12 エピローグ:おし、つぶす

 青年は走る。

 気持ちは高ぶり、顔がほんのりと紫に染まる。

 ここのところ、ずっとこいつに夢中だ。

 虚空に映し出したモニタに利き手の手のひらを押し付けると、先日得た金をそそぎこむ。


 このスタジアムの虫けらどものところに、素敵な捕食者を送りこむプランに投票するのだ。

 自分は関係ないと思っているときに、一気に巻き込まれたらどう思うだろう。

 それが楽しみで、大分課金してしまった。でもやめられないのだ。

 今期も面白くて仕方がない。当分は飽きないだろう。

 友人を呼び出す。

 あれは司会者がお気に入りだった。へらへらと笑う司会者、友人の推しキャラであるあの偉そうな男が自分の置かれた境遇を悟り、泣きわめきながら足から食われていくとき、友人あいつはどういう反応をするだろう。楽しみだ。


 青年は右第二腕で触覚を撫でるとケラケラと笑う。

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ハイシン 黒石廉 @kuroishiren

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