第5話

ただ、この時点ではめいさんがそう言っただけなので、勘違いだろうと信じていました。それに、喋り方がふわふわしていて、どことなく信用できずにいました。


そして、私は見ず知らずの女性の体を触りました。まるで氷を触っている気分でした。冷たくなっていて、体も固まりきっている。この人の死は確定した事実となってしまいました。


一織「あぁ、もうだめですね。もうお亡くなりになっています…」


涼「………そうか」


純「それで、その人は?」


涼「吉崎。吉崎 彩月(よしざき さつき)だ」


吉崎 彩月さん。涼さんたちと同じオカルト研究会に所属していた人だったそうです。彼女が生きているうちに話したかったですが、そんな願望は叶いませんでした。


そんな時、一人の男性が来て、こう言いました。


竜二「おっ、こりゃ最高だな。オカルト研究会がやっぱクロだったってはっきりした」


どうしてこの人はこんなところにいるのでしょうか?少なくとも研究所に行く時点ではいなかったですし、柵の電流も音がはっきりと聞こえるほどには強いはずです。もしかすると、人ならざる者なのでは?それこそ、人造人間みたいな。


そう思っていると、葉月さんが彼に話しかけました。


葉月「竜二!?なんでここにいるんだよ!?」


竜二「俺は、オカルト研究会の黒い噂を聞きつけて、着いてきたんだ。俺としては、お前がいるほうが不自然なんだが?」


カンナ「はーくんは私のカレシだよ。ここにいるのは、アタシの友だちのフランから、人造人間について調べる手伝いを頼まれたの」


竜二「人造人間?しょうもないな。俺はそんなもんまるで興味ないぞ」


大雅「なんなんだよお前はよ!俺だってこんなもんやりたかねぇんだよ!それに、何だ『オカルト研究会の黒い噂』ってのは!ふざけてんのか!?」


涼「やめろよ、大雅」


純「ああ。ただ、君も名乗っておくべきだと思うよ」


純さんがそう言ったことによって、その人は初めて自ら名乗りました。


竜二「俺は弥生 竜二(やよい りゅうじ)。そいつらと同じ大学の二年生だ。ここに来た目的はさっき話した通りだな」


一織「では、竜二さん。一つ聞かせてください。オカルト研究会の黒い噂とは何ですか?」


竜二「お?知らないのか。だったら教えてやるよ。そいつらな、麻薬の常習犯だって言われてんだ」


聞いてすぐには、すぐそこに麻薬の常習犯がいるなんて言われても信じられないでいました。しかし、薬物中毒だと思って振り返ってみると、確かに薬物に手を出していてもおかしくない人がいると気づきました。


大雅「麻薬!?な、何言ってんだお前は!んなもんに手を出してるわけがねぇだろうがよ!」


竜二「そうやって焦る人って、大抵は事実を隠すためにやっているんだよ。んで、どうなんだ、大雅さん?」


大雅「は、はぁ!?意味わかんねぇっての!俺たちがそんなことするわけねぇよな、如月!伊丹!」


めい「そーだよー。そんなことするひとにみえるの?」


涼「………」


竜二「どうなんだ?そこに裏切り者がいるぞ?」


大雅「何とか言えよ!如月!」


涼「悪いが、そのことは、君の目で確かめてくれ。僕もあまり言いたくないんだ」


涼さんの発言は、まるで噂が事実だと言っているようでした。知っているからこそ、言いたくないのだと思いました。


こうして、フラン研究所における惨劇はゆっくりと幕を開けていきました。人造人間とオカルト研究会に何か関係があるのか、そこは分かりませんが、この時点で、私は直感で理解していました。今回の事件では、二つの噂の裏でうごめくものが存在しているのだと。


そう理解してしまった以上、今回の集まり誰かが仕組んだ陰謀なんだろうと感じてしまいます。そうであるならば、私がすることはたった一つしかありません。真相にたどり着く。ただそれだけが、探偵である私に託された役割なのです。

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