第15話 4人のグループ

 そのゲームの後の話である。

 現時刻は9時55分である。


「楽しかったねー」


 桜田さんは後ろに手をついて、体重を預けながら言う。


「だねー」


 三日月さんも椅子に座って言う。


「そろそろ部屋に戻らないと不味くないか?」


 颯太が時計を見ながら言う。


「え、もうこんな時間! やばいねー」


 ほんとにこう言う日だけ時間が経つのは早いと思う。授業もこのぐらいの速度で終わってくれたら良いのに。

 そうして、部屋を出ようと、入り口で靴を履いた時に、


「そう言えばさ、男子は夜更かしするの?」


 突然、桜田さんが言う。


「もちろんするっしょ」


 颯太は当然のように答える。


「颯太がするなら僕も」


 まぁ、せっかくだし修学旅行を存分に楽しもうではないか。


「へぇ〜、私たちもしよっか?」


「うん」


 三日月さんは真面目そうだし、そんなことしないのかと思っていたが、そう言うこともするようである。


「ねぇ、この4人でグループLINEつくってさ、消灯時間過ぎてからこのメンバーで話さない?」


 桜田さんが神提案をしてくる。なぜかって言うともちろん、そこには三日月さんも参加する、つまり、そこから追加すれば良き! ナイスすぎる。


「いいね!」


 僕は颯太よりも先に反応する。

 それを見て颯太はにやーっとしている。


「鳴釜くんが1番に反応するの珍しいね、みんなもいい?」


「いいじゃん、楽しそう」


「うん」


 と、それぞれの反応を示して、4人のグループラインを作った後、女子たちは自室へ戻っていった。


「なるっち、良かったな」


「何がだよ」


「三日月さんの連絡先入手出来るじゃん」


 時々こいつが怖くなる。


「何のことさ」


「いまさらしらばっくれる気か? 旅行の時に好きになった人って三日月さんのことなんだろ?」


 なにこいつ、将来探偵になれるんじゃね?

 とにかくここは誤魔化さないと…


「は、は? なんで?」


 動揺してしまった時点でほぼ認めたようなものだが、まぁ、もうしゃーない。


「まずは始業式の日だ。そこで何で三日月さんと知り合っていたのか、なぜコミュ障のなるっちが、コミュ障かよく知らないけど、三日月さんと喋ることができたのか、そこで疑問を持った。バスのポーカーの時もめっちゃ仲良さそうだったし、そして確信したのは今日の三日月旅館に着いた時だ。そこでお前たちは唖然としていたな? それに、さっきだって連絡先共有のできるグループLINEの作成に速攻賛成したな?それも確信して今話す理由の1つだ。それに…」


「もういいわ」


「ふっ、どうだい、俺の名推理は」


 そうして、キメ顔をして来る。腹立つ顔。

 もう覚悟を決めて明かすことに。


「……そうだよ」


「やっぱりな。色々気を配らせて正解だぜ、まったくよ」


 ため息をつきながら言う。


「確かにな、色々ありがとうよ」


「いいんだぜ、親友」


「ありがとうよ、親友」


 そう言って恋バナに耽っていると、コンコンとドアを叩かれる。

 ドアを開けると、楠木先生がいた。


「二人ともいるわね、はい、これ以降は部屋の外出禁止ね。もし何かあったら部屋の電話でロビーに電話するのよ?」


「「はーい」」


「はい、じゃあおやすみ」


「「おやすみなさい」」


 そう言って僕らはドアを閉める。

 どうやら僕は楠木先生とも喋れるようになったようである。


「って、誰が寝るかボケ! まだ10時15分やんけ!」


 颯太は一人でなんか言っている。

 それから、歯磨きや荷物の整頓などを済まし、電気を消す。


 そして、僕らはスマホを取り出す。


いろは「やっほー、寝てないよね?」


Souta「どもー、当然だろ?」


 僕たちの夜更かしの始まりである。

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