第2話 首相の憂鬱

西暦2030年4月 アルノシア公国 首都アルズ


 大都市アルズの東部地域にある、公国政府首相官邸。そこは『コンクリートパレス』の名称で呼ばれており、建国から30年も経たない新興国たるアルノシアの国家運営を支えていた。その首相執務室では、国政の最高責任者である水野祐大みずの ゆうだいが閣僚を集めて会議を開いていた。


「近年、ベーダ大皇国がラーティニアと我が国に対し、不当な条件で通商協定の改訂を求めてきている。加え、東のモルディア諸島の非武装化と中立化も求めてきている…余りにも分かりやすい、アドラ海を狙った侵略の序盤だ」


 大陸アティリアがあるこの世界は、地球由来の技術流入に伴い、捜索・活動範囲が急速に拡大。複数の地域との接触も進む様になった。その中で新たな関係を有した国の一つが、アティリアより南東の位置にある大国、ベーダ大皇国である。


「あの国は以前より、版図拡大に積極的だからな。経済も、インドやアフリカの先進国との貿易で発展しているし、軍事力も同様だ。よって今の期を見て脅迫を仕掛けてきたのだろう」


 地球世界にとって、この『新世界』は経済市場拡大のまたとない好機であった。よって技術水準に大きなブーストがかかって急成長した国々は多い。敗戦国であるラーティニア帝国もその一つであった。


「モルディア諸島は豊富な海底油田と、食料問題を解決できる程の海産物がある、有力な資源地帯だ。我が国もここを開発している関係上、ただでくれてやるつもりはない。適度に言い訳をつけて突っぱねるぞ」


「はっ…!」

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