予感

「お頭、あの先生はいい女ですな」


 三船がニコニコしながら僧兵の首を折り、投げ飛ばす。


「気遣いが出来ておしとやか。多少歳は違いますが、お頭の好みでは?」


「気を抜くと思わぬしっぺ返しを喰らうぞ」


「まさに。雷光にはやられました」


 迫り来る白刃を抜け、相手の首元を刀で撫でた。鮮血が撒き散る。


「言うな。あとで聞く」


「よろしくお願いしますよ」言いながら突き出された槍をへし折り、穂を敵の眉間へ返した。割れた頭蓋から脳漿が混じった血が飛ぶ。


「数が多いな」後ろに迫った坊主の喉へ刀を刺した。


「こいつらの頭はどこでしょうか?」


「分からん。一香が雷光を追ったが、指揮はやつではない。となると」敵の股下を撫で斬り、そのまま首元を突き上げる。


「山か」


「ですか? ここらが見渡せるのは飯盛山ですが、そうなると」


「何人かやられているかもしれん」


「……嫌ですね」僧兵の腕を握り潰し、取り落とした刀で首を斬った。「暴れても気が晴れません」


「そうだろうな」


 相手も少なくなってきた。鮮血の向こうから、味方が駆けてくるのが見えた。


「遅れた、すまん」その勢いのまま僧兵の首を斬り落とした。「案外数が多かった」


山之上やまのうえの、助かった。ここを任せていいか」


「応よ、任された」


 聞き終える前に淳弥と三船は駆け出している。


 目指すは飯盛山山頂、物見がいたはずの場所だ。

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