第12廻「生まれ変わり」

 男は、細身で整った顔をしており、銀髪のロングヘアで薄い蒼い瞳をしていた。

 しかし、冷たい雰囲気が漂っている。

「お前のその顔は…!ぬえと共にいた息子の、なぜお前がここに、それに生命せいめいの聖女だと?」

 生命の聖女は、幼馴染の鈴音すずねただ、一人しかいないはずだ。

 輪廻は、驚愕してわなわなと震えている。

「輪廻さんっ、どうしたの?この人と知り合いなの」




 りなが輪廻に心配して聞いているが、輪廻は震えるばかりで、りなの方を見ようともしない。

 明らかに焦りと困惑が滲み、いつもの冷静沈着な彼とは雰囲気が変わっていた。

「クククッ、いるではないか?貴様の後ろに、あの女の生まれ変わりが」

 男は、それすらも気が付かなかったのかと、言う様に輪廻をあざ笑う。



「嘘だ…りなが、嘘を吐くな!ぬえ!」

 輪廻は、眉間にしわを寄せ、声を張り上げた。

「その名は、とうの昔に捨てた…今は、紫闇枢しあんかなめと名乗っている。貴様の父親に私の父、鵺が殺され、私は何もかも捨てて復讐を誓ったのだ。貴様らにな!」

「くっ、何の逆恨みをしている!それは貴様の父が、大罪を犯して鈴音を殺したからっ!」


 紫闇枢(鵺野夜火)AIイメージイラスト

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818023214038917550


「うう…輪廻、さん…頭痛い」

 りなは、弱弱しく震えながら、自分の頭を両手で抑える。

「どうした…りな!大丈夫か」

「はっ、はっはっ…輪廻さん、輪廻さんっ、助けて」



 呼吸が苦しくなり、浅い息をして顔面蒼白になる、りな。

「助けて、輪廻さん。―――輪、廻ちゃん…逢いたかった、ずっと」

「り…な?本当に君は、鈴音なの、か?」

 輪廻は震え声で、両手でそっと、りなの頬を包む。


 りなは、ふるふると小刻みに震えながら輪廻を見つめ、涙を溢れさせると、彼の腕の中で気を失った。

「フッ…どうやら、記憶を取り戻したようだな。今日の所は、顔見せ程度だ。まずは、貴様からじわじわといたぶって殺してやるから、首を洗って待っていろ」



 紫闇は、そう言い捨てると、闇夜に消えて行った。

 このまま、りなを家に帰すのは危険と判断して、輪廻は、遺体のことを警察に連絡し、りなの父親にも事情を説明し、りなを抱いて相談所に戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る