第3話 巫女の証と使命の道
アリシアの姿が一変し、彼女はその新しい装いに目を見張った。
派手で透ける服は、ガーディアナの光にきらめき、その煌びやかな衣はまさに神話から抜け出たようなものだった。
純白と金の糸が織りなす装飾が太陽光に反射し、彼女自身も光を放っているように見えた。
しかしこの新しい衣、とりわけその長い裾は、アリシアにとってはなかなか慣れないものだった。
「でも、何よこれ…。引きずりそうなくらい裾が長いのに、何でほとんど透け透けなのよぅぅぅ。うぅぅ。パンツ見えちゃうじゃん(泣)。胸元も肩もこんなに露出した事なんてないのにぃぃぃぃ!」
「知ってる人に見られたら死ねる」
「あ、でも異世界だった……」
「驚くな、若き巫女よ。その衣はお前の新たな身分を示すものであり、お前が
「光の巫女」である証なのだ」とザイファーは言った。
彼の声は厳かであったが、アリシアはその長い裾に足をとられてつまずき、
軽やかに舞うはずのドレスをばさばさと音を立てさせながらバランスを取ろうとした。
そのせいで少しパンツが見えてしまっていたが、ザイファーはなんのリアクションもなかった。
「しかし、具体的に私は何をすればいいの?この、えっと、ちょっと長すぎるドレスを着ることが、私が巫女である事の全てではないわよね?」彼女はドレスの裾を持ち上げながらザイファーに尋ねた。
早くもアリシアの言葉遣いは少しきつくなっていたが、ここでもザイファーに特別な変化はなかった。
「もちろんだ。お前に必要なのは、この国の四大守護者たちを見つけ出し、彼らと共に暗黒の勢力に立ち向かう力を結集させることだ。しかし、その前に、そのドレスの扱い方を学ぶことだな」とザイファーは一瞬口元に笑いを隠せずに言った。
(え、イジッてくるんだ)
アリシアは苦笑いを浮かべた。
彼女は自身のドジな面を隠しもせず、それを笑いに変える才能も持っていた。その明るさが、彼女を愛すべきキャラクターにしていたのだ。
ザイファーは続けた。
「守護者たちは、それぞれガーディアナの広大な土地の異なる領域に散在している。勇者は勇猛さと力を司り、東の草原にある隠された砦に住む。賢者は知恵と魔法を司り、北の雪山にある古の図書館を守っている。騎士は正義と忠誠を象徴し、西の城に在る。そして、魔法使いは自然の力を操り、南の森にひっそりと住んでいる。お前が彼らを見つけ出し、協力を得るためには、それぞれの地を訪れ、彼らの試練を乗り越える必要がある」
「試練?もしそれがドレスを着こなす事なら、今から始めた方が良さそうね」
とアリシアは冗談を言いながらも、その瞳には冒険に対する熱い光を宿していた。
「ああ、それはお前の決意と、守護者たちを導くに足る資質があるかを試すものだ。彼らを説得し、お前が真の「光の巫女」であることを示すための試練だ。
それにお前自身もこの旅を通じて、自らの力と運命について学ぶ事になるだろう」
とザイファーは言葉を重ねた。
「分かったわ。では、一体どこから始めればいいの?裾を踏まずに歩く練習から?」アリシアは再びつまずきそうになりながら、しかし元気いっぱいに尋ねた。
ザイファーは少しの間だけ微笑んだ。彼女の気さくな様子が、ガーディアナの厳粛な空気を和らげるのを感じながら、
「最初に訪れるべきは、勇者がいる東の草原だ。勇者はこの国の中でも特に力強い存在であり、彼の力があれば、他の守護者たちもお前に耳を傾けるだろう」と答えた。
(やるしかないわよね、しかもこれって元の世界に戻った時に、誰にも思いつかないゲームシナリオが描けるんじゃ?)
「やあぁっってやるわよっっ!」
そしてアリシアは、自分のドジな足取りを調節しながら、ガーディアナの森を後にし、勇者を探す旅に出た。
彼女の新たな衣服は、彼女がたとえどんな困難に直面しても、「光の巫女」として立ち向かう力を与えてくれるだろう。
そして、その第一歩として、まずは自分とドレスとの格闘から始めるのだった。
ズシャッッ。
アリシアはこの世界で初めてコケた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます