第7話 地下ダンジョン
ダンジョンは、獣人の洞穴から東に向かった場所にある。
「ねえ、案内役ってあたしがいるから必要なくない?」
「イングルは、戦闘面で協力してもらうから」
「あんま、頼りなさそうだけどね~」
こいつよく、本人に聞こえる声で話せるな、イングルが怒ったらどうするつもりなんだ。
それに、イングルは優秀な白豹族に間違いない、それは鑑定したときにわかった。
名前 イングル
種族 白豹族 男
スキル『槍術』『夜目』『見切り』
称号 神の寵愛・・一時的に存在進化が可能、その際の能力値も上昇する。
「なあ、アニスの旦那、先ほどから、魔物の姿が見えないのだが、何かしているのか?」
道中全く、魔物と遭遇しないので疑問を抱くイングルは、俺に問いかけてきた。
ヴァンの血液操作のスキルで魔物達を一瞬にして木っ端微塵にしているから、わからなくて当然か。
「ああ、それはな」
俺が説明しようとすると、ヴァンが横から強引に入ってきた。
「あなたの見切りスキルは、ただのお飾りですかな、目を凝らして良く見てみなさい」
「何か、ヴァン殿は俺に厳しくないか?」
「当たり前です、ここにいる者の中で一番足手まといなのですから」
ヴァンの挑発に腹を立てたのか、見切りスキルで、走りながらも周囲をよく観察した。
「何か、端の方で、鋭い何かが動いているように見える」
見切りスキルでも血液操作で薄く鋭くした血は、はっきりとはわからないのか。
しかし、それを目視しただけで及第点と言った所だな。
「それは私の、血液操作のスキルですぞ、少しでも傷を負えばそこから血液を抜き取ることが出来ますからな」
「おっかねぇな、あんたとは戦いたくないぜ」
「私などまだマシな方ですぞ」
しばらく、移動していると、目的地まで近づいてきた。
茂みの影に隠れているとダンジョンらしき物が見えた。
勇者時代に見たダンジョンと同じで、人工的に造られたような門があり、扉は付いていなかった。
それのせいで、ダンジョンから魔物が溢れ出してしまうのだ。
「ほへーあれが噂のダンジョンね、ていうか、何か外にいるわね」
ダンジョンの入り口近くには、全身黄緑糸のゴブリンがいた。
腰に布を巻いており、5匹いたがそれぞれがこん棒のようなものを持っていた。
見てみると、弱っている仲間のゴブリンを歪な笑顔を浮かべさせながら、集団で甚振っていた。
「あのゴブリンは既に死んでいるのにな、消滅が始まっている」
「本当に下品で野蛮な魔物ですな」
そういうと、ヴァンの血液操作で首をかき斬った。
ゴブリン共は自分たちが死んだことにさえ気が付かず、不気味な笑みのまま消滅していった。
「では、中に入りますかな」
「ちょっと待て、レイはどうした?」
黄金狐のレイがいなければ、高ランクの素材のドロップ率が下がってしまう。
ヴァンにはダンジョンに近づいたら、連れてくるよう指示をしたのだが。
「レイはまだ寝ております、起こすのは可哀想ですぞ」
この
全く、いつからヴァンは俺の指示より、レイを優先するようになったんだか。
仕方がないか、レイの称号はレイ自身の気持ちにも左右されそうな称号だし、無理やり連れてきても意味がない、か。
「わかった、なら、このメンバーで行こう」
地下ダンジョン内に入ると、ヒカリゴケが壁に張り付いており、魔力を持ったものが通ると光だす性質があるため、かなり明るい。
「意外と綺麗ね、ダンジョンって」
鉱石、薬草、宝箱、魔物、地下ダンジョンはまさに、素材やアイテムの宝庫と言われており、冒険者にとっての主な収入源になっている。
「イングル殿、一応確認しますが、あなたはこの先、我らに付いてこられるのですかな?」
「もちろんだ。それに、あんたたちは同族の恩人だが、俺自身はまだ信用しているわけじゃない、あんたのスキルといい、旦那といい、底がしれない」
「随分と正直だね」
「あんたたちに嘘やおべっかなんて通用しないだろ」
イングルは、信用していないという割に、俺に対しては笑顔で話してくれる。
俺は未だ、イングルに顔を見せてはいない。
魔族とバレてはいるが、フードを外すタイミングを失ってしまいこの状態が続いている。
「ちょっとあんた、口の利き方がなってないわね~」
「申し訳ございません妖精様!」
大雑把なイングルでも妖精のフィーには頭が上がらないらしい。
俺はイングルの傍まで近づいた。
「イングル、君は長の命令でここにいるかもしれないけど、もし身の危険を感じたら逃げてくれ」
「おいおい、あんた達といて危険になることがあるのかよ、気にせず進もうぜ」
食えない奴だな。
仕方がないインベルの事を気に掛けながらダンジョンを攻略するとしよう。
「フィー、インベルのサポートをしてやれ」
「えーめんどくさー、まぁいいけど~」
そういうと先に進んだ。
◇
上層には、ゴブリン、スライム、全身鋼でできた
しかし、ヴァンや俺にぶつかるだけで、魔物たちはドロップしていく。
さすがに上層の魔物は弱すぎるな。
洞窟内は基本的に一層ずつ迷路みたいなものになっており、そのどこかに下の階層に繋がる階段がある。
こちらには、フィーがいるので、風の精霊の力をかり、風が漏れている所や淀みを見つけてもらい、迷わずに進めている。
白豹族のイングルは、俺たちのスピードに何とか食いついてきている。
さすがは、あの群れの中で一番の戦力を誇るだけある。
しかし、そのイングルは既に限界が近いのか、足が遅くなってきていた。
「少し待ってくれ!休憩しよう!!」
「でも、まだ13階層だよ」
「もう13階層なんだよ!!アニスの旦那!」
仕方がない、ここは一度休憩するか、俺も、小腹が空いたしな。
ちょっと早めの晩飯を取ることになり、次元収納に入れていた調理器具を出すと、大急ぎでヴァンが料理する。
何が食えるか楽しみだ。
「しかし、あんた達本当におっかねぇな、普通ダンジョンってもっと慎重に行くもんだろ」
イングルの言い分はごもっともだが、俺達には時間がない、上層や中層何かで時間を使っている暇はないのだ。
「まぁ下層からは慎重に行くよ、それまでは体力温存だね」
「いや全く温存できていないけどな!」
「一応、あんたのスピードに合わせてやっているのよ、感謝しなさいよね」
「それは重々承知ですが」
「あんた存在進化できるならそれを使えばいいじゃない」
「あれは、一時的に強化されるだけで、ここぞっていう時しか使わないんですよ」
「ふぅーん」
フィーが俺の頭の上に乗り、一休みする。
「お前そこ乗るなよ」
「あらレイ専用だったかしら?」
「いやそういうわけではないけど」
お前が上に乗ることで、角の形がより見えやすくなるんだよ。
全く何でこの妖精はこんなにも図々しいのだろうか、一応俺と、服従関係があるはずなんだがな。
そうしていると、ヴァンが料理を運んできてくれた。
「本日は新鮮なシューリング産の茨蟹の味噌焼きですぞ」
シューリング共和国は、比較的平和な国で、作物や魚介類がもっとも盛んな国なのだ。
他国に対しての、食料供給率が高く、将来、移住するなら、東のシューリング共和国と決まっているほどに。
「こりゃまた高級食材が出てきやがったぜ!もう食っていいのか?」
「ああ、食べようか」
今日もレイや仲間たちに感謝を。
茨蟹は、体に纏った頑丈な甲羅に、茨のような無数の棘が付いており、手に触れれば小さい穴が出来てしまうため、捕獲する事が難しい食材になっている。
捕獲量が少ないがため、高級食材として扱われている甲殻類だ。
俺は、その茨蟹にかぶりついた。
高級食材とは言われるだけある、身がぎっしり詰まっており、一口食べただけで、満足感に浸れる。
茨蟹の蟹味噌を使って焼いているため、香ばしさもあり、口の中で濃厚な味噌と海の香りが広がる。
茨蟹を堪能していると、ヴァンが水を持ってきてくれた。
「所でご主人様、ダンジョンとは何階層まであるのでしょうか?」
そういえばダンジョンについて詳しい説明をしていなかったな。
「ダンジョンは30階層が平均的になるもんだが、その誕生してからの年月によって階層は変わってくる」
そう勇者時代に、一番深いダンジョンだと、45階層まであった。
階層が変わるにつれ、魔物たちの強さも変わり、深層まで行くと、かなり苦戦した記憶がある。
ヴァンとフィーを創造した際に使った
「ここはまだ中層と上層の間辺りだ、このダンジョンの特性が段々出てくるから気を付けていくぞ」
特性とは、ダンジョンによって変わり、水系統ならば、中層に行けば、湿度が上がり湿っぽくなる、そして深層ならば、あたり一面が湖になり足場など存在しなくなる。
今回のダンジョンはどんな特性が出るか気になる所ではある。
「ふー食べたわね~」
「流石、高級食材だぜ、まさか生きている内に食えるとはな」
「ヴァン美味しかったよ、ありがとう」
「ありがたき幸せですぞ」
ヴァンの料理で、体力が回復し、英気も養った。
各々身支度を終わらせ、中層に続く階段を進む。
すると、このダンジョンの特性が現れたのだ。
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