友人が首を吊って死んでた

現無しくり

友人が首吊って死んでた

 僕は作家だ。といっても、アマチュアで、素人である。しかし、それなりに誇りをもってやっている。楽しい趣味というよりは本気の趣味で、書籍化とは言わないけれど、いいものを出す努力は怠ったことは無い。その上、僕は自分の創作にルール・制限を設けている。


一つ。人をむやみに殺さないこと。

二つ。露悪的な展開は避ける。

三つ。人が前に歩む物語にすること


 人を殺してしまえば簡単に物語ができるし、露悪だって簡単だ。だいたい創作を始めた頃はこの手段に酔ってしまうのだけれど、酔いっぱなしでは成長がないし、なにより綺麗ごとを、途中で嫌にならずやってみせるのは相当に難しい。意識していないと、すぐそういう書き方をしてしまう。プロット段階で露悪に走った時点で、僕は書かないことにしている。それくらいじゃあないと、僕みたいな無才の凡夫は上手にならないのだ。


 さて、今、目の前に死体が転がっているこの状況は、先ほど出した状態に、全部当てはまらないわけだけれど。


「うおおおおおおおおおおお」


 死体だ。初めて見た。汚い臭いグロテスクだ。先月まで話していた友人がこのような姿になってしまっているのはショックだし、今すぐ帰って寝込みたいところなのだけれど、こんなチープな展開が現実にあるとは思わなかったし、あってしまったから少しおいしいと思っている自分がいる。いや、悲しいんだけども。


「しかしまあ、本当に糞ションベンが垂れ流しになるんだな」


 僕はワンルームマンションの玄関で茫然と眺める。通路から見える友人の姿は物悲しく、曇り空の日光が包み込む部屋で、ゆっくりと揺れていた。


「ぶはああああああ」


 首吊り死体が突然騒ぎ出し、落下した。その瞬間クソとションベンが部屋中に弾け飛んで、僕の顔にまで飛び散った。


「うおおおおおおうんこだ。俺のうんこ‼」

「おあああああああああああ顔にうんこ‼」


 僕は土足で部屋に踏み込み、友人をビンタした。


「うおっ、斎藤、なんだなんだ」

「こっちのセリフだ感傷にひたらせろクソまみれ後藤‼ 雰囲気は最高だった。マジで」

「なんだァテメェ!! 勝手に文学屋きどって浸ってんじゃねぇぞタコ!! 友人が死んでんだぞ」

「馬鹿タレ‼ これはネタにするっきゃねぇだろ!!」

「馬鹿タレはお前だろ!! クソッたれ」

「お前だろそれは‼」

「なんとぉ!!」

「てか勝手に死ぬなよ。相談しろよ!!」

「……それはすまんかった」

「もっぱつだタコ‼」

「ぶ‼ ふざけんなド三流‼」


 友人とつかみ合って、もみくちゃ汚物まみれになって僕らは喧嘩をした。

 ひとまず、良かったというべきなのか。汚物まみれの部屋と僕らには、俗にいうエモーショナルはなかった。曇り空に照らされたこじんまりとした部屋は、めちゃくちゃうんこの匂いがした、

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友人が首を吊って死んでた 現無しくり @Sikuri_Ututuna

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