第45話 新らたな日々~新時代が始まるーーー

『大地君…一つお願いしてもいいですか』


僕は幸之助さんと約束を交わした―――—。


『この先、空良にどんなことがあっても、空良のことを守ってあげて欲しい。

空良の記憶から君の存在を消してしまったのに、勝手なお願いだとは重々承知の上

です。でも私はね、空良を守れるのは君しかいないと思っているんだよ』


『はい、それは勿論です。例え、空良の心の中に僕の存在が消えていたとしても

僕は空良を守ります。約束します―ーー』




翌日、学校へ行くと掲示板に空良のことが書かれたビラが貼り出されていた。


【AIヒューマロイドモデルーNO1 ―—空良 入荷。ーークラスは1年】


なぜ、幸之助さんが自らこんなことを実行するのか僕には理解できなかった。


空良の秘密を皆にさらけ出して何を考えているんですか


これも…まさか、未来都市計画の一つである…モニタリングだろうか


少子化問題と老々介護の現実。


ニュースで話題に取り上げられている【子供出産率減少と老人増加】が

すぐそこまで来ていると、この間、社会科の授業で勉強したばかりだ。

デジタル化が進む未来都市も今度はロボットが共に生活の一部に加わる

時代に変化していくのだろうか……。


それでも僕は空良のことをロボットなんて思いたくない


だって空良は…僕にとってかけがえのない一番大切な人……


僕の好きな人だから、、、、、、


僕は掲示板に貼られたビラを呆然と眺めながら、幸之助さんとの約束を胸に

決意を固めた。


今、時代は少しずつ、歪んだ形へと変化している。AIが活躍する時代になれば

人間は用済みだ。人間でいる価値さえなくなってくるんじゃないだろうか。


車はコンピュータで勝手に進み、スーパーのレジは人間によく似たAIが対応。

「コスト削減と明るい未来だ」と、人は笑って言うだろう。そして、人間は

働かなくなり楽な方へと自然に傾いていくだろう……。

近未来、子供が減少していく穴埋めにAIヒューマロイドをクラスの一部に

加えた所で1体にかかるコストは削減どころが借金地獄になるような気がする。

日本の未来は沈没してしまうだろう。人間が消滅し、ロボットに占領される未来

なんて考えただけでもゾッとする。


ただ、僕にとって近年先の未来の事よりも残念なことが一つある。


僕と空良は同級生でありながら同じクラスではないということだ。

どこですれ違ったのか、どこの分岐点を間違えたのかわからないが、

今、現在、僕達の階級は2年生と1年生。僕より1年遅れて入学してきた

空良は僕より1つ下で僕達は先輩と後輩の関係に値する。

中学の時よりも空良がなんだか遠くに感じる。

まあ、中学の時も一度も同じクラスになったことはないけど、あの河川敷に行けば

いつも空良がいて、僕はあの河川敷で空良と話をするのが好きだったーーー。


せっかく全てを思い出したのに待っていた僕の現実は振り出しに戻ったみたいだ。

すごろくゲームでいうとスタートまで戻る…みたいな…。


でもね、空良…。僕は今、すごく前向きな気持ちなんだ。


例え空良の外見が変わったとしても、空良がどんな姿で生まれ変わったとしても

僕は空良と同じ季節を過ごしているだけで幸せになれるんだ。

空良と同じ空を見て、同じ景色を見ているだけで僕は生きているという実感が

体から溢れ出してくる。

空良と同じ空気を吸っているだけで僕の心は幸せに満たされている。

例え、その日、どんよりとした雨雲が怒って雨を降らせたとしても、傘がなくて

ずぶ濡れになったとしても僕の顔はきっと笑っているだろう…。


僕はね、空良……今の日常も満更 悪くないんじゃないかって思うんだ。


これから始まる僕達の新たな日々…新しい時代に……

 

僕はどこまでやれるかわからないけど……例え どんな未来が待っていたとしても

僕は絶対に空良を守る……


空良だけは僕がきっと守るから―――――ーーー。




―――――そして今、新時代が始まろうとしていたーーー。




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