第4話 ダンジョンに眠る美人大魔法使いの思念

(はーせっかく助けたのに、連れ去られてしまった)

僕は路地で一人ぼっちになっていた。


『なんだったんだ?あの女と男は?』

色々急でわからなかったが僕は路地を出た。


『よお、そこの君、災難だったね〜。ありゃ吸血鬼だよ。あんなのを助けるとはお前さん物好きだね〜ま、これでも使ってうまいもん食いな』

白い長い髭を生やした爺さんが僕に銀色のコインを渡してそう言った。


『は〜そうですか』

(なんだろこの銀色の。てか!あの女の人吸血鬼だったのか、だからたい太陽の光に)

今更わかっても仕方がない。


『ひとまずアナのやつに言われたとうりダンジョンに向かうか』




……ダンジョン入り口近くの広場……


『はーーーようやくダンジョンに来た〜〜』

(めっちゃ時間かかったー)

とは言っても入り口近くにはたくさん人がいてよく見えないが。

しかし、このダンジョンの入り口に行くまで何回も人に道を聞く羽目になった。


『なんで、ダンジョンの入り口が城門から伸びる道と直通じゃないんだよ』

なぜか都市が滅茶滅茶複雑で大変だった。


せっかくきたが、次がわからない。

『入り口に来たけど、何すらいいんだ?アイツに聞いてみるか。ええと確か』

(女神アナ様助けてください!!)

僕は自称女神アナを呼び出した。




……僕の心の中……


『神様ーー言われた通りダンジョンまで来ましたよー』

いつ来ても不思議な空間だ。


『うんうん!よくやったぞ有馬ーーえらいえらい!ありがとうね』

アナはとてもご機嫌そうだ。


『大変でしたよ。ここまでくるの。で、次はなんですか?』


『うん、そうだね。では、次の助言です。……ズバリ!ダンジョン攻略です!』

なんとも平凡で予想どうりの助言だ。


『助言ということは従わなくていいですか?』

少しからかってみよう。


『な!なんで!それはないでしょ!なんでよ!』

案外、自称女神のやつ真面目に捉えてしまった。


自称女神は騙されやすそうだ。可哀想なのでもうやめよう。

『いえ、冗談です。従わなかったら、女神さん僕のこと殺すんでしょ』


『え、いやあれは。その……』

どうらや僕を殺すとかは僕を働かせる冗談だったみたいだ。


『でも、ねえ、有馬は、有馬はさ、私のことを信頼とか信仰とかしていたから従ったわけじゃないの?』

少し寂しそうな悲しそうな感じで聞いてきた。

(少し、いじめすぎたかな?)


『いや、まあ。アナに信仰しているわけではないけど、この世界にきて右も左も分からない状態の僕にとっては君の指示はある意味助かってるよ』

本当に助かっている。現にあの村を助けなければ、野宿生活だ。それは嫌だ。



『本当!嬉しい!ふふふ』

さっきまでしょんぼりしていた彼女の顔がパーと明るくなった。

それどころかそこらへんをぴょんぴょん動いて喜んでいる。

((有馬のやつ以外にも私のこと信じてくれてるじゃん!はー有馬みたいなやつ見たいのが増えたらなー))



『あ!アナ!この前助けた村あるけど、盗賊がまた来るようなこと言っていたけど大丈夫かな?』

ふと気がついた。一夜を過ごしただけだけど思い入れのある村だ、心配だ。


『ん?……あ、あーあの村ね。この前有馬が追い払った盗賊の人はもう二度と村に入れないように村の結界設定を変更したわ。だから安心よ』


『な、なんだよ!結界て』

意味がわからない。


『結界は結界よ、あの村には私をかたどった小さい像があるの。ま、もう忘れ去らせて今は民家の床下に転がっているけどそれが結界を作ってるの。私の力でね。……あ、ほら!村を出て後に馬車の運転手さんが魔物の地域だとか言ってるでしょ。本来地上にもダンジョンと同じように少数だけど魔物が出てくるのよ。それらから人々を守るのが結界よ』


『へー』

大体言ってることはわかったあが、なぜそこまでのことをしても信者がいないのか不思議だ。

『でも、なんで。そこまでの事しているのに信者が少ないんだ?』


『へ?それは……だって恥ずかしいじゃん!「私が貴方たちを守ってる女神です」なんて言いたくないの!それにもう…………はい!もうおしまい!早く行って。さ!ダンジョンを攻略するのです!英雄有馬よ!』

なんか無理やり話を終わらせられてしまった。


……ダンジョン入り口近くの広場……


気がついた時にはさっきの広場にいた。


『ひとまずダンジョン入るか』

僕はダンジョンの入り口に近づいた。


『おい!きみ。ダメじゃないかきちんと順番を守ってもらわないと』

鎧をきた衛兵らしき人に引き留められた。

(ま、そうだよな)

僕は大人しく並んだ。



……20分後……

遊園地のアトラクション並みに待たされてようやくダンジョンの入り口に来た。

ダンジョンの入口は巨大な扉だった。なぜか常に開けっぱなしでその奥は紫の光のモヤのようなものがあった。


衛兵の男が僕に話かけてきた。

『はい、君通行料の銀貨一枚ね』

(銀貨てなんだ?)


なんのことか分からずいると衛兵が急かしてきた。

『おい!早くだせ。他にもいるんだ』

(まずい、そんなのねえ…………あ、あの爺さんに貰ったの渡してみよ)


『はい、これでいい?』

僕はあの爺さんから貰った銀のコインを衛兵に渡した。


『ち!あるなら早く出せよ』

どうやら衛兵に嫌われたらしい。怒りっぽいな。



扉の中に入り、モヤの近くにきた。

『なんだろなこのモヤ』

(入って大丈夫なのかな)


『早くしろ』

後ろで衛兵に急かされる声が聞こえる。


『えい』

僕はモヤにビビりながらも、入っていった。




……ダンジョン第一階層……


『お、キタキタ』

真っ暗な区間をしばらく歩いたら。どこかの通路に来た。

多分ここがダンジョンだろう。

(シューー)

後ろを振り返るとさっきまで僕が通った穴が消えた。

(え!帰れないジャン!)

『入口消えて、どうやったら帰れるんだよ!』




『はーしょうがない。出口探すか』

すぎたことはしょうがない。ダンジョンの出口を探すのにも僕はなんのなくそこらへんを歩いた。ダンジョン内は意外にも明るい。これなら灯りがなくても大丈夫そうだ。

けど、あんなに入口で待ったのに誰一人としてダンジョン内には人がいないのは変だ。



しばらく歩いたら崖に出た。

『んー深いな』

下を覗いたが底は見えない。

落ちたら死にそうだ。


(きょよよよいおいお−!!!)

なんかの変な鳥のようなのが来て僕の顔に飛びついてきた。


(ゴロ)

『あ』

(ガラガラガラガラー!!!)

『おぎょー!!!』

僕は変な鳥に驚いて崖から落ちてしまった。


(ゴン!)

『痛!う……』

僕は意識を失った。




……ダンジョン第12階層……


(起きて、起きて)

頭の中で大人の女性の声たした。自称女神アナとは違う声だ。


『う、うう』

目を覚ますと僕はうつ伏せで寝ていた。


(さあ、私の杖に触れて)

また大人の女性の声がする。


『ん?』

よく見ると僕の目の前に杖が地面に刺さっていた。



『う、うう』

僕は全身が痛いが、なんとか立ってその杖の方に向かった。



(とん)

僕は杖に触れた。


……魔女の心の中……


気が付くと真っ黒い区間にいた。

とは言っても何も見えないわけではない。自分の体は見える、そして目も前にいるいかにも魔女みたいな大きな帽子、紫のローブを纏った女も。


『よく、来てくれたわ。私は美人大魔法使いルミナスよ。ルミナス姉さんで、いいからね』

女はルミナスと名乗った。


『ところで私を見つけてくれた君は?』

彼女は僕の名前を聞いてきた。


(名乗らない理由もないしいいか)

『シドです。初めまして。ルミナスさん』



『へー!シドくんて言うんだ!可愛い!!えい!』

(ムギュー!!)

いきなりルミナスさんが僕に飛びついて抱きしめてきた。


『ルミナスさんではないでしょ、ルミナス姉さんでしょ。悪い子にはお仕置きね』

『う、うう』

(苦しい)

何故か頭全体が埋もれている感覚がする。

(早く離れないと)

僕は必死に体を動かして彼女から離れようとした。



『もーシドくんのエッチ!!お姉ちゃん変な気分になっちゃう!!お胸のとこで暴れないで−!!』


『うぎゃ』

急に苦しくないと思ったら。彼女が少し離れていた。

が、目の前にスイカサイズの大きなおっぱいがあった。


『もう、エッチねシドくんはあんなに暴れた人は初めて。もう、お姉ちゃん困っちゃうーー』


『な、なんなんですか!?あなたは!』

驚きでつい強く言ってしまった。






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