ソーサラーリングで地下ダンジョンに潜ったら求婚されていると勘違した女モンスターが寄ってくる

いずも

第1話 序章

 イマドキの地下ダンジョン事情をご存知だろうか。

 きつい、汚い、危険なんて言われてたのも昔の話。今じゃ道も舗装されて道中は至るところにトイレ付きの休憩所が設置されている。魔法陣が敷かれていて、もよおしてる最中に襲われる心配もない。

 魔法による照明が全フロア完備、温度や湿度も快適で過ごしやすい。今やそういう条件でなければ冒険者もやってこないのだ。


 コンビニ、歯医者、地下ダンジョン。それくらいどこにでもあるものと成り果てた地下ダンジョンだが、サンダルで登山すると酷い目に遭うようにダンジョンに潜るにはそれなりの装備が必要だ。

 踏破されているからといってモンスターが居ないわけではない。危険度は下がったが安全とは言えないのだ。誰でも気軽にダンジョンに入れるわけではなく、中に入るには冒険者としての免許が必要だ。


 そんなわけで冒険者初級試験に合格したボクも晴れて今日から冒険者の仲間入り。夢と希望あふれる冒険者ライフを満喫する予定だったのだが――


「あー、最近冒険者の急増で剣の生産が追いつかなくてね。しばらく入荷の見込みはないよ」

「そんなぁ~」

 ボクは武器屋のカウンターで力なくうなだれる。見かねた店主の親父が「ちょっと待ってな」と店の奥から持ってきたのはワインレッドの輝きを放つ魔石の指輪だった。


「こいつは使用者の魔力に応じて石から光が放たれる。照射することでモンスターを攻撃できるちょっと変わった武器だ。どいつもこいつも欲しがるのは剣ばかりだが、遠距離から攻撃できる武器も便利だぜ。今ならお安くしとくが、どうだい?」

「よし、買った!」

 とにかくダンジョンに挑戦したかったボクは二つ返事で購入した。まあいいさ、剣が手に入るまでの繋ぎの武器としては悪くない。


 そうして、これから起こる悲劇など知る由もないボクはソーサラーリングを握りしめ、意気揚々と地下ダンジョンへ降り立ったのだ。

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