第6話

「それじゃあ ちょっと出てくるわ」


 今日は、料理教室の予約を入れてあるからリーダーと横になりたいけど行かなくちゃいけないんだよね。

 留守中に、女が入って来ないか心配はあるのよ。


「あぁ~」


 振り返りもせず、右手を上げて寝室へ消えるリーダー。


「いってきまーす」


 玄関の、カギをかけて街へと出かける。

 空を飛んで行かないのかって、思うかも知れないけど、めっちゃ電気を使うのよ。

 バスに乗って、隣町の先生の家まで行く。


「ケンジ先生 こんにちは」


 ちょうど、玄関先にいる先生に声をかける。

 年齢は、29歳で元々はフレンチのシェフをやっていたそうだが、新型ウイルスの蔓延でお店が、つぶれちゃって細々と料理教室をしている好青年なのよ。


「あっ こんにちは アンテさん」


 爽やかな笑顔が特徴の先生をつかまえて、他の生徒に見つからない部屋に連れて行く。


「今日は 香水の量を 少なくして来ました」


 前に、思い切り香水をぶっかけて教室に来たら、注意されたので軽く振るくらいにした。


「うん そうこのぐらいが ちょうどイイ香りの量ですね」


 サムアップするケンジ先生。


「魅力的に なりましたか あたし ??」


 前回、告白して付き合おうと気合いが入りすぎていたので、今回は落としたい。


「うん すごいね アンテさん」


 特別に、笑顔になってくれているのかな。


「それなら 抱いてくれますか ??」


 思い切って、言ってみる。


「あっ うんそれくらい魅力があるよ 顔もぶっちゃけタイプだし」


 なんだろう。

 引いてしまったんだろうか。


「それなら いつにしましょうか ??」


 もう、撤退なんてあり得ないので突き進むつもりよ。


「あっ そうだな

今から 料理教室をするでしょ」


 あきらかに、苦笑いしているケンジ先生。


「はい それなら そのあとならイイですか ??」


 押しまくってやるわ。


「うーん イイけど結婚してるとか言ってなかったっけ ??」


 なんだか、逃げようとしてるのかな。

 無駄な抵抗よね。


「もう イイんです

完全に 愛想はつきたので」


 そう。もうリーダーは他の女が好きなんだし、こっちはこっちで楽しんでやる。


「そうなんだ………

面倒なことは勘弁してくれよ」


 なんのことだろうか。


「大丈夫です

いざとなれば 主人はあの世に行ってもらいますから」


 それくらい、腹は決まっているのよ。


「いゃ

それが面倒なことだけどなぁ」


 そんな、ゆがんだ笑顔するんですね。

 思わず、笑ってしまうわ。


「なにがですか ??」


 面倒なことを排除する提案だけれどね。


「話し合いで 離婚を決めてから体の関係になった方が イイんじゃないかな ??」


 話し合うのが、面倒って説もあるでしょう。


「いや 今がイイんです

やられたままだと しゃくにさわるんです」


 まぁ、こっちの都合なんだけどさ。


「そんな 報復合戦とか 感心しないなぁ」


 鼻で、笑うケンジ先生。


「そこまで 深く考えなくてイイんです」


 深読みしすぎなんだよね。

 もっと、シンプルになってよ。


「うーん

あぁ もう生徒さんが 集まってるから この話は 教室が終わってからね」


 なんだか、はぐらかされたような気がしないでもないけど、期待してるわ。


「はい」

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