Z世代のホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち

タイトル:Z世代のホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち

作者:青柳貴哉

読書期間:2023/2/22~2/26

媒体:オーディブル




・・本書紹介・・

 人はなぜホームレスになるのか。

 著者はホームレスを取材し続けるYouTuberだ。

 本書は新宿歌舞伎町に集まる10代半ばから20代、いわゆるZ世代のホームレスを追ったエッセイである。

 読み終わったとき「ホームレス」という括りに対するイメージが確実に変わる一作である。





・・以下ただの感想。ネタバレあり・・

 Z世代とは、明確な定義は存在しないが、1990年代後期から2000年代または2010年代初期に生まれた世代を指す。(Wikipediaより)


 本書に登場するZ世代は、自分より少し下の年齢層ということになります。10年も離れていません。でもその考え方や行動原理の半分も理解できないと感じました。

 突き放す意味での理解できないではなく、境遇が違い過ぎてとても理解できたなんて軽々に言えるものでは無い、という意味です。


 彼、彼女らの問題は決してひとつに纏められるものではありません。人の数だけ細分化でき、1人の中でも複雑に絡み合っていると思います。

 そう感じたものの、本書を読んで感じたことを脳内に留めておくことができそうにないので、考えの整理という意味も込めて、ここへ吐き出したいと思います。


 今回の感想は、あくまで本書に登場する4人の事例を読んだ中で感じたものだということをご了承いただけますと幸いです。



 ホームレスになった理由は本書に登場する4人だけでも皆違っています。

 虐待のように分かりやすい大きな問題もあれば、親とのすれ違いのように、小さな歪の積み重ねもあります。


 共通しているのは、その人にとって家が帰りたい場所ではないということ。


 肉体的、又は精神的に安心できる場所ではなく、逃げきた先が歌舞伎町という印象を受けました。

 そこには同じような境遇の仲間がいて、楽しいことがあって、嘘だとしても自分に向けられる愛情があります。自分の価値を確かめることができるのです。

 現実逃避というより、ただ自分が安心できる場所を探したらここだった、といった感じです。もちろん安全ではありませんが。


 今行われているような、未成年に対して「家に帰りなさい」と言って回る行為があまり意味をなしていない理由がそこにあると思います。

 家=安全と考える人間からすれば、危険から逃れるために家に帰るわけです。しかし彼女たちは違います。ここは危険だからと追い立てられたとして、その先も又、別の危険が待っているだけなのです。


 単純ですよね。どちらも危険なのであれば、息がしやすい方が良くないですか?



 もうひとつ、彼女たちは壁を越える手段を知らない、人によってはそもそも諦めているという印象を受けました。


 人は生きていると、困難という壁に当たります。これはすべての人に共通します。

 壁は高かったり低かったり、厚みも越え方も様々です。

 本来であれば、小さな壁から順に越えていき、その方法を学ぶのだと思います。大きすぎる壁に当たった時は、越え方や上手い避け方を教えてくれる人が周りにいるのではないでしょうか。


 それが1つ目の壁からとても越えられる高さではなく、さらに手助けしてくれる人もいない状態なのでは?と思いました。当然、超えることを諦めると思います。少なくとも自分なら諦めます。

 その状態が続くと、いつしか越えるという選択肢すら無くなるのではないでしょうか。ただそこに居続ける状態。それが彼女たちなのかな、と感じました。



 2人目の少年や4人目の彼女のように、気力があれば、まだ戻りやすいのかもしれません。

 歌舞伎町やホームレスが壁を越える手段になっている場合です。別の越え方や避け方を知ればより安全な方を選ぶことができるでしょう。


 しかし、その気力すら失っていたら。周りがどれだけ手段を教えても手を差し伸べても、それを使うことができません。

 そもそも使う必要性すら感じていないのでは?とも思います。

 その状態で家に帰れ、ここは危ないと言われて、誰が言うことを聞くでしょうか。



 この本を読んで印象的だったのは、ホームレスとはなってしまうもの(受動的)であって、望んでなるもの(能動的)ではなかった、という部分です。


 しかし彼女たちは(少なくとも今は)自分の意志でその場に留まり続けています。

 だからこそ、ホームレスとは意外と身近な、自分にも起こりうることかもしれないとも感じました。

 大きな壁に遭遇した時。気力を失ったとき。差し伸べられた手に気づかなかったとき。逃げ道の一つとして、手段の一つとして、すぐ隣にあるのではないでしょうか。


 とここまでつらつらと書きましたが、あくまで本書を読んで感じたことだけです。

 たった4人の事例で、解ったとは言えません。本質は全然違う所にあるかもしれません。すべてを解決することもできないとも思います。


 正直、自分がどうこうできる問題でもないと思います。

 それでも解らないからと切り捨ててしまわないように考え続けたいと思います。

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