第1話 公園の散歩道

僕の住んでいる場所は、都心に近いけれど自然が豊かで、歩いて行けるところに大きな公園がある。

母さんはこんな風に週に一度は僕を車椅子に乗せて外に連れ出してくれる。


「キヨト、今日はいいお天気だね」


母さんが穏やで温かな声で僕に声をかけてくれた。


僕は喋れないし、身動きもとれないから、目の動きだけで会話するしかなかった。でも、言ってることは全部理解できてるんだよ。


『公園に連れてきてくれて嬉しい』

『いつもありがとう』

って心の中で念じて一生懸命伝えた。


伝わってるといいけど。


調子が良い時とそうでもない時があるけど、お母さんは僕の微細な動きや変化をキャッチしてくれる。

お母さんは天才だ。


「キヨト、お花が綺麗に咲いてるよ。このお花なんて言うんだろうね」


お母さんは、緑道の脇に植えられた色とりどりの花や草の方を指差して僕に話しかけてくれる。

一つ一つの花の輪郭は分からなかった。見た目には全部ぼんやりとしてて、色がわかる位。


でも、そこに花が咲いてるってことはちゃんと分かるよ。花には一つ一つ違う特別なエネルギーがあって、そのエネルギーを感じることは出来るんだ。


だから、あそこの花とこの花が同じ種類だってことは分かるし、この花はこの感情に近いなとか、そういうことなら分かる。


植物はみんな優しい。圧倒的に優しく何もかもを包みこんでくれる。それに、心の中で会話までできちゃうんだ。


僕は美しい自然の中で心地よい気分に身を任せた。

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