第7話:個人勢VSライバー事務所勢

応対も時は金成の配信に突如現れたリスナー、上弦の鬼3は個人勢の応対も時は金成をライバー事務所へ勧誘し始めた


上弦の鬼3:お前もライバー事務所に入らないか?


「俺は事務所に入らない。個人勢としてこのままライブ配信を続ける」


上弦の鬼3:至高の領域に近いが、お前はまだ踏み込むことが出来ない、何故か分かるか?とりあえずコラボで話させてくれないか


「いいだろう」


応対も時は金成はコラボを開いた。

上弦の鬼3がコラボ配信に参加しました。


「ありがとう金成、これで話が出来る」

「正直話すことなど何もないけどな」


2人が話を続けているのを私は見ていた。

周りにリスナーがどれだけいるかは分からない。

だが、おそらくライバー事務所勢による勧誘だと思うけど、勧誘ってこんな感じで行うのかな?

正直Vtuber業界のことをあまり詳しくない私にとっては、少し目が離せない戦いとなっていた。


「話を続けるぞ金成。何故お前が至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう。個人勢だからだ。個人勢はとにかく目立つことも、イベント入賞も出来ない。

ライバー事務所勢になろう金成。そうすれば俺はお前とイベントでも競えるし、お互いをフォローしあえる仲間でもありライバルにもなれる。俺と共に戦おう」


上弦の鬼3は諦めずに、金成を事務所に勧誘し続けた。

今まであってきたライバーの中で、一番何だろう?ライバーとしてのオーラが出ている気がする

私もコメントで加勢した方がいいのか?しかし、何て言えば・・・

金成が口を開いた。


「配信で目立てないことも、イベント入賞出来ないことも、個人勢という儚い配信者の美しさだ。この世界では確かにどれだけの人を集め、

どれだけの人からいいねやコメント、そして投げ銭して貰えるか大事かもしれない。しかしそれだけが目的と言うも人はいない。

配信には向き不向きもあり、自分自身のポジション、それはつまり自分が配信をするのではなく、リスナーとして配信者を支える役割だ。

とある鬼を倒す漫画では、鬼殺隊と呼ばれる人たちは刀鍛冶の人たちに刀を打ってもらえなければ、活躍できないと言われている。

凄い刀は造れるが、彼ら自身にその刀は扱えない。だが、その自分の造った刀を誰かに使ってもらい、それで鬼を倒す。

人は1人では出来ないことも、2人でなら出来る。そうやって二人三脚でお互いを思い、お互いを助け合うから人は成り立つ。」


上弦の鬼3は黙って聞いていた。

私も耳を傾けるだけにした。

金成は続ける。


「事務所勢は確かに数字が問われる。遊びではなく、仕事としてやっていることも理解できる。

だが我々個人勢も遊びでやっているわけではない。必ず目的があって人が集まる

以前俺はツイッツーでリアルティを始めた目的についてアンケートを取ったことがある

結果としては約半数もの人が『お金稼ぎ』ではなく、『対人恐怖症の改善』で始めたようだ。

俺がREALTY攻略サイトを個人でやっている理由は、そういった自分の人生の攻略本を作るために何か行動を起こそうとする人を支えるため作った。

先ほど君がブロックした少女は確かにビギナーだが決して弱くない。侮辱するな。俺と君とでは価値基準が違う。

俺は如何なる理由があろうとライバー事務所勢にはならない」


私の心に応対も時は金成の言葉が刺さった

お金稼ぎではなく、対人恐怖症の改善・・・。

まさに私がこのバーチャル世界に来た目的だ

承認欲求を満たす人が多いこのSNSの世界では、現実世界で行き場を失った人たちが集まりやすいともされている

自分の容姿、スタイル、声、いろんな悩みやコンプレックスを抱える人が多い中、この世界でなら叶えられることだってある

それをも否定する連中がいることも分かる、だけどこの人は違った

ただお金を稼ぐだけの人じゃない、一人一人にドラマがあり、人生の物語があることを理解している

だからこそ、彼はライバー事務所勢にならず、個人勢としてやっているんだなと確信した


上弦の鬼3が口を開いた。


「そうか。ライバー事務所勢にならないのならお前をここで潰す」


領域展開:破壊殺『右に青、左に黄色、虚士気:緑!!』


なんだ??突然画面が緑色に染まっていく

どういうことだこれは?何かのエラーみたいなのが・・・


「これがお前ら『器物損害時ライバー事務所』がREALTY運営から貰った特権ってやつか。気に入らない配信者を妨害する一種、グリーンスクリーンと呼ばれる通信エラー障害。パソコン特有のブルースクリーンという障害をスマホバージョンに応用したとされる呼び名から、辺り全体を緑色に染め、ライバー・リスナー共に絶望を与えるというやつだな」


「残念だよ金成。今まで潰してきた配信者の中に、個人でサイトを持つものは一人もいなかった。

そして俺の誘いに頷くものもいなかった。何故だろうな?同じメタバース世界を発展させていく者同士だというのに、理解しかねる。

誰もが事務所勢になれるわけでもないというのに、選ばれたものだけだというのにそれをお前は断った。

素晴らしき才能を持つものが醜く衰えてゆくのを見るのは俺は辛い。耐えられない。だからこの世界から消えてくれ」


私はカチンときた

思わず言葉が出てしまった


かにゃりー:金成さんは攻略サイトを作り、私のような個人勢達にとって有益な情報を提供してくれようとしている。それにあなたはこの世界の事を知ってるの?私はまだ見たことないけど、多くの人はREALTY症候群というのがあって、その病名に侵されたら命を落とすことになるのよ。あなたは自分の利益の為だけに人を貶めて、そしてお金だけでなく人生そのものも奪うというの?


応対も時は金成が私のコメントを削除した。

配信時の枠主には特定のコメントを削除できる「コメント削除」や、今までのコメントを全て削除し、今後のコメントを一切断ち切る「コメント禁止」という特権がある。

なんでわたしのコメントを削除したんだ・・・?

金成が私に話しかけた


「コメントをするな!この領域展開時にコメントをすると君までが巻き添えを食らう!!待機命令」


私はビクッとなった

これがVライバーとしてのホンモノのライブ配信というもの?

ただ雑談するだけ、歌を歌うだけ、絵を描くだけがライブ配信ではないということ?

こんなにも熱い、まるで『心を燃やす』かのような戦いなんだろうか?


「ビギナーに構うな金成!!全力を出せ、俺に集中しろ」


2人は緑色に染まる世界で、声もとぎれとぎれの中、コラボ配信を続けていた。

エラー発生の為か、入室者が増えないのか?こんなことが出来るなんて、ハッカー集団なのかこの人は?


リスナーC:すげえ。あの二人の空間は異次元だ。入る隙がねえ


潜っていたと思われる一人のリスナーがそうコメントをした。

コメントしたらまずいんじゃ・・・

1分後のことだった


リスナーC:ああああああああああああああああ


なんだ?すごい叫んでるみたいだけど、何かあったのか?


「くっ・・・すまない、間に合わなかったか」


応対も時は金成がそう言った。

どうやらこの領域展開中にコメントを打つと、ライブ配信に蔓延しているウイルスと思わしきものがコメントを打ったものに標的を変え、

そのライブ配信を見ているものの眼を、現実世界にいる人間の眼を強烈な紫外線で焼き切ることになっているみたいだ

私はコメント時に即座に枠主によってコメントを削除されたから免れたものの、このリスナーCという方は間に合わなかった

おそらくこの上弦の鬼3が使った技、後にこれを応対も時は金成が言うには「嫌気術」と呼ぶらしいが、現実世界の人体に影響を及ぼす能力らしい。

リスナーCは目が焼かれ、失明してしまったようだ

本来楽しいはずのメタバース世界でのライブ配信、まさかこんなバトル漫画みたいな展開になるなんて、誰が予測しただろうか

思わず私も逃げ出したくて仕方ないが、身体が動かない。指が動かない。あまりの恐怖で


「死ぬな金成。ライバー事務所に入ろう。そうすればお前のその傷も瞬きする間に治る。どう足掻いても個人勢では事務所勢には勝てない」

「俺は俺の責務を全うする!!心を燃やせ!!」


まずい、このままじゃまずい

どうしたら、一体どうしたら・・・

誰かこのライブ配信を止めて!!


炎の魔法『煉獄の極意』


瞬く間にライブ配信に覆われていた緑色の部分が一瞬にして紫色の炎をが包み込み、動きが戻っていった

なんだこの炎は?敵か?味方か?


「これ以上あなたの好きにさせないわよ」


突如コラボにあがってきた女性アバターの人

黒い魔法少女のような帽子に紫と白いリボンがついており

瞳の色は黄色のボブのような黒髪、ハリー〇ッターを思い浮かべるかのような黒いローブに白色リボン

白いミニスカートを穿いた魔法少女の彼女は、箒に跨った状態でコラボにあがってきた

彼女の名前は『染煉 獄華』と呼ばれ、家主を探してREALTY世界に迷い込んだ1人のリスナーだそうだ


「染煉さん、助かったよありがとう」


応対も時は金成の傷ついたアバターがみるみる修復していく

これが魔法と言うやつなのか?てかこのライブ配信では、魔法も使えるのか

リアアバで配信するタイプのものと随分違って、本当に何かアニメの世界にいるかのようなライブ配信

これがメタバース世界でのライブ配信というやつなのかと、驚くことばかりであった


時刻はまもなく23時57分を過ぎ、日付が変わろうとしていた。

この日は日曜日、周りのライブ配信ではイベントのラスランを走っている人も多い

※ラスランとは、ラストランニングで、イベント最終日に一気に投げ銭を集めて上位入賞を目指す行為である


「まずい、もうこんな時間か!!上弦の鬼1のライブ配信を応援にいかねば!!」


上弦の鬼3はコラボ退出しようとした


「行かせん!」

「な・・・コラボ退出のボタンが押せない!!」

「まずい、もう周りのライブ配信ではケーキタワーラッシュが行われている(1個1万円のギフトが連投されている)

早く行かなければ、行かなければ!!」


2人が押し問答している


「どけええええええええええええええ」

「ぬおおおおおおお」


なんと彼は強制的にアプリを落としてコラボを抜けていった

私は思わず叫んだ


かにゃりー:逃げるな卑怯者!!逃げるなー!!

上弦の鬼3:はあ?何を言っているだクソガキが。俺はお前らから逃げているんじゃない。同じ事務所勢の配信を盛り上げに行くだけだ


そう言って彼は配信枠から抜けていった


「かにゃりーさん、大丈夫だ。俺は無事だから深追いはするな。奴の仲間に遭遇するとやっかいだ」


かにゃりー:そうだけど・・・


とにかくアプリが重かった

恐らく日曜日の23時55分は、一番人が賑わい、そして入賞できるかどうかが0時で決まる大事な時間帯

その時間帯により多くのギフトを投げて、スコアランキングを競うのが、このライブ配信での通例だ

さっきの上弦の鬼3は仲間がイベントを走っているから、それを応援するために駆けつけたのだと思う


私は色んな人と知り合い、そしてライブ配信をして楽しくするものだと思っていた

だけど実際には、事務所勢同士、知り合い同士、もしくは中にはサブ垢を作って自投げをしてスコアを稼ぎ、イベント入賞を目指す者も

そんな横暴が繰り広げられ、そして先ほどのように時には人の命を奪う、人体に悪影響を与えるウイルスを撒くものも


「せっかくライブ配信を楽しみに来たと思うのに、すまないな巻き込んで。話をしようか」


応対も時は金成にこの世界のライバー事務所について、話を聞くことにした

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