暗を葉に更けて冬、異世界ファンタジー。

一葉迷亭

転生した様です。

 視界が霞む。生きているという間隙がある。もうすぐやってくる死を待ち受ける。何をやっていたのかも思い出せない。言葉が溢れる。

ーーしています。

 まただ、涙が止まらない。赤い火が薄く空に消える。火が留めもなく、私に語りかける。熱くて虚空で、もうずっと冷たさとは別の、別の。

ーーしています。

 口から出た。

 愛しています。あなたをずっと、永遠、これから先ずっと愛しています。私が言った。

 視界は暗く、儚く光が射さない。底から、闇が消えて。夜の帳が薄くしたたかに開く、私はやってこない不思議なそれに気を取られ、開けられそうで開けた。月が見える。指先に引っかかる地面の感触は土を思わせた。ひんやりしている。髪にまとわりつく不快でない感覚はなんだろう?

 声がしたら上を向く。月が見え更に首を動かし、黒色の新緑、森の中?匂いは苔と野生の粘着く薫り。歩く人がいた。肌色が焦げた茶あいで、赤い目をしているのは月明かりの下、妖しく輝く筋肉隆々の、歳は40近い。おじさん?

「やあ、おぢさん。」

 私は舌を噛んだ。彼は気にせず口を開いた。

「元気そうだな。」

「当然だね!!異教徒共の血こそが信仰の証なのだからね!僕は今大変に興奮するよ。」

 私は、言葉ほど対して興奮していなかった。彼は口を閉ざした。彼を見上げる私は、髪の痒さと少し頬が濡れている。

 寝ていた事実にラデリックはへの字のまま、驚きを目に堪えていた。私は、遠くでじっと火が灯るのを聞き逃さなかった。彼は口を開く。

「終わったよ、」

「あ、そう。」

 私たちは街道に行き、拠点としていたリオ村に居る信徒たちを回収しなければならない。この様子じゃ、改宗は不可能だったみたいだ。まあ、洗脳されている人間を、たった少しの時間で靴替えを行うのは無理があったみたいだ。みんな命より大切なものがある。それだけだ。でも、彼女は不満そうだ。私は彼女を頭の可笑しな狂人だと思っているが口には出さない。とろりと眼を細めて、頬を赤い蛇の舌より赤く。それは、口腔から|蠕(うご)く雨にも似た緋色にねぶる|現(うつつ)の影である。もうお解り?美しい女だと思うがその目は|焚(た)いた人間を見る目じゃないよ。

 油と脂質の破せた跡、髪や皮膚の悍ましいまで溶けて、灰で、それは屍だ。儚い彼女は易しい笑みで私を観た。

ーー愛しています。

 吐き気がした。でも、彼女は関係なく、私自身に関係することだ。気にすることはなく、そういった顔で私は、微小、主に口角と目元を僅かに変化させ、困った顔をし、鼻腔を執拗に螺子繰り返す異様、生臭い。やっぱこの女駄目だ。狂ってる。

 私も、微笑みを浮かべる。惨劇より生易しい笑顔が彼らには、張り付いていた。

 彼女の血なんてついていない皆奇麗な服。白い、フードを全身に被り、金の縁が彩り、女神ネアの紋章が首飾り、彩り。銀で一千と、存在を焚かれる屍体は永遠までの火に燦めく、|闕字(けつじ)騎士團10。及び、異端審問会人数三十名。

「だいたいは殺せた?」

「ええ、ひとりも逃してないわ。」

 嘘くさい。でも、事実だ。そもそも、こんな僻地に一千近い信者を集めさせたのは私だし、もちろんこの私が計画し、相手側の教祖と偽りの約束を交わし殲滅した。

 正直な話、吐き気が止まらない。顔色の悪さは生まれつきで誤魔化せるだろう。近親相姦を繰り返してきた家系の生まれである私は、生まれつき体が弱く、肌は少し青いのだ、目の色は真っ赤だ。

 薬物中毒者なら白目が、真ッカだが、私は黒い部分が赤い目をしている、殺人中毒者の目だよ。色素が異常に少ないのだろう。髪も老婆より白い。ああ。憂鬱だ。

「フィリアはお疲れな顔ね。」

 私の名前だ。

「信じられるか?こいつさっきまで、掃除が終わるまで眠っていたんだ。図太いやつだよ」

「勇ましいじゃないの。」

「甘えなあ、お前は。どうだった?」

 彼女はぐるりと作られた壁を観て、そして、屍体を一瞥し、私に向く。不機嫌な顔が又微笑む。

「帰りましょう。」

 ヨフィは笑顔で彼女を煽った。エルからかなりの苛立ちを感じた。当然だ。この作戦において闕字の騎士團の名前を利用しまくった。それが、いけなかったんだろう。

 エルは小声で、言った。

「誰か逃げれてないかしら?」

 彼女は火にくべられる者たちを見る、遠い目で別の何かを見つめている。頬が少し紅潮している。

「そしたら、私は首だ。」


▲▼▲▼


 私の名前はフィリア・アルバノ。皆にはアルって呼ばれている。転生者だ。


 ある教団の教祖をしていた男と、戦火から逃れて来た異郷の女との間に私は産まれた。教団の教祖とあってか、なんなのか知れないが、股から産まれた事がある。現代人、ともかく元の世界の住人たちでは鼻で笑うような話だ。当たり前の話だが、全員信じてるとかではなく、木の精霊だとか、神の御子というのは無理がある。人だ、私は。

 でも、それは私が、現代人という自意識に引っ張られているからに過ぎない。本でも紐解けばそういった話は星の数ほど出る。何が言いたいか、要するに、私は、神の使いだ。

 頭を垂れる老若男女。私より若いのもいるが、もちろん、股から産まれての日数で私の今いる別の肉体の年齢とも加味すれば、私は、そこそこの歳ということだ。何、精神年齢と実年齢の違いなんてよくある、某アイドルが25過ぎても18歳なんて言って、彼女の実年齢を真顔で告げる人間なんていないだろう。

 違う?確かに、私もそう思うが、要するに「7歳!」っていえば大体は7歳という分けだ。中身は35いくつかだとしても。7歳の誕生日、さぞかし両親は笑みを、もちろん男の方だけ浮かべる。両親と使ったのは、母親の行方がもう知れないからだ。誰だろうね?

 若い女性が多すぎて分からん。

 まあ、多分笑顔だろうから。あの世だろうが。子どもの成長を祝うのは家族としての当然の義務だもの。私は大人でも少し重いなと感じるであろう衣類や装飾品とやらを身に纏いかれこれ6時間は経過していた。疲れた。言葉の意味は5年いるというのに中々なれない。

 しっかし、宝石を持ってきた男は、ペコペコしながら私の手を舐るように見るやつだ。金額か、私の年齢の考慮か、まあ、前者だな。わからんが、親父の視線は基本的に、渡される寄付の重みが、距離の近さでその客の重みが分かる。私の前に、1メートル間隔、だいたいな、この世界はメートル方を採用している訳ではないが、面倒だからこれで伝える。91cmくらいがひとつの単位だよ。

 だよねえ。まあいい。場所によって変わるんだ。で、ええっと。もう、そろそろ終わりそうだ。まあ、もちろん皆分かっていると思うが私は、先程も言ったが、2本の木木から産まれた精霊だ。驚くな。分かるよ、でも、私は、驚かない。え? 信じられない?もっと信じられない話があるぞ。

 最近あったことだが、私の陰部を切り落とす話が出てきた。が、将来、ジジババ共の相手をするために残すことになった。35にもなって息子の心配か、世の親の気持ちが分かるってもんだよ。息子が泣いている。あはは。

「精霊様、どうか我らをお救いください。」

 おっと乏っとふざけていたら、真面目そうなやつが来た。馬鹿なんだろうな、7歳の子供に縋るなんて、1メートル。阿呆みたいな額を払っているのだろうな、服装は品が良く、手だけみればよく手入れされていて、支配階層だと思われる。商人ではなく貴族。紋章があり、剣を掲げる獅子が描かれる。金の縁、金の刺繍。象る獅子は赤の瞳。ラデリック家の紋章だ。絵本で見たんだよ。誰でも知っている。まあ、あれだ。拒否権はない。

 二時間後、夕刻。私は身軽な格好に身を包ませる。純白だ。どこの世界でも、国、文化を問わず白というのは、清潔さや、神聖さを表すことが多い。金ぴかな首飾りと頭になんかの布を巻く。フードを被り、多分女神ネアがモチーフの、奴だ。私達が祭ってる神に反しないか?

 別に私が神であるが、他にも神はいても寛容な心で許すのさ。オット、ネア様の紋章については言うな。権威みたいなもんだ。金で買えるが、

 紹介がなければならないのよ。これが、パスポートみたいな?まあ、いいや。

 ラデリック家、火法の家。聖王教会中枢の家だ。楽しみで夜も眠れないね。馬車はクッションの機能があるのかあまりにも気持ちよく寝かけたが、頑張って起きたんだ。でも、子供だから、

 そういう事だ。

 

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暗を葉に更けて冬、異世界ファンタジー。 一葉迷亭 @Itiyoumeiteini

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