第7話 定期検診

そんなある時チャンスが訪れたんだ。

『念じれば通ず』ってこういうことがと思うような出来事だった。


その日は、二週間に一度の大学病院の定期検診だった。いつものように母の車で病院に連れて行ってもらった。


僕はご飯があまり食べられなくて発達があまり上手く進まなかった。普通の十七歳の男子よりはだいぶ小さい方だと思う。ちゃんと立てないから身長もわからないし、体重はこの間計ったとき38キロだった。手も足も全然動かないから、筋肉がついてくれなくて骨と皮みたいだ。


そんなだから、母は僕を抱きかかえることができた。僕を車椅子に載せ替える母の負担は少なくて済むという訳だ。悪いことばかりじゃないね。


車から移り、車椅子に座らせてもらって、病院で受付を済ませ診察室に入った。


「キヨトくん、こんにちは」


那須野先生は、いつもの優しい雰囲気で僕を迎えてくれた。先生の表情が見えない分、雰囲気とかオーラみたいのはよく感じることができた。先生は平和でハートが温かな緑色のイメージだ。


先生は僕が産まれた時から診てくれている、と前に母さんが言っていた。先生なら僕の目が見えにくくなっちゃったこと気付いてくれないかな。


「お変わりはないですか?」 


「そうですね。食欲があまりなくて、飲み込んでくれないことが多いので、そろそろ入院で栄養を入れてほしいです」


えーーっ。この間入院したばかりなのに、また入院はやだよ。母さん、余計なことを言わないでよ、と心の中で呟いた。僕の気持ちは全く伝わらなくて、先生と母の間であっという間に入院する日が決められてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る