最後の花

ツキシロ

第1話

私は花が好きだった。花は色と香りと形があって、私の心を癒してくれた。でも、花はもうない。世界は灰色で、空気は汚染されて、人々は生きるのに必死だ。私は政府の施設で働いている。私の仕事は、人間の感情を抑制する薬を開発することだ。政府は、感情は人間の弱点で、社会の秩序を乱すものだと言っている。私はそれに疑問を持ったことはなかった。私はただ、命令に従っていた。


ある日、私は施設の地下にある実験室に行った。そこには、人間の感情を測定するための被験者がいた。彼らは様々な刺激にさらされて、その反応を記録されていた。私はその中の一人に目をやった。彼は若くて、茶色の髪と緑の目をしていた。彼は私を見つめ返して、微笑んだ。私は驚いて、目をそらした。彼はなぜ笑ったのだろう? 私は彼に興味を持った。


私は彼に会いに行くようになった。彼の名前はレオだった。レオは私に話しかけてくれた。彼は昔のことや夢のことや希望のことを話した。私は聞いていた。彼は私に感情のことを教えてくれた。彼は私に笑顔や涙や怒りや悲しみや恐れや愛という言葉を教えてくれた。私はそれらを感じることができた。私はレオに惹かれていった。


私はレオを助け出すことにした。私は施設の警備システムをハッキングして、レオを解放した。私たちは施設を脱出して、外の世界に出た。私たちは走った。私たちは追われた。私たちは隠れた。私たちは見つかった。私たちは撃たれた。私はレオを抱きしめた。私はレオにさよならを言った。私はレオと一緒に死んだ。私は幸せだった。私は最後に花を見た。花は赤くて、美しかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最後の花 ツキシロ @tsukishiro10

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ