母という呪縛 娘という牢獄

タイトル:母という呪縛 娘という牢獄

作者:齋藤彩

読書期間:2024/3/7~3/11

媒体:オーディブル



・・本書紹介・・

 一番怖いのは、この本が実話だということだ。

 気持ちが沈んでいるときに、この本を手にしてはいけない。

 国立医科大学に9浪。それでもなお挑戦を強いられる。これだけでこの親子関係の異様さが伝わるのではないだろうか。





・・以下ただの感想、ネタバレあり・・

 こういった話を読んだとき、じゃあどうすれば良かったのだろう、と考える。

 もちろん結果論であり、第三者である自分に当事者の仔細なんて分からないのだけど考えずにはいられない。


 今回の場合、母と娘の関係性が起点にある。

 父親は離婚こそしていないものの存在感は薄い。終盤、なぜここまでしてくれるのかと問う娘に家族だからと答えているが、じゃあもっと早く助けてよと感じずにはいられなかった。

 母親の存在が強すぎたのか、月一回の交流では母娘の関係性に気づけなかったのか、はたまたその両方なのか。


 殺人を起こさないことを目標とすれば、母娘を引き離すのが最善だろうと思う。


 この単純な策が如何に難しいかは、再三出てくる家出の失敗が物語っている。

 あかりさん(娘)は幾度となく家出を実行している。計画ではなく実行だ。そのたびに連れ戻されているが、警察に説得されてみたいな生易しいものでは無い。


 毒親に対し、戦わず逃げた方がいいと耳にしたことがあるし、自分もこれを見るまではそう思っていた。どう逃げるかだろうと。

 あかりさんの場合逃げる選択肢は無い。握りつぶされたと言い換えてもいい。正直異常である。とても気持ち悪い。

 終わらせるには母か自分のどちらかが死ぬしかないという思考になるのも頷ける。結果としてあかりさんは戦い、刑務所に入ることとなった。


 母親の執着は娘を医学部へ行かせること、ではないと感じている。

 自分の所有物が反抗してくる苛立ち、子どもが箸で上手くつまめないとイライラしている感じに似ている。できないのを箸のせいにして、最終的に箸を叩きつけてしまう。少なくとも私にはそう見えた。


 もちろん母親も最初は娘の将来を想っていたのかもしれない。

 構成上一方的な視点のみの為、母親や第三者視点ではまったく違った話なのかもしれない。


 それでも私はあかりさんの味方をしてしまう。


 あかりさんは頭のいい人だとも思う。

 テストの点数じゃなくて(点数も凄いけど)自分の得意不得意を把握して対処し、自分で定めた目標は努力して達成している。

 なんなら母親が医学部にこだわらなければ普通に偏差値の高いところに進学して、いい会社に就職してたんじゃないかとさえ思っている。



 なぜ母親があれほど執着したのか分からないし、これから先私が知る機会も無いだろう。ここまで書いた内容は死体蹴りかもしれない。

 けれど娘に死ねと言ってしまえる母親に、お母さんも辛かったんですよね、なんて到底思えない。

 そして母親に悪いことをしたと反省するあかりさんに、洗脳って怖いんだなと思ってしまう。

 もちろん殺人は駄目だと思うが、あの状況で他にどうしろと?と思わずにいられない。強い第三者の介入があれば状況は違ったのかもしれないが、これもまた結果論でしかないからだ。


 あかりさんが母親の呪縛から解放される日は来るのだろうかと考えてしまう。

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