月の光

遠藤

第1話

壊れていく

危なげな世界が足元から


消えて行く

信じていたあなたとの日々


深い闇の中に一人取り残され


見上げた空は、雲で隠され何も見えないから


伸ばした手に触れることさえも許されない


もう、終わろうか


抱きしめた痛みの冷たさが、指先から全てを奪っていく


このまま凍って眠ってしまいたい


美しく終われるならそれでいい


誰にも気づかれず静かにそっと


心の光が消えてしまえばもう歩いていけないから





何かが見ていた


微かな光が心を照らした


カーテンの隙間から射す光に気づいた


見上げた空から月が自分を見ていた


見つめた月が眩しかった


知らなかった、こんなにも強い光を持っていたなんて


か弱い存在だと思っていた


自ら光ることもできない、か弱い存在だと思っていた


月は言っている


例え光ることができなくても


例えそれが与えられた光であっても


それでも誰かを照らすことができる


それでも誰かに寄り添うことができる


例えどんな心であっても、生きる意味があるんだと


愛してみよう


許してみよう


そして、信じてみよう


鏡に映る自分を


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

月の光 遠藤 @endoTomorrow

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画