第12話:誰コラおじさん登場

今日も配信やっていくか~と思い、REALTYにログイン

せっかくなので色んな配信を観に行くことにした


かにゃりーさんが入室しました


「来てくれてありがとう。江差追分ってご存知?」


かにゃりー:なんですかそれは?


「民謡歌になるんだけどね、東北や北海道の方で大会があるんだ」


かにゃりー:そうなんだね


彼女の名前は『年譜音響(ねんぷおとね)』という名前で、小柄な黒髪のロングヘア-な髪型をしていた

可愛らしい声から発せられるため、おそらく私と同い年くらいのビギナーと思われた


話を聞く限りだと音楽の授業に自信があるらしく、とにかく歌声も綺麗

ソイッ、ソイッと言うのが江差追分では特徴的で、全国大会というものもあるらしいのでYoutubeなんかで、リアルライブ配信をやりつつも、そこで優勝を決めたりもするらしい


ただ年譜音響の話によると、今年は審査員が素人だったらしくどうやら入賞を逃したらしい

個人的には年譜音響の歌声が一番個人的には印象に残ったため、それを伝えると凄く喜んでくれた

彼女はいわゆる民謡歌ライバーとして活動をしていたのだ


次にビギナー枠回りをしていると髪の毛が緑色の女の子の配信があったので、そこに出向いてみた

すると今度は釣りゲームをやっているみたいで、そういえばREALTYって釣りゲームやれるんだなと思った

私は正直釣りゲームをやっている実況しか見たことが無く、自分でプレイしたことはなかった


「良かったら一緒にコラボしてやってみる?」


初めてコラボに誘われた

彼女の名前は『緑茶の家元』なのだが、とにかく緑茶が好きなので髪色も緑にしているらしい

彼女は自称16歳のJKと名乗っていたが、仲良くなるにつれて実は私と同じ女子中学生だったことが判明

ちょっと大人びてみたかったということからも、意気投合したのだった


「釣りってすごく難しいね」

「私も初めてやってみたんだけど、全然わからなくて」


正直REALTYの釣りゲーム自体は全然面白くなかった

どちらかというと海上で釣りなんかせずにダンスするほうが面白いぐらいだった

だけど、こうやって雑談だけでなくゲームなんかでも相手と対話出来ることが楽しかった

普通にお話しできない人だって世の中にはたくさんいる

だからこうして非言語的コミュニケーションはとても大切であると感じたのだ


そのままゲームを辞めて緑茶の家元とコラボを続けていた

特に相手がイヤホンなど使っていなければ声がハウる(ハウリングして音響)も特に感じられなかった


佐藤固すぎさんがコラボに参加しました


「え?」


突如誰かが入室してきたからびっくりした

緑茶の家元はどうやら初期設定、誰でもコラボ参加にしていたみたいだ

だから香奈梨がコラボ申請した時もすぐにコラボ参加出来たというわけか


「こんにちは~」

「おう!こんにちはじゃねえだろボケカスが!!」

「!?」


私は一瞬REALTYCONで出会ったあの40代後半の見た目をしたハゲおっさんが仕返しにきたのかと思った

だけど声が明らかに違った

声の感じからしておそらく30歳手前ぐらいだ


「あなた誰ですか?」

「おう俺か?俺はな、このREALTYでひたすら誰でもコラボをやっているおじさん『通称:誰コラおじさん』ってものだ」

「誰コラおじさん!?」


そういうことを趣味にしてる人がいるんだな~って思った


「ところでおじさん結構お酒飲んでるの?」

「ああ、だいたいお酒飲んで酔っ払った状態でコラボするんだけどな」

「来てくれてありがとう~」

「ありがとうじゃねえわボケ!!」

「えぇ・・・?」


お酒に酔ってるせいか口が悪い状態だ

身長は低めで青いアフロヘア、目に関しては半月状態で身長が低い割にあごひげが凄い感じのアバターだ

衣装に関してもいかにも初期アバターという感じで、完全にこの人はガチャなんかは引いていない状態だ

しかしそれにしてもフォロワー2,000人越えはすごいな・・・ちょっと私は聞いてみることにした


「それにしてもおじさんすごいね。2,000人もフォロワーがいるじゃん!!人気者なの?」

「ああ、これはな俺がコラボしてひたすら暴言吐いたりするんだけど、それを何故か面白がるのか知らんが、フォローされたわ

まあなんていうかそういう変わり者がいるというかさ、普通俺みたいな変なおじさん来たら即効ブロックだと思うよ?」

「おじさんは配信とかしてるの?」

「いや基本的にはコラボしかやらない。どうせ俺みたいなしょぼいおっさんに投げ銭するバカいねえからな」

「なんか出だしは口悪いおじさんだなって思ったけど、結構おじさん面白人なんじゃない?」

「まあそういう人もいるな、俺はだいたい女子中学生や女子高生相手に暴言吐きまくることが多い。このSNSの世界は怖いからな。こないだなんか俺がひたすら誰コラで女子中学生ライバーを暴言や怒鳴りまくりで泣かせてやったらさ、突然その娘の父親が現れてさ、今度は俺がその親父に怒鳴りまくられて、俺が涙目になった時はマジでびびったよ・・・」


とんでもないことをしてるおじさんもいるもんだなーと思った

とりあえず誰コラおじさんはそのままコラボ退出していったので、その後緑茶の家元と二人で会話していた

私達にとって忘れることのできない誰でもコラボエピソードとなったが、後に発覚したのは、その誰コラおじさんはREALTYアワードの中で、最もコラボした回数と時間ランキングで総合優勝していたのだ

何かに特化した人物ってやっぱりいるものだなと感じるけど、このメタバース世界は奥が深いなと感じた


REALTY攻略サイトによると、ビギナー期間というものが配信始めて4日間しかないらしく、それ以降はビギナー枠に掲載されなくなる

そうなると自動的に入室者は0に近くなることから、こうやって枠周りをしながら自分を売り込んでいく

意気投合すればお互いに入室しあえば、誰かが自分の配信にいてくれるという安心感が生まれる

これがまずビギナーが最初にすべき行動であり、とにかくリピーターを増やすということ

特に無名であればあるほど、なおさらどういう配信者なのかをPRするためにはプロフィールにも工夫を加える


例えばアニメの話や漫画の話は意外と同じ趣味を持つ者同士にとっては話が弾みやすい

自然と他の入室者も会話に参加しやすいことからも、固定リスナーが出来上がるまでにやるべきことはまずはリピーター確保

そのための共通の趣味を探し、そして次のステップへと進んでいく

簡単なようでこれが意外と難しい、なんせ無課金者が出来る精いっぱいのことはこれが限界だからだ


ひたすら枠回りをしてフォロワー稼ぎをする人もいれば、ケーキ交換・課金をすることにより相手に来てもらえるメリットを感じさせることもできる

だけどそれは見えない『壁』というものが存在し、いつかは縁が切れやすいものにも繋がり、そうでなくとも何かと人間関係トラブルにもなりやすい

類は友を呼ぶということもあり、変なリスナーは変なリスナーを招きやすいので、そういったものは速やかに排除しなければならない


私はまだまだライバーとして始めたばかり

まずは自分にあったリスナー様を増やしていくことから始めていくとしよう

そのためには、こういったコラボ配信なんかも活用していこうと、そう感じたのだ

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