二の贖罪 協力者

サイレンの音が鳴り響く…



「いたぞ!あいつらを捕まえろ!」



女「はぁ…はぁ…なんで私が…こんな目に…!」



女は警察官に追いかけられていた。



女「この工場に逃げ込めば…!」



町にある寂れた工場へ身を隠す。



女の名はダリア。ダリアは麻薬中毒者で、ドラッグ仲間と吸っていたところを警察官に見つかり、追われていた。



仲間も一緒に逃げていたが、はぐれてしまった。



女「私はすすめられてやっただけだっつの…!悪くないし…」



ぶつぶつと文句を言っていると…



警察官「ここが怪しいぞ。入れ!」



工場に警察官が入ってきた。



ダリア「やばい…どこかに隠れないと…!」



とっさに置かれていたベッドの下へ潜り込む。



カツカツカツカツ…



警察官が隠れている場所に迫る。



警察官「この下は…」



ガサガサガサ…



何かが動く音がする。



警察官「なんだ!?誰かいるのか!ここは立ち入り禁止だぞ?」



問いには答えない。



警察官「どうなっ…うっ…」



ドサリ…



ダリアは息を呑む。警察官が倒れた。



ダリア(お願い…気づかないで…!)



カツカツカツ…



足音は離れていき、警察官が引きずられている。



しばらくして、ダリアがベッドの下から出る…



ダリア「なんだったの…?とりあえず逃げ切…」



グサッ



首に鈍い痛みが走る。



ダリア「な…に…?うごけ…」



そこで、意識を失った。 




目が覚めると…首に重い装置が付けられていた。



ダリア「なによ…これ…?痛い…首に何かが…」



手で触って確認すると、太いパイプ型の何かが刺さっていた。



ダリアはパニックになる。



ダリア「誰か!助けて!これを外し…」



ピシュンッ



置かれていたテレビからビデオが流れ始める。



マスクを被った人物が話し始める。



「やぁダリア。君がここへ来たのには理由がある。わかるだろう?お前は麻薬中毒者で、自分の命を粗末にした。その罪の報いを、今受けてもらう。注射の針が喉を貫く前に、カミソリの刃だらけの箱の中から鍵を取れ。己の罪を…自覚しろ。」



ビデオは終わり、同時にタイマーの音が流れ始める。



ダリア「カミソリの箱って…」



向いた先には、確かに箱があった。しかし、そのなかにはギラギラと光る刃があちこちに張り巡らされていた。



ダリア「死にたくない…!死にたくない…!」



ダリアは死に物狂いで箱に手を突っ込む。



刃が手に食い込んで激痛が走る。



ダリア「あぁっ!!あぁあああ!!痛い…痛い…でも、鍵を…!」



タイマーの音はどんどん早くなっていく。



カチカチカチカチ…



手から血をしたたらせながらもダリアは鍵を見つけ、首の装置の錠前にさして装置を外した。



ガシャンッ



外した直後に装置の針は真ん中に向けて飛び出す。もし首についていたら、今頃喉に突き刺さり、死んでいただろう。



ダリア「あぁ…あぁ…うぅ…」



ダリアはあまりの恐怖に泣き出す。



しかし恐怖とは別の感情があった。生きているという実感と…罪の意識。



ダリア「私は…なんてことを…!」



するとスピーカーから声が流れる。



「ダリア、君は生きるチャンスを掴みとった。おめでとう。私も嬉しい。君は晴れて麻薬中毒を克服した。これからは、自分の人生を大切に生きてくれ…」



ダリア「ありがとう…ありがとう…!」



泣きながら部屋を去る。ダリアは生き残った。



見事、麻薬中毒を克服して。



ダリア「私を救ってくれた人…会いたい…」



彼女の中に、ある歪んだ思いが芽生える。



自分を救ってくれた者への感謝。憧れ。



その感情は彼女を突き動かし、ダリアは自分を犯罪者から救ってくれた者へ会うことに心血を注いだ。



そして…



ダリア「次に事件が発生しそうなのは…」



老人「ダリア…」



ダリア「!…あなたなの?私を救ってくれた…」



老人「ダリア、君は更生した。私は…これからも人を救うことをしたい。君がどう思っているかはわからないけれど…手助けしてくれないか?」



ダリア「もちろんです…私の全てを変えてくれた…あなたに力を貸したい…」



彼女は老人に協力することになった。



彼の思いや志を受け継ぎ、新たな救世主になるため、彼女は励んだ…



そして…



ダリア「師匠様、次の罪人の候補リストです…」



老人「ありがとうダリア。助かるよ…装置を作る仲間が必要になってきたな。次のリストに詳しい者はいるかい?」



ダリア「この自殺未遂を繰り返している…ダグラスという男が詳しいかと…」



老人「打算的な贖罪は望まないが…ここは仕方ない。彼も贖罪の対象だ。彼が次のターゲットだ。ダリア、連れてきてくれ。」



ダリア「もちろんです、師匠様…」



彼女も贖罪を与える者となった…






「……あぁ…また…俺は生き延びてしまった…」



彼はダグラス。自殺未遂を繰り返し、それでも死ぬ覚悟がなく、今日も自身の体に傷を刻む。



ダグラス「俺は死にたいんじゃないのか?なんで…いつも生きているんだ?」



その問いに答える者はいない。



ダグラス「誰か…助けてくれ…!」



泣いて天に助けを乞ったとき…



ブスッ



彼の腰に鈍い痛みが走る。



ダグラス「誰…だ…?殺…して…」



そしてダグラスは意識を失った…



ダグラス「うぅ…ここは…地獄か?」



目を開けると…テレビが置いてあり、ビデオが再生されて声が流れ始める。



「やぁダグラス。君は罪を犯した。与えられた人生を無下にし、自身の体を傷つけてはまた死ねなかったと後悔し…また、傷つける。そんなに死にたいのならば与えてやろう。」



ダグラス「俺の…罪?…痛い…なんだこれ…?」



ビデオは止まらない。



「君の前には銃が置いてあるだろう。しかし、君は有刺鉄線で椅子に縛り付けられている。このままいれば、銃の引き金をおもちゃのロボットが引くだろう。しかし君が恐れず、有刺鉄線が切れるほど強く抗えば、生き延びられる。

己の罪を…自覚しろ。」



ビデオの再生が終わると、おもちゃのロボットが動き始め引き金と繋がった紐を引っ張り始める。



ダグラス「このままいけば…俺は死ねる…」



諦めて身を委ねようとした時…彼の中で…ある思いが鼓動した。



『なぜ、俺は死にたいんだ?』



ずっと彼の中で引っ掛かっていたことだった。なぜ、自身が死にたいのか。それを彼は理解していなかった。



そのことに気づいた時、本能が叫んだ。



「今死んではいけない」



彼は気づいた。自分は死にたかったのではなく、生きたかったのだと。理解してくれる人が欲しい。誰かの役に立ちたい。



生きる希望が溢れてくる。



ダグラス「俺は今死ぬべきじゃない…!」



彼は腕に巻き付いた有刺鉄線を外そうとする。



ブスブスと有刺鉄線が腕に刺さり、激痛が伴う。



ダグラス「痛い…!でも…生きなきゃいけないんだ…!」



激痛をこらえて有刺鉄線を外し、彼は椅子から落ちた。



その数秒後、椅子に向けて銃が発砲された。



ダグラスは生き延びた。彼の、魂の叫びによって。



出口を見つけ、血まみれの腕で部屋から脱出する。



ダグラス「俺は…生きている…今、生きているんだ…!」



そのことに感動し、涙が溢れる。



その様子を見ていたある人物が…



「ダグラス、あなたは贖罪した。そして…あなたに頼みがあるの。あなたが自分みたいな人々を救いたいのならば、私たちが行う贖罪を手助けしてほしい。」



ダグラス「俺を…救ってくれた…もし…手助けできることがあれば、俺にやらせてくれ。俺のような人々を死の狭間から救いたいんだ!」



「いい返事が聞けてよかった。私はダリア。師匠様に会わせるから…ついてきて。あなたを救った方よ。」



そう言い、ダリアとダグラスは歩いていった…

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