#3 輪廻と鈴音の冥府過去編『閻魔大王の息子輪廻と生命の聖女鈴音』

第13廻「輪廻の幼馴染」

 輪廻りんねは、帰ってくるとりなを相談所の仮眠室のベッドに寝かせ、毛布を掛けた。

 電話で大和と椿を呼んだ後、輪廻は椅子に腰かけ、眠るりなを見つめる。

 彼は、何か異常が無いかりなの魂の状態を調べた。

 


 多少の軽い意識の混濁こんだくは、起こっているものの状態は、何も問題はないようにみえる。

 それも、休めば落ち着いて来るだろう。



 しかし、りなの中の前世の記憶と聖女の能力は、完全に覚醒している。

 輪廻は、未だ信じられない様子で、震えながら彼女の手を取る。


鈴音すずね…俺もずっと、逢いたかったよ。昔と変わらず君を愛してる」

 そう、呟くと愛しそうにりなの手の甲に口づけをした。

 輪廻は、りなの前世、鈴音と過ごした。幼き日を思い出していた。




 ❖







「輪廻様、危ないですわ!今、お助け致します」

 ここは、冥府にある地獄の炎魔宮えんまきゅう

 庭園にある気の上に地獄の十王の一人、閻魔大王の子息、輪廻が登っていて、それをおろおろしながらメイドが、助けようとしている。

 氷雨輪廻、五歳。この頃はまだ、能力を上手く使いこなせていなかった。

「大丈夫!小鳥さん、巣に戻したらすぐ、降りるよ」


 輪廻は、メイドに無邪気な笑顔でにこっと笑いかける。

「お母さんのとこにお戻り」

 彼は、ヒナを巣に戻した。

 その時、輪廻は突然、足を滑らせた。


「わっ!」

「わぁーっ!助けてー」

 木の枝に掴まり、宙ぶらりんになる。

「キャーッ!私が行きます。動いては駄目ですよ」

「ヤダッ、怖い!怖いよぉ」


 輪廻は、思わず身をよじった。

 その拍子に枝が折れて輪廻は、落下してしまう。

「輪廻様―っ!!」

 顔面蒼白になり、輪廻を受け止めようと、下で待機するメイド。



 その刹那、薄いピンク色の長い髪と赤の瞳を持ち、白いレースとフリルのドレスを着ている輪廻と同じくらいの年齢の幼女が突如、光の中から現れ、両手を組んで祈った。

 すると、落下していた輪廻の体が、金色の光に包まれてふわりと浮いた。

 ゆっくりと、地面の上に降ろされる彼。

 彼女は、輪廻を見下ろすと優しく手を差し伸べた。


「大丈夫?輪廻ちゃん」

「大丈夫!ありがとう、鈴音ちゃん」

 輪廻も微笑むと、鈴音の手を掴み、立ち上がった。

 ぽんぽんと尻に付いた汚れをはたくと、二人で顔を見合わせてにこーっと微笑む。



「僕、鈴音ちゃんのこと、大好き」

「私もよ。輪廻ちゃん」

 この娘は、輪廻の幼馴染で生まれた時から、許嫁いいなずけと決められている鈴音と言う女の子。


 御霊神族ごりょうしんぞくと言われる冥府でも、極めて霊力が高い種族で、輪廻のごく霊神族りょうしんぞくに次ぐ、実力でその中でも、鈴音は百年に一度、生まれる“生命の聖女”と呼ばれていた。


 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

 第三章、過去編始まりました。

 よろしくお願いいたします。


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