第4話

私がそんなことを考えているうちに、純さんはオカルト研究会の人たちと交流を深めていました。オカルトな記事を書くライターと、オカルトな話題を確かめる人たち。互いに近いものを感じていたのでしょう。


涼「純さんって、どんな記事書いてるんですか?」


純「都市伝説だったり、昔からの伝承だったりが多いかな。こういうのって、案外マニアには人気が出やすいからさ」


めい「そーなんですね」


涼「もし良かったら、今度、僕たちと、一緒に調べに行きませんか?」


純「いいね。ま、その前にこっちの調査済ませてからで」


私はオカルトにはそこまで興味がないのですが、興味がある人たち同士の会話だと盛り上がれるのでしょうね。あの人たちを見ていると、なんとなくそんな気がします。


そう思っていると、話題が人造人間の方に変わっていました。


純「そういえば、人造人間って何なんでしょうか?」


大雅「何でお前がそれ把握してねぇんだよ!」


純「い、いや、だって『人造人間がいるっていう』噂しか聞いてないから、正体とかはわかんなくて…」


めい「おちつこーよー、たいがくん。ほら、りらーっくす」

「お前らじゃ話になんねえ。おい、そこのお前!」


大雅さんは、フランソワさんへ強く怒鳴りつけました。


大雅「何なんだよ人造人間ってのは。お前が調べろっていうから来てやったんだ。お前は何か知ってんだろうな!」


フラン「大したものではないのですが、一応、ちょっとしたことなら知ってますけど…」


大雅「じゃあそれを話せってんだよ!出来ねえってのか!この…!」


葉月「師走先輩、一旦落ち着きなよ。ただの噂をそんな詳しく知ってるとは限らないだろ」


大雅「チッ、どいつもこいつも…」


ずっと怒っていて、相手に圧をかけてばかりいた大雅さんを、葉月さんがうまいこと黙らせました。声には出せませんでしたが、ナイスすぎます。


カンナ「はーくん、カッコイイ♡」


葉月「ありがとう、カンナ。それで、何を話そうとしてたんですか?」


フラン「あ、そのことですね」


フランソワさんは人造人間というものが何なのか、話せる限りのことを話しました。


フランソワさんが知っていたことは、次の二つのことです。一つは、人造人間は巨大な体と強靭な肉体を持っているということ。もう一つは、自らを従える主に背く者を容赦なく殺すということ。といっても、これらも所詮は噂ですし、本当かはわかりませんけどね。


研究所へ向かって行く道のりで、心身ともに疲れていった私たちは、すっかり話すことがなくなりました。そして、沈黙を貫いたまま、山道を登っていきます。疲れからか、後ろをつけてくる何かがいると思ってしまいました。実際は、カンナさんと葉月さんのカップルだと思っていました。


こうして、なんとかフラン研究所にたどり着きました。片道だけで三時間ほどはかかったと思います。調査というのも簡単にはいきません。


そして、研究所の中に入っていきました。この研究所と謎の怪物である人造人間。その謎を解くための大切な一歩です。


関係者であるフランソワさんを先頭に、オカルト研究会の人たち、純さん、私、カップルの順番に入っていきました。全員が入り終えたであろうタイミングで、照明がつくと同時に、後ろから弾けるような音がしました。


見てみると、建物を取り囲む鉄の柵が、何か変化していました。音までよく聞くと分かりました。電流が流れています。これが意味することは、この瞬間に、研究所は一つの大きな密室になってしまったということです。


こうなっては今更撤退なんてできない(片道三時間かかる道を引き返したいかというのもありますが)ので、ひとまず建物の中に入ることにしました。


入ってすぐのところには大きな倉庫がありました。大きな張り紙で書いてあったのですが、どうにも読めなくなっていました。気になって入ってみると、噂以上に恐ろしいものがまっていました。


床にぶちまけられた大量の錠剤。そして、壁に横たわる一人の女性。まさかとは思っていました。


カンナ「えっ!?人がいる!?」


涼「あれは…吉崎!?何で倉庫なんかに…」


大雅「てか、何であんなクスリぶちまけてんだ?もうキメてんのか?」


めい「ちょっとはなしかけてくるねー」


めいさんが、その女性の所へ向かいました。そして、スキンシップとしてか顔を触ったところで、こう言いました。


めい「つめたい…さつきちゃんのはだ、すごくつめたいよ?」


そう、死んでいたのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る