第21話 お世話

僕とユキがそんなやり取りをしていることも知らずに、母はユキの母とのお喋りを中断して僕の「排泄のお世話」をすると言い出した。


何となくユキの前でそれは言わないで欲しかったな。僕だってこれまでに色々嫌なこととか、恥ずかしいことも経験してきた。その都度、乗り越えてきたし、開き直って、動揺しないようになってきたつもりだった。


けれど、年の近い女の子とのことは免疫がないんだよね。


「じゃあ、あちらの部屋を使ってね」


ユキのお母さんは別室を貸してくれるようだった。


まさかこの部屋で作業することはないだろうけど、とりあえず助かった。


「ありがとうございます」


母はお礼を言って、僕の車椅子を押して別室で作業をしてくれた。僕は何一つ自分でできないのだから、こればっかりは本当にどうしようもないってわかっている。


でも、「排泄のお世話」だなんて、女の子の前で言われるのはやっぱり恥ずかしいよ。「排泄」なんて、わざわざ言わなくても、ただの「お世話」でいいじゃないか、と心の中で毒づいた。


母は、ユキのお母さんと楽しいお喋りをわざわざ中断して僕の為に動いてくれてる。それはとても有り難いことだとわかっているけどさ……


僕の心の中は結構忙しい。

こんなことにムキになってしまう僕も悪くない。

それに、こんなふうに心が揺れ動くのは、何もないよりずっとずっと楽しい。


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