【番外編】 ロシアとウクライナ

「次の話に行く間、ウクライナの問題でも取り上げてみましょうか」

『お、お、ウクライナにも行っちゃうの?』

「戦争そのものには深入りはしないわよ。ただ、歴史的に見てみることはできるわ。ウクライナといいつつもほぼロシア側から見ることになるけどね」

『ロシアに勝てるのかしら? どうなるんだろう?』

 いや、あんた女神だろ。

 そういうのを見通せるくらいの力がないと。


「……どうなるかについては分からないけど、過去の教訓というものはやはりあるわよね。ロシアと戦争する時には出口を考えないといけないのよ」

『出口?』

「ロシアとソ連が周辺国と戦争した時のことを考えてみましょう。例えば日露戦争よ。どうなったかしら?」

 戦場では、大体日本が勝っていたのかな。

「でも、最終的には賠償金も取らず講和したわよね」

「日本がこれ以上持たない状態になったからな」

「フィンランドがソ連と戦争した時はどうかしら?」

『あれね! シモ・ヘイヘとかが大活躍したのよね!』

「でも、結局最終的にはフィンランドはカレリア地方などの領土を割譲しているわね。チェチェンみたいなちっちゃいところでも最初は苦戦していたわね」

 つまり、ロシアもソ連も、戦場では負け続けるけど、無尽蔵の体力で最終的に押し切るわけか。

「日本とフィンランドはうまく出口を見つけて1年くらいで切り抜けた。それと比較すると、ウクライナは出口戦略を誤った感はあるわね。大統領のゼレンスキーにしても、キイウ市長のクリチコも西側で活動してきた人だから、西側の力を信じていたのかもしれないけれど、実際の戦場はユーラシアなのだし、そこまで支援するほど暇も金もないという現状が浮き彫りになっているわ。周辺国もロシアが大嫌いなのは間違いないけど、といってウクライナが好きというわけはないし」

 中東ほどではないにしても、あのあたりも大体殺伐とした歴史を繰り返してきたからなぁ。

 

『でも、ウクライナが負けたらロシアが更にヨーロッパに攻め込むかもしれないし』

「少なくともプーチンの存命中はないでしょう。ロシアが勝ったとしても、ウクライナ相手に青息吐息よ。自分達のエリア外だとアフガニスタンに攻め込んで破滅した実績も持っているしね。アメリカは……撤退したけど一応は勝っているわね。その状況を考えるとこのうえ、更にどこかに攻め込むというのは現実的ではないし、そもそもここまで来たら戦争を終わらせない方が得かもしれないしね」

『どういうこと?』

「勝ちが確定したら、今は仕方なく協力している中国やイランがここぞとばかりにガッツリ見返りを要求してくるでしょ。勘違いしている人もいるかもしれないけれど、中国もイランも自分達のために協力しているのであって、ロシアが勝ったから3人で肩組んで涙を流して祝勝会なんてことにはならないわ。あ、一応北朝鮮もいたわね」

 そうでなくてもプーチンが習近平に配慮しているという話もあるし、な。

「あとは今は戦時経済で何とかだまくらかしているけれど、終わったら経済も低迷してくるはずだしね。そうなるとただでさえ国外では失墜しているプーチンの権威は更に下がるわけだし、それだったら死ぬまでドローン戦を続ける可能性もあるかもしれないわね。終わってないぞ、とね」

 結局、ロシアが戦争するとロシアの事情もあって、長くなる。主義主張にこだわりすぎて長引かせて消耗しきる前に出口戦略も模索した方が良い、ということなんだろうな。


「で、プーチンは逃げ切りそうな状況に見えるけど、死んだ後は現状を続けることも難しそうで、革命再びとなるかもしれないわね。ひょっとしたら、前世紀に続いて変わった主張を取り入れた試験的な国家になるかもしれないわね。本質は変わらないでしょうけれど」

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