第40話 布団

 そして、ゲームが終わった後、泊まるという話になった。


 理由としてはただ、初デートをこれだけで終わらせたくないと俺が提案したからだ。前まであんなに勇気がなかったのに、この提案はできるのだなと、自分ながら不思議に思ってしまう。

 こんなに勇気があるのならもう少し早く告白できただろうと。ただ、これはある意味俺と奈由香の距離が縮まったからということもあるかもしれない。

 少し無茶な提案しても、奈由香は俺を嫌わないだろうと。

 実際、奈由香は俺の提案を快く二つ言葉で承諾してくれた。


 そして俺たちは今、布団の中にいる。前は奈由香が布団に侵入してきたが(後で聞いたら、麗華がいちゃいちゃを計らったらしい)今は違う。最初から一緒に布団の中にいるのだ。


 奈由香の肌が(服越しだが)感じる。その感じは不思議な感じで、俺の心をドキドキさせる。これじゃあちゃんと睡眠を取れるのか心配だ。


 奈由香にそのことを伝えると、笑われた。「そんなんじゃあ、私と一緒に寝る意味ないじゃない」と。


 そして、布団で色々と話した。今日のコンサートの感想、バイオリンを弾いてみた感想などなどいろいろなことを。話す事が楽しすぎて時間も経つのが早かった。


 いつの間にやら一時間経ったのだ。


 それに気づいた奈由香が「話しすぎたね。寝よっか」と言い、俺が「ですね」と言った。その後「おやすみ」と言い合って、そのまま電気を消し、寝る準備を本格的に始める。


 こんな時間になったらようやくドキドキも消えてきた。少なくとも寝るのにあまり邪魔をしない程度には。


 しかし、やはり奈由香と一緒に寝るのは特別感しかない。

 これもカップルの醍醐味とでもいえようか。俺は今幸せだ。

 奈由香と背中合わせに寝ている今の状態が、最高の気持ちだ。

 こんなことを言ったら変態だと思われるかもしれないし、人前(特に奈由香の前)では言えない。だからその心は胸の内にしまっておく。



 だだ、幸せだ。


 そして月曜日。俺は奈由香と手を結んで学校へと向かった。


 こういった形で数回一緒に登校しているので、軽く日常になりかけてはいるが、それでもまだどきどきする。俺たちはもうカップルとなったと公言しているような状態だし、そのような状態で登校するのも、クラスメイト達(特に麗華)にはおなじみの光景となっている。だが、それでも、不思議過ぎて、まだ慣れない。


 そして学校に着くと、麗華が、「土曜日のデートどうだった?」と訊いてきた。流石は麗華、人の恋愛には目がない。


「すごく楽しかったよ」

「うん。楽しかったです」


 二人してそんなことを答える。正直な感想だ。あの日は楽しかった。


「そう言えば下村さんって今どうなってるんですか?」


 そう言えば、下村さんの話はあの日から一言も聞いていない。


「絵里はね、あの後大分精神も落ち着いてるみたい。でも、雄太と合わせたらいけないからさ」

「ああ、ケンカになりますね」

「そう。てかそんなのはどうでもいいの。ねえ、イチャイチャした?」

「まあ、軽くは、したのかな?」


 一緒に料理作ることや、バイオリンを教えてもらうことがイチャイチャに入るのかどうかは審議の対象になると思うけど。


「とりあえず私はあなたたちの幸せを祈ってるから絵里のことは任せて」

「あれ、話戻りました?」

「ええ、まあでも私は穴たちのこと応援してるからね」

「それ、麗華が俺たちのイチャイチャを見たいからじゃないんですか?」

「そうかもね」


 そう、あっけからんに笑う麗華を見て俺と奈由香も笑う。


 そして授業が始まる。授業中も奈由香と何回か目があう。それがなんとなくうれしさを感じる。授業中だから会話をするわけではないが、それでも目とかで声のない会話は出来る。だけど、やり過ぎたらばれそうになったので、俺たちは視線を黒板へと戻す。


 そして、授業が終わった後は、麗華も入っているが、集まって話し合う。

 それは昼休みにさらに変わる。


 昼休みは麗華が気を効かせて、俺たちのもとへ来ない。それが暗黙の了解になっている。俺たち雄太と奈由香は二人で集まって一緒にご飯を食べる。

 二人でしゃべりながら食べるのだ。

 そして次の土曜日、俺たちは一緒に映画館へと向かった。一緒に見たい映画があったからだ。ラブコメアニメの劇場版。今日は奈由香と一緒にこの映画を観る予定になっていたのだ。

そして映画の内容は素晴らしいものだった。恋愛映画とは思えないくらいの濃密な内容だった。

それを観て、俺たちは感想を言い合う。

その時間も愛おしい。


奈由香とのこの楽しい時間がずっと続いていくであろうことを考えたら楽しいことがいっぱいだろうと思った。






約6か月に及ぶ連載になりましたが、今回が最終回となります。この結末は奈由香がコンサートのチケットを雄太に渡した時点で、こういった終わり方にしようと思っていました。


私、有原優の作品をもっと読みたいと思う方は、久しぶりに再会した小学時代の友達に「再会記念に付き合わない?」と言われた件についてhttps://kakuyomu.jp/works/16818093073855798312

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クラスの女子に好意を抱いてたが、告白する勇気が無くて困っていたら、友達になる? と言われたのですが 有原優 @yurihara12

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