第4話 家族旅行の終わり

 それからは大したイベントもなく、そのまま就寝、次の日を迎え、朝食を食べ、帰宅の準備をしていた。

 

「いやぁー、色々あったけど、なんやかんや楽しかったなぁ」


 父さんがはっはっはと笑いながらそういう。

 昨日あんなに重い荷物もたされ、そしてまた今日どうせ持たされるというのに、呑気なもんだ。


「たしかにねー、息子の成長を見れたし」


 母さんも同様に笑う。

 いや、意味はわかるけどね?

 ちょい捉え方によってはやばい親だからね…?


「この後時間作ったほうがいいわよね?」


 そんな僕の考えていることを気にする様子もなく、急に180度話題を変えて、真面目な表情をして言ってくる。


「まあ、チェックアウトしてる間とかに終わらせるさ」


 まあ、元々そのつもりだしね。


「そう。私もその親に言ってやりたいことがあるけど、チェックアウトをお父さんに任せてついて行こうか?」


 どうやら、親として思うところがあるのか知らないが、そう言ってくる。


「いや、いいわ。僕だけでなんとかするさ」


 僕が吹っかけた問題だしなぁ。

 まぁ、親を連れて行っても変な印象持たれちゃうかもしれないしね。


「蒼、あんた強くなったわね。なに? 好きな人でもできたの?」


 僕は自分の母がサイコパスかと疑った。

 事実、僕は三日月 美優さんに惚れてしまっていた。


「えー? そうなの?」


「まじなん? お兄ちゃん?」


「父さんは応援するぞ!」


 など、周りから声が上がる。

 うわー、最悪だ。これ。


「……どうしてそう思うの?」


 僕はこの時、失敗した!と思った。本当は即座に否定すべきだろう。逆にそうしないとほとんど肯定したものだろう。まぁ、隠している事を急に見透かされると誰でもびっくりするよね。うん。読者の皆さんは気をつけてね。


「いや、蒼をここまで変える発端が恋なんてね…、私がいくら努力しても……」


 母さんは僕の話を無視し、一人で呟いている。『もうこれは何を言っても同じだろうな。母さんこうなると話聞かないし』と僕が判断した事で、この話は終わりを迎えた。

 葵と真凛は以外そうにこちらを見ていたのだった。





 それからさらに数十分経過し、僕らの家族は帰宅の準備を整えていた。


「じゃあ、これもよろしくね!」


 そう言って葵姉さんが僕に荷物を渡してくる。

 分かってはいたけど、今日もめっちゃ持たされるな……。

 父さんの方を見ると、行きの量にプラスでお見上げまで持たされている次第である。今にも倒れてしまいそうである。昨日の僕みたいに倒れて瓶系のお見上げを割らなければいいのだが……。


 そんなことを思いつつ、僕ら一同はチェックアウトするために旅館のカウンターへ。

 忘れてはいけない、僕はまだこの旅館でやらなければ行けないことが残っている。


 机の上にさっと荷物を空いてから目的の人物に話しかけに行く。


「少しよろしいですか?」


「はい、私もあなたともう一度お話ししたかったです」


 そう、第2回美優さんのお母さんとの話し合いである。

 それから昨日と同様、一目につかないところに移動する。

 後ろに変な影があるけど、一旦無視だ。

 そしていきなり、


「すいませんでした!」


 まさかのいきなり美優さんのお母さんは頭を下げてきた。

 僕は少し驚いた。昨日の今日でここまで態度が変わるもんなんだなぁ…


「何がですか?」


 まぁ、そこが1番重要だよね。


「…うちの娘に今無理強いしてしまっていて、娘の自由を奪っていたこと、そしてさらにはここの従業員から嫌われていることにすら気づいてあげられなかったこと。つまり、親として失格だったところです」


 ちゃんと分かってるようで安心した。でも、なんで急にこんなに変わったんだ?


「なんでそんなに考え方を改めたんですか?」


「それはですね…」





 〜美優の母視点〜


 これは昨日の夜、美優とぶつかった少年と話した後の話である。


『確かに少年の言ってたこともそうな気がするわね…、でも美優はどう思ってるか分からないわ。なら直接聞いてみましょうか』


 そう考えた私はもう寝巻きに着替えて休んでるであろう美優の部屋に赴く。

 そして、ドアを叩こうとすると、ドア越しに啜り泣くような声が聞こえてくることに私は気付いた。

 私は不本意ながらもこの時確信してしまった。


『あの少年の言う通りなんだわ。あの子はこんなことを望んでいない、と言うより、私自身も高校生の頃、しんどかったものね。あぁ、なんで美優の気持ちに気付いてあげられなかったのかしら。本当に私親失格だわ…』


 私はそう考えながら、残っている仕事を終わらせにカウンター方面へと向かって行ったのだった。





「と言うことがあったからです」


 美優さんのお母さんは説明し終えて一息つく。


「なるほど、そう言うことだったんですね」


 ちゃんと納得してそうで良かった。


「納得した理由をわかってもらえました?」


「はい」


「そう、なら良かったです。これからは美優に対して悪いようにはしないと誓います。今からでも母親らしいことをしてあげなくちゃいけないわね…」


「頑張って下さいね」


 『もう大丈夫だろう』と思った僕はそう言い、その場を離れた。

 僕は後ろからつけてきている変な気配の人が、親同士話すことも必要かなと思ったから早めに切り上げることにしたのである。


 それから後ろでは内容までは分からないが、話し声が聞こえきた。




 

 僕は母さんの帰りをロビーで待っていた。荷物はなぜか無くなっていた。父さんが頑張って運んでくれたのか、珍しく葵姉さんか真凛が運んでくれたのか…どちらにしても感謝だ。

 なんてことを思ったことから約20分後、やっと待ち人が帰ってくる。

 

「蒼、やっぱり気付いてたのね」


 もちろん待ち人はうちのクソババア、じゃなくて母さんである。

 クソバ…じゃなくて、母さんはあちゃーとでも言ってるように頭を押さえて僕の方に来る。

 あんなにわかりやすく後ろをつけられて分からないとでも思ってたのかな…


「それにしても、よくやったわね! 本当に見直したわ」


「うん、まあ役に立てて良かったよ。これで美優さんへの内容が少し変わるのいいんだけど…」


 まぁ、惚れた子に嫌な思いしてほしくないしね。


「きっと変わるわよ」


 それならいいんだけどね。


「そっちの話も済んだの?」


「ええ、親としての常識をしっかり話しておいたわ、安心しなさい!」


 うちの母さんの常識はうちの男を荷物持ちとしか思ってないような変な考え方だけど…大丈夫かなぁ…ちょっと不安になってきたな…


「そう。それは安心だよー」


 棒読みでそう言う。

 母さんは少し顔を顰めたが何も言ってこなかった。

 まぁ、僕にできることはもうないだろう。

 

「じゃあ車に行こうか」


「そうね」


 それから二人で父さんたちがいる、車に戻って行き、そのまま帰宅したのであった。


 あー、美優さんの連絡先欲しかったなぁ。頼んでみたら良かった…。


 〜後書き〜


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