第21話

 その言葉に、長身の男も年老いたカラスも不思議そうに首を傾げるばかりだが、細目の男だけはその細い目を更に細めて王を睨むように見つめていた。その視線に気が付いたのか、王は竜の男を見、にやりと笑って無言で従者を見つめ返した。その表情にわずかながら細身の男が眉をピクリと動かした様に見えた。

「……いいだろう。ようこそ、ウリュウメイカ。俺に仕える従者として受け入れよう」

 その言葉に、ほーっと長いため息をついて従者の男は天を仰いだ。

「やれやれ、ようやく従者として認めてくださるわけね」

 こうして新たな仲間が、闇族王の城に加わったのであった。


 予想通りとでも言うべきか、この生意気な従者が加わってから一層城の中はにぎやかになった。

「えー、まだまだボク、食べたりないんですけどぉ〜」

「む……。俺の分メイカに食われたから、もっとおかわり」

 新たな従者も王の相棒ほどではないが、見た目とは裏腹の大食いだったのである。従者の闇烏達が食事の度に怯える生活が始まった。そう、食べたりない時に、自分たちが食われはしないかという心配が湧くからである。

「おまえら、少しは我慢しろ。じいさんたちの準備も大変だろ」

 相変わらず従者の闇烏達を気遣うのは、肝心の主、闇族王のミズミだ。この恐縮する状態に、ますます年老いたカラスは体を縮こまらせていた。

「本当に申し訳ございません……。ミズミ様にまでお気遣いいただくなど、従者として面目ない……」

 そんなカラスに余計な一言を言うのは、主ではなく同じ従者のウリュウである。

「ホントだよ、おじいちゃん。ボクたち従者はちゃんと準備を万全にしないと〜」

「そう言うなら貴様は自分の飯くらい自分で準備しろ」

 即座に王のツッコミが響くが、この従者は生意気に口答えするほどである。

「え〜、だってご飯の準備って大変なんだもん〜。それにお料理そこまでボク上手じゃないし〜」

「あ、じゃあミズミ作ってよ。俺、ミズミの料理食ってみたい」

 またも余計な一言が飛んでくるが、今度は王の相棒のハクライである。

「なぜ城の主である俺が作る羽目になる。お前らしばらく自分の食材、調達してこい」

「それもそっか。ミズミ、一緒に行こう」

「俺を巻き込むな!」

「じゃ、いってらっしゃーい」

「貴様は行け、メイカ」

相変わらず愉快な漫才が繰り広げられて、やはり年老いたカラスは思わず忍び笑いしてしまうのだった。


 やはり今日はそんな平和な一日であった。

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