第34話 告白の返事

「……承諾します」

「え?」

「よろしくね、私の彼氏……」


 そう言いながら奈由香は顔を赤くしてた。


 てことは、俺は、俺は奈由香の彼氏になるってこと? 確かに好感触を持っていそうな感じだった。俺も手ごたえを感じた。だが、いざ、その言葉を聴けるだけで何と嬉しいことか。

 この瞬間俺の高校時代の目標……と言ったらなんか固くなってしまうが、それは達成できたことになる。

 これから奈由香とカップルとして色々なことが出来るんだ。そう思うと、何もかもが幸せだろう。

 今からでも、はしゃぎまくりたいところだ。

 なんて返事を返そうか、そんなことを考えたが、結局俺は「……うん」などと恥ずかしそうに言ってしまった。

 駄目だな俺は、男らしい返事もできないなんて。


 結局、奈由香に「告白した人とは思えないね。その返事は」などと、言われてしまった。


「それで、今度のコンサートの計画を立てるって話だっだよね」

「ああ」

「それね、本来は十一時に集まればいいけど。せっかくだから九時集合にしない? せっかく、その。……カッ……プルになったんだから」


 恥ずかしそうに言う奈由香も良し。ああ、俺の告白は受け入れられたんだなと思ってうれしくなる。


「なににやにやしてるの?」

「え?」

「まあ、仕方ないよね。私がかのsyになったんだから」

「嚙んでるぞ」

「う、ごめん」

「でも、にやにやしてたのは本当。だって俺にとってこんなうれしいことはないもん。頬つねってほしいくらいだ」

「こう?」


奈由香が頬をつねる。「いた!」と叫んでしまった。結構強めにつねってくれていたみたい。


「じゃあ、夢じゃないってこと。ね?」

「ああ」



 やべえ、離す言葉がなくなってしまった。沈黙が嫌だ。そうだ!


「奈由香……好きだ」

「何急に?」

「いや、愛を伝えなきゃと思って」

「こういうところは積極的なのね」

「え? だめですか?」

「いいけど。照れるからあんまり言わないで……」


 奈由香は実際顔を赤くしてる。なんとなくどうしていいかわからない。何だろうこの気持ちは、今までの感じじゃあないみたいだ。そりゃあ告白が受け入れられたから当たり前の話なんだけど。


「そういえば、奈由香って付き合ったことって」

「ないよ。雄太が初めて。私、告白されても大体断ってるから」

「そうなんだ」

「そう、特別なんだよ。雄太は、私にとって」

「あ、ありがとう」


 照れる。


「じゃあ本題に戻ろうか」

「あ、そう言えばそうだったな」


 もともとそう言う話だった。


「なんで二時間前に集合かって話だけど、朝ごはん一緒に食べたいなと思って」

「朝ごはん?」

「そう、いいご飯屋さんがあるらしいの。そこ行けたらいいかなって」

「わかった。じゃあそれで」

「あとはぶらぶらしたらいいなって」

「うん」



そして話が一段落ついたからだろうか、


「じゃあ……恋人らしいことしようか……」


 奈由香はそう一言呟いた。だが、その顔は明らかに無理してそうな、恥ずかしさに打ち砕かれているような顔だった。俺はおsの顔を見て「無理はしないで」と、言ったが、奈由香はやる気満々なようで「嫌なの?」と言ってきた。


 流石にそう言われては、もう言えない。そして、


「……」

「……」


 沈黙が流れた。当たり前と言えば当たり前の話だった。俺も奈由香も人と付き合ったことがないのだ。こんな状況でなんか恋人らしいことしようって言われても困る。


「ハグする?」


 奈由香が沈黙を破るように言った。そうだなと、奈由香の近くにより、手を開き奈由香のハグを待つ。あれ、これ昨日もしなかっけ……と思ったが、口には出さない方がいいだろう。


 そしてハグをするが、案の定特別感がない。そもそもの話、今まで奈由香の俺への感じが異性に対するそれではなかったため、本当分からん。

 とはいえ、奈由香のことが好きなことは変わらない。何とかしてイチャイチャしたいところだが、


「雄太?」


 そんなことを考えていると奈由香に話しかけられた。うぅもしかしてばれてしまったのか。


「もしかしてあまり気持ちよくなかった?」

「……うん」

「そっか」


 完全に俺が悪い。奈由香は何も悪くない。

 そもそもの話俺から告白したというのに……。


「そうだ、雄太。私の膝に乗ってみる?」

「え?」

「これは今までしたことないでしょ」

「確かに、そうだな」


 という訳で俺は奈由香の膝で眠ることにした。


「どうぞ」


 そうソファに座った奈由香の言われるままに寝ころんだ。もちろん奈由香の膝を枕にして。


 感想としては単に気持ちいい。その一言でしか言い表せない。奈由香のお膝は柔らかく、寝心地がいいし、座ってる奈由香の顔をこっそりと見れるのがなお良し!


 ああ、いいなあこういうのは。最高の気分だ。


「どう?」

「もちろん最高」


 そしてその気持ちよさを最大限に感受しようと目をつぶった。


「んん」

「雄太起きた?」

「今は……?」

「五時」

「え? もう三〇分寝てるじゃん。なんかごめん」

「嫌良いよ。寝てる雄太見てるとこっちもほほえましかったし……」

「ほほえましかった?」

「うん」


 母性を感じたのかな。まあとにかく、


「ありがとうな、気持ち良かったよ。それでだけどさ、今度は俺が膝枕するよ」

「え? いや」

「嫌だったらいいけど。させてばっかりじゃあ悪いし」

「じゃあ……乗らせてもらおうかな」

「うん」


そして今度は奈由香が俺の膝の上に寝る。


「なんかいいね」

「俺の気持ちわかった?」

「うん。最高!」


奈由香の顔が俺のそばにある感覚。慣れないなあ。でもいいなあこれ。奈由香の美顔をこうまじまじと見られるなんて。

そしてそのまま二〇分程度話した後、俺は家に帰った。

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