からだつきについて

ゆきのともしび

からだつきについて

わたしのからだはちいさい。

鏡をみるとそこに映っているそれは、まるで中学生のようで

頼りなさと、ふがいなさと、ほんの一握りの安堵を覚える。


わたしは女性のからだを、日ごろよく眺めている。

外で目にする衣類を纏ったからだと

公共浴場で目にする、衣類を身につけていない剥き出しのからだを。


厚みのある二の腕と、蠢くように揺れるふたつの乳房

なだらかだが起伏のある下腹部と

膨らみと張り、あるいはかなしくうなだれたような太もも。



それらは単なる、たんぱく質のかたまりではない。

わたしはそのからだを目の当たりにしたとき

高揚感、くらむような眩暈と同時に

目を背けたくなるようなにがみを感じる。



そのからだの内側には、なにが宿っているのだろう

その肉の厚みには、なにが孕んでいるのだろう


湯舟につかりながら、普段みられないからだをじっとりと眺めながら、考える。



厚みがあるほど、源泉が多く存在するのだろうか。

ふくらみがあるほど、生のエネルギーが豊かに存在するのだろうか。


お湯の中の、自分のからだを眺める。


わたしのからだは、いったい何ができるのだろう。

いままでなにを、してきたのだろう。



このふくらみや、肌や、うつくしい曲線たちは

男のために、女のために存在しているのではない。



わたしは風呂を出て、鏡の前で、からだをながめる。

ちいさくそれぞれ異なる方向を向いている乳房と、のっぺりとした腹部、

育ち損ねたようなお尻と、なによりも気まずそうな腰。



ああ。


そこには生きようとするいのちと、

なにかを必死にうったえるたましいが 透けて見えた。



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