運命の一曲

重なり合う二つ



バーベキューを終えて、集合写真を撮って。

今日の校外学習は終了だ。


バスに乗りこんで、学校へと戻る。



「……」

「チッ」



俺の顔を見るやいなや舌打ちをする翔真。

帰りのバスで、席が隣でなくて心底助かった。


明らかに機嫌が悪い。

あの状態の彼には、触れない事が一番だ。


何が原因で“発火”するか分からない。

爆発寸前――そんな感じ。



「ねぇ聞いてよ陽! 美咲がさぁ、いちいち火にビックリしてて〜」

「そうなんだ、意外な弱点だね」


「……ちょ、やめて、よ……」

「わっ美咲寝言言ってる、可愛い〜」



俺の隣、眠った彼女の頬をツンツンと触る真由。

基本真由は美咲と一緒にて、いつもベッタリだ。


今だって補助席で美咲の隣に来てるし。


ぶっちゃけ俺はもちろん……翔馬達二人にすらあまり興味が無いように思える。



「泰斗も翔馬も全然出来ないし〜男として情けないよね〜」

「うわっ、ちょ——」


「……」



で、火種に油をぶち込むのが真由だ。


危ない危ない、反応が無いって事は寝てるんだな。

今の翔馬なら間違いなく怒鳴り返しているだろう。



「あれっそういや陽って別のとこ居たのか~」

「はは、違うグループだよ俺は」


「あぁだよね〜」

「そんなに存在感無かった? 俺」


「うん、居なくても居ても一緒〜」

「ははっ。真由って中々キツい事言うね」


「事実じゃん〜」

「……うん、そうだね」

「ちょっマジ凹みしてんじゃん。ウケる~」


「——ん、ぁ、寝てた?」

「あっ美咲起きた〜! おはよ!」



分かりやすく表情を変える真由。

本当に、俺には興味が無いんだと分かる。



「……このブランケット、誰が……?」


「え? あぁそれは俺——」

「ッ! 私、私がやったの〜!」


「え?」

「あ、あぁ。そうだね、真由が掛けてくれてたよ」

「そうそう〜!」

「……? ありがとう真由」



本当は俺だけど、割り込んだ真由に合わせる。

これもいつもの事だ。


俺だと主張したら、多分彼女の機嫌もマッハで悪くなる。



「ねぇ美咲、今日部活あるの〜?」

「え? 今日は無いよ」


「どこか遊びに行こ〜!」

「え、あー。どうしようかな……」


「カラオケとかどう〜?」

「! あ、カラオケ行きたいかも。『スーカラ』って駅の近くにあったよね」


「あるね。行く?」

「うん!」

「やった〜」



普段は遊ぶのに消極的な美咲だけど、今日は乗り気だ。

いつもは真由や泰斗、翔馬に積極的に誘われて行く感じが多いから。


珍しい、何かあるのかな。



「その時間人多いか分かんないし、一応予約しとくよ」


「よろ〜」

「あっごめんね、ありがとう陽君」


「いえいえ。歌うの好きだったっけ美咲って。珍しいね」

「あはは、うん、まぁそんな感じ……?」



歯切れが悪い、何か隠してるな美咲。

言及はしないけど。



「人数は普段通り――五人だよね」



この三人と、翔馬と泰斗。

五人の予約を申し込んで、予約を完了させた。




鈴宮視点




バーベキューを終えて、長いようで短い校外学習は終わり。

帰りのバスは、思いっきり熟睡してしまいました……。


相手が誰であろうと、初対面の人と話すのはとても疲れますね。



「手際めちゃくちゃ良かったよね」

「いかにも遊んでる感じやし、慣れてるんやろな……知らんけど」

「住む世界が違うってああいうの言うのかなぁ」

「」コク


「ただ、まぁその……ホストに行く奴の気持ちが、ほんの少しだけ分かったわ」

「何言ってるの愛花ちゃん(真顔)」

「じょ、冗談やって」


「」ジトォォォ

「や、やめーやヒメ!」



学校に着いたバスから降りて、後は解散。

今日の感想を書く宿題はあるけれど——そんなのすぐに終わるから、実質無いに等しい。


軽い足取りで、三人で校門から出て帰路に着く。



「えへへ、今日は早く帰れて嬉しいね〜」

「せやな〜バスでめっちゃ寝てたから変に力が有り余っとるわ」

「うん」

「」ギンギン

「ヒメはなんか怖いで……」



横の二人もよく寝ていたから、そんな感じはしてたけど。

本当に私は運が良くて——この二人みたいに、とっても気が会う親友が出来た。


おそらく二人は、今私と同じことを考えている……はず。



「なんとなく、このまま帰るのもったいないね」

「せやなぁ……」


「みずきは今日は塾ちゃうんか?」

「休み! 夏休みいっぱい行ったからね」

「ええな。ヒメは暇かー?」

「」コク

「おっ、じゃあちょっと付き合ってほしいとこあるんやけど」

「?」

「なに?」



そう言って、彼女はスマホを取り出しポチポチと操作。

映し出される色とりどりのそれ。



「これや、今『大マジ』がコラボやってるみたいでな」



『大マジ』……正式名称を『大マジですか? 王子様!?』。


このイケメンさん達は、作品内で登場するキャラ達だ。

主人公が国の王子達に求婚される作品で、笑って泣ける神作品で。

特に第二王子がヤバい……らしい。愛花ちゃん情報ですが。


私はまだ見れていません、時間が空いたら見てみたいですね。



「えっこれカラオケ?」

「せやで、色々コラボメニューもあるし。なにより三人の限定缶バッチが手に入るんや!」

「なるほど……人数居るとその分いっぱい手に入るんだね」


「確率で行ったら三分の一やな」

「うわぁそれ三人で行けってことだね」


「そーいうことや! ってわけで頼むで、みずき歌うの好きやろ?」

「ま、まぁうん……下手だけど……」


「ヒメっちは歌わんけどタンバリン叩くの好きやもんな」

「」コクコク



愛花ちゃんのスマホの画面、アニメのイケメンさん達が笑うそれ。


ホントに彼女はその作品が好きだよね。

漫研でも同士? が結構いるらしく、描いてる絵は大体それ絡み。



「よっしゃー!! これで限定ゲットや!」


「あはは」

「」ウキウキ



もう。そこまで喜ぶのなら、カラオケが好きじゃなくても行ってあげるのにね。

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