんけん、ぽん!

あいこでしょ!


じゃんけん、ぽん!

あいこでしょ!


それからも、あいこが続く……


結局は何と!

不思議な事に、10回連続で『あいこ』


うわあ!

ず~っと、あいこで、勝負が全くつかない。


颯真君とじゃんけんをするのは楽しいから、

このまま、続けても構わなかったけれど……


決着つかず、こう着状態な状況に、颯真君が苦笑。


「おいおい、こんなのありなのか? 10回も連続であいこか! 決まらないな……じゃあ、いいよ、レディファースト。凛ちゃんから話してくれ、俺に何でも聞いてくれよ」


「そ、そう……じゃ、じゃあ、お言葉に甘える。教えて。颯真君、今日、どうして早退しちゃったの? 嘘までついて」


「あはは、凜ちゃんは、いきなりずどん!と、ど直球の質問だな、分かった」


颯真君は苦笑し、大きく頷いたのである。

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