第22話 意外な繋がり
七つの属性の精霊と出会ったライ。彼らの奔放ぶりに惑わされながらも皆穏やかに暮らしている庭園の更なる地へと足を運ぶ。もっとここを探索してみたいと思ったが、そろそろ自由時間が終わる頃だ。
「あまり時間がないなぁ…そろそろ行かないと」
「何だよつまんねーな、もうちょっと俺らのところ見て回ろうぜ?」
ライは戻る時間を思い出し、時計を確認する。それを知ったマグナスは、つまらないと引き留めようとした。と、誰かが歩いてくる。
「あー!やっぱここにいたのね、ライ」
「ローラさん!?」
庭の入り口から来たのはローラだった。時間に遅れてしまったと思い込むライであったが……
「今日はもう何も予定がないからそれぞれで一日を過ごていいってパパが言ってたわ」
「えっ!そうなんですか?」
「パパがこんなこと言うのは珍しいでしょ?それだけ言いに来たのよ」
「は、はぁ…」
「それにしても綺麗なところね〜〜アタシもちょっとだけ一緒にいてもいい?」
美しい庭園の景色が気に入ったローラは、少しの間だけライ達と一緒に行動することになった。リーフとシャインは嬉しそうに手を挙げる。
「私も賛成!」
「今日は新しいお友達がいっぱい来てくれて良い日ですね〜!」
ローラも加わり、更に賑やかさが増していく一同。ストームはその輪から少し距離を置いたところで彼らのことを見ていた。
「アイツらいつも戯れて…変な奴らだな」
___
そして夜になり、蛍の光が点滅する。ライとローラは精霊の住む家へとたどり着く。属性ごとに違うモチーフの空想的な家が建っているのが見える。今回はその中心にある全員が使う大きな家に案内してもらった。
「ここは皆が使っている場所よ。いつもは別々の家で暮らしているけど、研究やミーティングなど行う時は全員集まったりするの」
「アンタ達精霊なのに会議なんかするのね」
「細かいところまで言わなくていいから!」
アクアが説明をして、二人を木でできた椅子へと誘導する。窓の外から白い鳥がじーっと覗いている。エンゼル・エンパイアに生息しているらしく、天使のようなふわふわした可愛らしい鳥だ。
しばらくすると、扉が開く音がする。振り向くと黒髪で赤色の瞳をした青年が入ってきた。そして透き通るほど肌が白く、チェーンをあちこちに付けている。
「はい、三分遅刻ですね」
「少しくらい許してくれよー」
黒髪の青年は頭をかきながらかったるそうにウィンドの注意を聞く。
「ん、あいつは誰?」
「彼はシャドウ。闇の精霊よ」
この青年が七つの属性の精霊の最後の一体であるシャドウ。
すると彼の顔を見たライは、口をぽかんと開けたまま固まっていた。
「ライ、どうしたのよ?」
「あ…あっ……」
シャドウもその視線に気づいて、同じくライの顔を見る。沈黙の時間が流れる……
「お前……ライじゃねぇかよ!?」
「!!」
なんとライとシャドウは顔見知りだったのだ。まさかの事実に今度は他の皆が激しく驚いていた。確かに互いの肌は同じくらい白い。二人の関係はどのようなものなのか。
「あなた達、知り合いなんですか…?」
「えっと、まあそうですね。同族で俺の父さんと深い関わりがあって…」
「…と言うと?」
「正式じゃないですけど、義理の兄弟みたいな感じですね。俺はあまりそんなこと思ってないけど…その……久しぶりだね…?」
「久しぶりじゃねぇよ!言わなきゃ忘れてただろ!?」
「痛っっっ!?」
左手で思いっきりライの耳を強くつねるシャドウ。二人は同じ破皇邪族であり、義兄弟のような関係だ。しかしライはあまり彼との再会を喜んでいなかった。
「どうしたんだよライ、久しぶりの再会?なのに喜んでない感じだけど…」
マグナスが喜ばないライの様子を奇妙と感じ声を掛ける。その理由は…
「…だって、
いつも俺に意地悪ばっかりしてたので」
ライは半目でシャドウのことを睨みつける。一方シャドウもあぐらをかいてそれを聞いていた。
「それは本当のことなの?」
「そりゃあほぼ毎日ですよ。俺にイタズラばっかりして母さんによく怒られていたのは覚えてます」
「…」
本人の前で堂々とかつての事を話すライ。さすがにこの空気はまずいと思ったローラは、軽く咳払いをして話題を変える。
「ねぇ、アタシ重い話されるのめちゃくちゃ嫌いなんだけど〜喉乾いたから何かないかしら?」
「あの…ここはあなたの家じゃないんですから」
「いいじゃん♪ほら、何かここの特産品みたいなやつとか」
ローラはうきうきとした表情を浮かべ、何かまた違う名物を見てみたいとウィンドにおねだりをする。精霊達はうーんと首をかしげて考えている。リーフが何か思いついたのか、席を立つ。
「皆さん!もうすぐあの時間じゃないですか?」
「あの時間?」
リーフが言うあの時間とは…?すると精霊達は一斉に外へ出る。いきなりのことにライとローラも困惑する。
「皆どこへ…?」
とりあえず二人も彼らについて行くことにした。
たどり着いた先は、夜の森だ。辺りを見回しても、特に誰かいる気配はしない。しかし精霊達は何かを待っている様子だった。しばらく待機をしていると…
「来るぞ!」
ストームが全員に合図を出す。川の中から光の粒子が集まってきて、それが融合し透明の魚が現れこちらへと突っ込んできた。
「透けてるわよあれ!?」
「こいつがこの場所に出るクリアライトフィッシュだ。二人はそこで見てるといい」
ライとローラは離れた場所で見守る。シャインが光魔法で照らすと、クリアライトフィッシュの姿をよりはっきりと捉えた。なんとこの魚は空を飛ぶことができるようだ。
続いてウィンドが風を巻き起こし、魚の動きをコントロールする。動きが鈍くなったところをストームが電流を流し痺れさせる。
「すごい!皆冷静に…」
「さっきのやかましさとは打って変わって真剣な顔つきね」
ローラはすぐに切り替えて戦闘モードに入る七つの属性の精霊を見てレラの元で配下として活躍しているだけあると見込んだ。
アクアが貝殻の杖を持ち小さな水のかたまりを出現させクリアライトフィッシュに向かって放つ。そして彼女はマグナスを呼ぶ。
「兄さん、あとは任せたわよ!」
「はいよ!最後は俺に決めさせてくれよっ!」
マグナスは両方に刃のついた大きな斧を思い切り振り回し、サイクル状の炎の輪を作りクリアライトフィッシュを切り裂いた。
「よし、完了だな!今日の飯はこいつのバター焼きだ!!」
「ええーーーーーっ!?」
倒した魚をまさかの食料にするというまさかの発想に大きな声で叫んでしまうライ。再び中央の家に戻り、少し遅い夕飯を皆で食べる。
今回はここで獲れたクリアライトフィッシュのバター焼き。透明だった色はこんがりと焼き色がつき、バターの香りが食欲をそそる。
「わ〜〜美味しそう♪皆も呼べばよかったわね」
「すごく贅沢な料理だ!ここでは有名な魚なんですか?」
「そうだな、自然が綺麗なところにしか現れないから、貴重なご馳走なんだぞ?」
マグナス曰く、緑豊かな自然と透き通った水といった条件が揃わなければ見ることのできない幻の魚らしい。だがその性格は見た目に似合わず凶暴だ。
「新しいことがたくさん…!これはしっかり目に焼き付けておかないと!」
こうしてまた新しい発見をしたライは、忘れないように鉛筆を持ち紙に書き出した。きっと精霊との出会いもまた良い経験になっただろう。
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