※第1廻「小鳥遊りなの相談~相談支援長、氷雨輪廻との出会い」②

 ―――その夜。


 赤い髪の、赤色の着物を着た。筋肉質な青年が輪廻に問う。

「話しは大体、理解しやしたけど。それで、若。今度の件はどうするので?」

「引き受けるよ、椿つばきが連れて来た相談者だ。事情も、視てしまったしな。服の下にはアザが無数にあると。俺は、ああいうのを放っておけないタチなんだ。それに、親父の命だしな」


 赤髪の青年に若と呼ばれた。輪廻りんねは、昼間とは打って変わって口調も雰囲気もだいぶ、変わっていた。

 椿が輪廻と青年に言う。彼女には、黒色の猫の耳とふたまたに分かれた尻尾が生えていた。

「それでは、輪廻さま、鬼塚大和おにづかやまとさん。参りましょう。小鳥遊りなさんのご依頼先へ」



 ◇◆◇

 一方、小鳥遊たかなしりなをいじめている、少女グループのリーダーは、自室でイヤホンを耳に入れ、MP3プレイヤーで音楽を聴いていた。


 ふと、思いつき少女は、ニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべる。

「あっ、そうだ。明日。あいつが困るように今のうちに。クラスのヤバい奴に話しといてやろ!小鳥遊の奴、明日絶対、あいつにボコボコにされるからっ。あははっ!」


 少女は、邪悪な笑みと企みを巡らせながらスマホで、クラスの名簿を見て電話をかけ始めた。


 その時、突如。部屋の電気が点滅し始めた。

「あん?なんだ。停電か」

『お前は、性根が随分と腐っているようだな。俺が、地獄へ落としてやろうか?』


 電気が、点滅を繰り返す度に輪廻と椿、大和が突如、部屋の中に現れた。

「誰だ!お前ら。勝手に他人の家に入ってきて!お父さーん。変な奴らが…」

 少女が叫ぼうとした時、大和が背後に現れ、口をふさいだ。

往生際おうじょうぎわの悪い女だ。おとなしく。若に裁かれな!」


 大和は、額に二本の角が生えていた。

「ひっ!」それを見た少女は、青ざめる。

 その瞬間、大和は少女を金棒で頭から、グシャリと叩き潰した。


 激しい激痛が襲い。血液が飛び散る。少女は、自分は殺されたと思った。

 しかし、次の瞬間には元の体に戻っていた。



 夢、否、これは夢ではない。その証拠にあの三人は今も、部屋にいる。体にも記憶にも、あの死の恐怖と激痛を覚えている。少女は、蘇らせられたのだ。

 なんのために。

「小鳥遊りなの痛みを、嘆きを体と心に覚えさせるためだ。このくらいで、死んでもらっては困るからな。」


 輪廻は、少女の頭を掴み。口元にさげすむような笑みを浮かべた。

「貴様には死後、死すよりも辛い。永久とわの地獄が待っている。極寒の炎で震えてけ!」


 ゴウッ!!!


 少女は、青白い極寒地獄ごっかんじごくの凍てつく炎で千度、焼かれて。また、蘇らせることを繰り返された。


 少女は、ふらふらになり、震えて涙を流しながらたずねた。

「あんたは何なんだ!?もう、いじめはやめる。だから、許して。あいつが、こんなヤバい奴らとかかわりがあったなんて!!」


「俺は、十王の一人。閻魔王の息子。貴様の名は、既に閻魔帳に書いてある。罪を軽くするには、これからいかに。悔い改め、おこないをして行くかだ。一生、罪は消える事はない。せいぜい、苦しみながら励むんだな。俺はいつでも、お前を視ている」


 輪廻が鋭い眼光で、冷たく言い放つ。

「ひいいっ!!!」

 あまりの恐怖に少女は、顔面蒼白になり、気絶してしまった。


「若、いいんですかい?こんな奴を生かしておいて。」

 大和が横目で、少女を睨みながら、輪廻に聞く。

「ああ、こんな娘に今からこちらへ来られては、たまらないのでな。」

 すると、椿が言う。

「これが、輪廻さまの温情なのです。さすが、次期、閻魔大王さまっ。」


 椿が、ほうっと頬を薔薇色に染めて、手を胸の前で組んでほくほく顔で輪廻を見つめながら、尻尾を振る。

「それに……。りなも、夢見が悪いだろうしな。」

 輪廻は、少女の家を後にした。



 ◇◆◇




 次の日、輪廻はりなを店に呼び。真実は隠して、報告をした。

「と言うことで、少しばかり、まじないを掛けてみました。もう、あの人は、りなさんをいじめて来ないでしょう。お父様の借金問題は、りなさんやお父様も頑張っておられますので。これから、追い追い解決して行くと思いますよ。また、何かありましたら、こちらの番号まで。」


 輪廻は、電話番号が書かれたメモを手渡し、人差し指を唇に当てウインクをする。

「若!ご相談解決も、営業スマイルも、完璧っす!」

 鬼塚大和は、物陰から見守りながら、感動の涙を流した。



「何をしてくださったか、分かりませんが。今日のあの人が、妙におどおどしてて。優しくなったような気がするんです。他の人もいじめをしなくなったし……。それに、私を見るとおびえるようになったような?」

 りなが、疑問符を浮かべながら嬉しそうにしている。

「良かったですね、りなさん。」

 その笑顔を見た輪廻も、嬉しそうに微笑みを返した。

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