第5話 女同士の視察戦

『きゃーーそんなに怒らないでよ〜』

ルミナスは大袈裟にわざとらしく怯えた。


『揶揄わないでください!あなたは何者なんですか?!』


『んーさっき言ったじゃない、美人大魔法使いルミナスお姉ちゃんです!!』


『そうじゃなくて、もっと詳しく』


『あーそういう事ね。そうね、私は200年前に活躍した魔法使いよ。それで、このダンジョンの50階層に居るボスを倒そうとしたんだけど、逆に私が倒されかけてね、それで最後の力で私の思念を乗せた杖をここ12階層まで飛ばしたの。シドくんもここに来る前に大きな渓谷?みたいの見たでしょ。あれはダンジョンの中心で、1階層から50階層までをくり抜く大きな吹き抜けになってるの。そこを通して杖をここまで投げ込んだわ。ま、その後そこから今まで200年ぐらいここに居たわね』


『へーそうなんですか』

彼女の話し方を見ると魔女と言うより教師みたいだ。図とかを出して説明してくる。

(前世の学校の授業みたいだな)


『あーシドくん真面目に聞いてない!!そっちが聞いてきたんでしょ!』

すこし怒らせてしまった。よく見るとメガネを掛けているので尚更教師っぽい。


『あの、ルミナスさ……』

『ルミナスさんじゃなくて、ルミナスお、ね、え、ちゃ、ん!!』

(細かいな)

いちいち細かいのも教師っぽい。


『ルミナスお姉ちゃん?のことはわかりました。で、どうやったら意識戻してくれますか?早く帰りたいいんですけど』


『え。帰る?なんで!?こんな綺麗なお姉ちゃんを置いていくの?なんで!!』』

急に涙目になりながら僕の足に飛びついて縋って来た。


『お願い!!捨てないで!!もう一人は嫌なの!!お姉ちゃん呼びが嫌だった?こんな太っちょなおばさん嫌だった?うわわわわわあああんんん!!』

ガチ泣きし始めた。少し可愛い。


『いや、わかったから!!まだ捨てるとは決めてないから。ね、泣かないでください』ひとまず安心させないと。


『本当?ううう』

(単純な人だ)


『その、まあ、貴方が僕にとって役に立つて証明できたらですけど』

(あの吸血鬼の時みたいに助けても何もないようじゃ嫌だしな)


『役に?……わかったわ!!私のスキルを貴方にあげるわ!もう、死んだ身、自分じゃ使えないスキルをあげます!』

彼女は急に笑顔になって立ち上がってそう言った。


『え?いや?どゆこと』

(急に変な事言い始めやがった)


『え!へん!やーー!!』

彼女は両手を僕に出し、その直後に彼女の両手を黄色く光った。

『うわ!なんだ?!』

思わず眩しくて目を瞑った。



光が収まり目を開ける。

男の機械音声のような声が聞こえたとともに変な光文字が現れた。

<スキル、創造者を獲得>


『な、なんだ?!』

何がなんだか分からない。


『はい、おしまい。成功したみたいね。じゃあ、早速、スキルの説明するからステータス見て』


(んーなんかよく分からないけど、いいか)

『ステータス開示』

僕は訳がわからないままステータスを見た。


レベル2

職業:英雄

スキル:女神の加護・英雄の心・創造者(HT:0)

攻撃値:40

防御値:40

俊敏:40

器用:40

知性:40

魔力:40


(ん?なんかレベル2になってない?あとなんか数値が増えてる。それに、さっき出てた創造者てのがスキル蘭にある)


『どうだい?シドくん?スキル欄に創造者があるでしょ?』

ルミナスが聞いてくる。


『ええ、まあ』


『そっかよかった。じゃあ創造者て文字に触れてみて』


(なんかいつ見てもSFで出て来そうなホログラム、てかよくラノベに出てくるか)

僕は言われた通り押してみる。



<創造者>

HT(生命力)を使用してスキル、職業の制作、消去を行う。制作するスキル、職業によって必要なHTは異なる。また、HT (生命力)は人間の三代欲求(食欲、睡眠欲、性欲)が満たされた時その度合いに応じて増える。


(なんだか、よく分からないが。スキルを作れるらしい)



『どう?すごいでしょ!普通の人はスキルなんてこうも簡単には作れないんだから』なんだか誇らしげに彼女は言って来た。


『そうなんだ。へーなんかすごそう』

『でしょ!すごいでしょ!……で、あの、私はシドくんに力をあげました。だから捨てないよね?』


『うんまあ』

(何かしてもらったんだしょうがない)


『よかったー』


『それはダメー!!!その魔女は戦争で何千人も殺した大悪党なの!絶対ダメ!』

最近よく聞く自称女神アナの声がした。と同時に空間の一部が白くなった。


白くなった方を見ると。

自称女神の姿があった。


『何よ!?あんたは!うちのシドくんになんの用?邪魔だから消えて』

ルミナスさんはさっき可愛いような大人びたような不思議な声とは似つかないおっかない声で自称女神に聞いた。

(なんだったら目つきも怖い。本当にさっきの人なのか?)


『うちのシド?あ?泥棒魔女が有馬くんは私のよ』

(うう、なんかアナさんもいつもと違って怖い)


『有馬?貴方、人違いねシドくんは有馬くんではないわ』


『シド?それはこの世界での有馬くんの偽名よ。貴方、有馬くんに偽名使われるとか、可哀想ね。全然信頼されてないじゃない。勘違いも甚だしいわね』

アナさんもルミナスさんもなんかめっちゃキレてる。

気づいた時には白い空間は見える範囲の半分まで来ていた。し、目の前では自称女神と魔女が睨み合っていた。



『ね、そう思うよね。有馬くん。こんな勘違い泥棒雑魚魔女ババアは嫌よね?』

睨みあっていたアナが笑顔で僕に聞いてきた。なんか物凄い圧を感じる。


『あんた!さっきから何なのシドくんから離れて!』

『ね、有馬?』

ルミナスがアナに話しかけているが無視してる。怖い。


『ちょと!あんた何のの?』

ルミナスがアナの胸ぐらを掴み再び睨みあって聞いて来た。


『私?女神よ、女神ルミナス』


『ん?女神?ああ、ふーん、そういえば、あの魔王を倒し損ねた勇者の信じてた神がそんな名前だったね』

『は?なんなの!?優馬のこと悪く言わないでよ!あんただって幹部倒せずに逃げたじゃない!』

『は、あんたに関係ないでしょ!…………てかなんなの?私はただここから出たいだけなの!何が嫌なのよ!それに決めるのはシドくんでしょ!』


『そんなの関係ないわ!有馬くんは私の言うこと聞いてればいいの!』

(は?いつから僕は自称女神の操り人形になるて言った?)


(ここはきちんと言っとかないと)

『あの、アナさん僕は貴方の操り人形になった覚えはありません』


『え?』

一瞬、場が固まった。


『どういうこと?』

アナが僕に不安そうに聞いてくる。


『だから僕はアナさんの操り人形じゃないです。それに、僕はこの魔女さんに恩があります。だから彼女の願いを叶えます』


『え、なんで?、でもこいつは何千人も殺して。有馬くんには相応しくないわ』


『それでもです。それに過去なんて僕には関係ないです』


『そんな……ひどいよ、有馬くん』

そう言うと彼女は泣きながらどこかへ消えてしまった。





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