第31話 代行者確定

「王よ、黄道十二神の代行者が決まりましたので報告に参りました」


玉座に座る王に跪くアスター。


「申せ」


「はい。こちらの十二人が十二神が己の代行者として選んだ人間です」


誰が誰の代行者かは記さず顔を映し出す。


「ほう、中々興味が唆られる顔ぶれだな」


まるで全員にむけていっているやうな口ぶりだが、最初から王の目にはただ一人しか映っていない。


王は気づいていた。


その人間が毎回優勝する星座の代行者ということに。


「続けよ」


「はい」


王の命令で次に代行者の情報を王の頭に神力を使って流し込む。


名前、生年月日、血液、職業、その者の過去。ありとあらゆる全ての情報を一瞬で王は把握した。


「アスター。一人名を偽っている者がいるが、お前もあいつも何故何も言わなかった」


代行者の一人は本名は捨てもう何年も偽名を使って生きていた。それはいいがこの大会でもそれが必要なのかわからない王。


「名前くらいいいかと判断しました」


その者の神も何も言ってなかったので特に気にしていなかった。


なのに王がまさかそんなことを気にするとは思ってもみず驚いた。いつもなら興味ないと誰にも興味をしめさないのに、何故この人間には興味をしめすのかアスターにはわからなかった。


「今からでも尋ねてきますか」


王は必要ないとわかっていたが一応尋ねる。


「いや、必要ない。少し気になっただけだ。お前とあいつが気にしていないのならよい」


手を振ってしなくていいと言う王に、やっぱりなと思うアスター。


「それにしても今回は代行者が結構同じ国にいるな。今まで一度もそんなことはなかったのにな」


王の言った通りその国に代行者が二人以上いることはなかったのに、今回はほとんどかぶっている。一番多いところは四人もいる。


アスターも呼ばれ人間界に降りたとき「(あれ?この国はもう誰かいたはず)」と心の中で思っていた。


「そうだ。今年は少し趣向を変えてみよう」


何かを考えるようにして黙っていた王が急に妖しく微笑む。


その笑みにゾクッとし嫌な予感がするアスター。


「といいますと」


恐る恐る何をするのか尋ねる。


もうアスターには王が何を考えているのかわからない。元々わかることなど不可能だが、このアナテマに関しては六回分の記録を見ていたので王のしようとしていることは理解できていが、今回は趣向を変えると言い出した。


王はある目的のためにこれをやっていると思っていたが違うのかもしれないと思い始めた。


王が何を考えているのかわからなくなった。


「そう構えるな。大したことではない。変えるのは始まる前に代行者のいる国を教える。これだけだ」


王は大したことではないと言ったがアスターにはその言葉をそのまま受け取ることができなかった。


何故なら王が笑っていたから。


王にはきっとこれから何が起こるか視えている。だから、今回は変えたのだ。


「わかりました。開始前に代行者様のいる国を教えます」


何故教えるのか。教える意味は早く代行者同士を戦わせるのなら有効な手だが、今までは代行者の力量を測ってわざと教えていなかったのに今回はそれを測らなくていいのか。


王には何が視えていて自分には何が視えていないのか。


これ以上考えても自分の頭では答えに辿り着くことはできないだろうと諦める。


「では、私はこれで失礼します」


「ああ。後は任せたぞ」


「はい」


王に一礼し広間から退出する。



ジュゴラビスの代行者が決まってすぐ広間にきたのでアナテマ開始まで残り二日。





アナテマ前日各神と代行者の様子。



牡羊座


「ルーカス。明日だが大丈夫か」


「ああ。問題ない。心の準備はできている」


「そうか」


「ああ。クリオフの方こそ大丈夫か」


「ああ」


二人共明日から神と人間を殺さないといけない為空気何重い。


お互いそこから何も話さず一人になり朝まで過ごす。



牡牛座


「タウロス様。準備できました」


「ご苦労様テオ」


頭を撫でテオを褒める。



双子座


「デュイ、ディモ。ついに明日だね。僕今から楽しみで眠れないよ」


デュイはジャックに罪悪感を覚えもう顔を見ることが出来なくなってきた。


「デュイ。どうしたの」


デュイに抱きつく。



蟹座


「なぁ、俺が勝ったら約束守ってくれよ」


「わかってる」


子軒はある写真を手に持ってずっと眺めていた。



獅子座


「おい、人間早くしろ」


「はい、ただいま」


レオンにむかつきはするが自分では倒すことができないので笑顔を貼り付け酒を持っていく。


もはや、代行者ではなくパシリになっている。



乙女座


「ローズ」


「何?」


「明日がアナテマだけどわかってる?」


「もちろん」


パルティノの代行者に決まってからずっと協力者集めのため男と毎日会っている。



天秤座


「姫。何してるんだ」


「うーん。ちょっと待って」


パソコンを使って何かしていたりずっと電話したりしてジュゴラビスを空気扱いしていた。


「明日がアナテマ開戦日ってわかってる」


「うーん」


自分の用事で頭がいっぱいの姫。



蠍座


「おい人間。わかってると思うがしくじるなよ」


「わかってる」


二人は協力者という空気とは程遠い異様な空気に包まれていた。



射手座


「アネモネ、これ美味しいね」


「本当ですか。よかった」


トクソテスの為に買ってきたケーキを一緒に食べドラマを見た。



山羊座


アイゴヌルスが神力で作った雲のベットにお互い気持ち良さそうにずっと寝ていた。



水瓶座


「ヒュドロコオス様。明日はどうしますか」


「何もしない。いつも通り過ごせばいい」


「わかりました」


十一神の神の特徴や力をもう一度復習しこれからのことを話し合う。



魚座


「蓮、蓮、助けてくれ。早く早く死んじゃう」


一人慌てるイクエス。


「イクエス様。どこ行ってんの。何でそこに」


対戦ゲームで一日中遊ぶイクエスと蓮。



明日がアナテマ開戦日だというのにほとんどの者がいつも通りに過ごしていたが、一人の代行者以外は皆平静を装おうと必死だった。

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