第33話 奈由香

 今日は教室に入るのが憂鬱だ。昨日は奈由香から何もメールは来なかった。つまりまだ告白の結果はわからない。

 今奈由香はどう思っているのだろうか……。

 教室の前に来たが、ドアを開ける勇気がない。今の時刻は八時二七分。まだ少し時間はあるが、そんなにはクズ崩していられない時間だ。だが、今奈由香に会う勇気などない。昨日一緒にカラオケに言っといておかしい話だが、

 俺に勇気がないのが嫌になる。俺の勇気のなさが俺の行動を阻害するのだ。土地道奈由香に振られた世界では俺は生きてはいけないのに、振られる創造までしてる俺が嫌になる。


「おはよう雄太」


 そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。


「……奈由香?」


 おかしい。奈由香がここにいるのはおかしいのだ。奈由香は優等生。いつも一〇分前には教室にいてるはずなのだ。


「今日は色々考えちゃってなかなか寝付けなかったからさ。寝坊しちゃった。それこそ雄太も遅かったね」

「うん。なんか機能色々あったから」


 まさか奈由香に会うのが怖かった。そうは言えない。


「さて、教室はいろ」

「うん」


 そして教室に入る。ちなみに麗華には告白したけど、返事は今度でと言われた的なことを言われた的なことをメールで伝えた。


「おはよう」


 奈由香がみんなに聞こえるように言った。


「おはよう。気分はどう?」


 麗華がそれに答えた。


「うーん。少しだけまだ残ってるけど、結構まし。雄太が慰めてくれたしね」


 そう言って奈由香が俺の方を見たので、「嫌大したことはしてないよ」とだけ返した。


「それで……」


 祖茂村さんは今どうしてるんですか? と聞こうとしたが、それを聞いてはトラウマをえぐることになりそうだからや、やめといた。代わりに……


「今度のお出かけって話し合いますか?」


 話の本題からそれてる気がするが、まあいいわけだ。それに、俺の告白によって話がおかしくなってることになる。コンサートに行く計画。もし仮に俺が振られたら地獄のデートになる可能性もある。ああ、考えれば考えるほど、緊張してくる。もし降られたら俺は死ぬだろう。


「それは、また後で話そうか」

「うん」


 やばい。また選択ミスったのか?


「それと、放課後、今日は私の家に来て、色々話したいことがあるから」

「ああ、分かった」


 それを見て麗華はにやにやとしていた。


「よし、朝のホームルームを始めるぞ。席に座れ」


 そう言われて席に座った。そしてその流れで授業が始まったが、全く集中できない。緊張が止まらない。今日の放課後、俺の運命は決まる。ああ、怖い、あな怖し。


 そして、そのまま授業に集中できないまま授業は進んでいく。奈由香をちらっと見るが、集中できていそうだ、当然麗華も。つまり集中できてないのは俺だけと言うことになる。はあ、つらい、怖すぎる。




 そしてそのまま放課後になった。もう、どうとでもなってしまえという気分だ。


「じゃあ行こっか!」


 そう、奈由香が俺の手をつかんで引っ張る。それに対し、「ちゃんと歩けますから」と、言って、奈由香の歩くスピードに合わせて歩いていく。もしかしたらこれが最後になるかも知れない。そう思ったら嫌な気分になる。

 そして、奈由香の家に到着した。運命の時が近づいている。


「お邪魔しまーす」


 そう言って、奈由香について行く。今日も奈由香の両親はいないようだ。


「じゃあ、まず。雄太いや、有村さん。私の告白に対する返事を今から言います」


 そんな面接官みたいなことを言ってくる。さて、有村君と言うのは面接官モードだからなのか、それとも……

 いや、考えたらだめだ。


「私の答えは……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る