山の足音

ツヨシ

第1話

友人と二人でキャンプに行った。

適当なところに車を停め、川のそばで始めた。

キャンプ場ではない場所だ。

「ここでキャンプして、怒られないかな」

「こんな山の中に、誰もこないさ」

と友人。細かいことは気にしない。

友人のいいところであり、悪いところでもある。

テントを張り釣りをし、バーベキューをして酒を飲む。

あとは二人でしゃべる。

たわいもないことを。

すっかり日が暮れて、あとは寝るだけだ。


うとうとしていると、音がした。

「うん?」

友人も気づいたようだ。足音。

ただそれは人間のものではない。

かなり大きく、重量を持つものが歩いている音だ。

そいつが歩くたびに、小さく地響きまでおこる。

それがこちらに向かって真っすぐに歩いてくるのだ。

そしてテントの入り口の前で止まった。

恐る恐る入り口の隙間から外をのぞいたが、月明りの中、そこになにも見ることができなかった。

すると友人がテントの入り口を開け、その辺りを懐中電灯で照らした。

――おいおい。

思ったが友人は懐中電灯の照らす先を、じっと見ていた。

しかし、なにもいなかった。

友人が懐中電灯を消し、入り口を閉めた。

すると、また重い足音がした。

それはテントからゆっくりと遠ざかっていき、やがて何も聞こえなくなった。

その間友人と俺は、全く動くことができなかった。


明るくなって外に出ると、そこには大きく丸い足跡が残されていた。


       終

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

山の足音 ツヨシ @kunkunkonkon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ